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ミッションプリンセス  作者: 雪ノ音
5章 ベルジュ防衛戦 後半
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11 先日の夢

最後に残った、巨大甲殻竜ミドアースと獣蜂を迎え撃つナナカ姫達。

獣蜂の勢力減少に成功するが根本的な問題解決は残されてしまう。その中で勇者マコトから提案される解決方法とは……

「私が魔法だって!? 習った覚えもなければ使った覚えもないぞ!」

「使える基礎が出来ている事は、レイア様に確認済です」

「基礎だって? 私が出来ると思ってもいない事をお姉ちゃんは出来ると言っていたという事か?」


 その話題に上がっているレイアは町の入口まで退避してもらっている。

 わけのわからない状況になりつつあるが、この場で説明を出来る人間は目の前のマコトしかいない。


「先日、姫様が寝ている時に体に魔力が精製されているのをレイア様が確認したとお聞きしました」


 確かに先日、寝ている自分に魔力を口から吸い取ったと言っていた。その時の事を指していると見て間違いなさそうだ。


「確かにそんなことがあったが、どうやって魔力が精製したかなんて覚えていな……ている……かも?」


 勢いで覚えていないと口にしかけたが、あの時に見ていた夢が脳内で浮上してきた。とてもとても不思議な夢。その夢の中で魔力を錬った記憶。つまり、確かに精製を経験していた。


「魔法を行使するのに難しいのは魔力精製です。それが出来れば道筋が出来たも同然です」

「そんなものなのか?」

「はい。ただし、当然ながら体外に魔法を放出させる事も簡単とは言えません。そこで私の出番です。魔法の出力について、私がサポートする事により解決するはずです」

「そんな事が出来るのか?」

「私も初めてですが理論上は可能です。姫様が行うのは精製と具現化の2つです。その間の部分は私が何とかして見せます」


 あまりにも突然の急展開だ。自分が魔法を使えるなんて今の今まで考えたこともなかった。いや、何時かは使えるかもしれないと期待していなかったわけではない。それはもっと未来の話であり、目が覚めて半月もしない現在の予定には全くなかった。


 そして、本来ならば勇者がやる予定だったそれが自分がやるしかない状況に体が強張る。なぜなら――


「そうなると私が、あのバケモノに近寄る必要が出てくるという事か」

「申し訳ありませんが、そういう事にもなります。姫様の安全を優先するなら町を諦める事を考えても誰も非難はしないかと思います。獣蜂は減少しておりますし、当初よりは被害も少ないかと」

「それでも大きな被害だ。何よりも女王蜂が町で巣でも作り始めたら取り返すのは一苦労だ。バケモノはまだしも女王だけは絶対に討伐する必要がある」


 そう。ミドアースについては後回しでもいいのだ。魔物の大半は潰した。大きいといえども1匹だけなら、応援を待って取り返してもいい。だが相手の指揮官とも言うべき女王だけは何とかしないと取り返しのつかない事になる。


「後は姫様をどうやってあそこまで運ぶかですね。それには、もう少しミドアースの動きを鈍らせる必要もありそうです」

「私を運ぶのはシェガードに、お願いするとしても動きの方が問題か……。せめて、もう少し気温低下が出来れば……」


 カジル達3人はよくやってくれている。獣蜂の撃退については大きな功績を上げていると言っても良い。それでも思っていたよりも魔法の効果が小さい事が気温低下に繋がっていない。


「お嬢、ミドアースはどうするんだ!? 多少鈍ってはいるが、もう少し鈍らせねえと近寄れねえぞ!?」


 マコトと話し込んでいる間に、いつの間にか背後へと近寄ってきていたシェガードが、自分たちと同じ課題を引っ提げてきていた。


「同じ事で悩んでいたところだ。もう少し魔法の効果を得られれば問題が解決できたのになってな」

「魔法って、カジルの奴が使っている風魔法か?」

「ああ、風をもっと起せば気温が下がって動きも鈍くなるはずだ。他に使える奴はいないんだよな?」

「俺も傭兵たちも具現化は苦手だ。出来ない事はないが、そよ風だろうな。だがあっちに見える奴なら別だ」


 いつもの笑みを浮かべながら指差す方向からは、見覚えのある馬に乗った女傭兵がこちらに到着するところだった。もちろん、その姿が誰かを見間違えようがない。


「あれは……シェードか! シェードは使えるんだな!?」

「ああ、使えるぜ。俺と違って、かなりの力を持っている。カジル達3人よりも効果を得られると思うぜ? と言ってもミドアースを吹き飛ばせたりはしねえぞ?」


 最後のはシェガード流の冗談だろう。厳しい戦場でも口に出来るのは経験の違いか、それとも勝機を傭兵としての鼻が感じ取っているからかもしれない。


「それなら準備は整いそうだ」

「ほう……お嬢のやる事は俺の想像を超えてきやがるからな。で、今回は何をやるつもりだ?」

「最後のピースは私らしい。梅雨払いをシェガード、お前に頼みたい」

「おいおい、まさかあれに近寄るつもりか、お嬢。最後まで王族様が最前線に出まくりとは、かなりぶっとんでやがるな」


 言葉には少々皮肉も混じって入るようだが、その表情には信頼と喜びの2つしか見えない。


「成功を約束は出来ないが、私が最後にドジらなければ作戦は成功するはずだ」


 そう、魔法を無事に具現化する事が出来れば……


 失敗が許されない初めての魔法講座が実践舞台で始まろうとしていた。

魔法設定解説!

人間は色々なものを栄養や酸素を体の小さな生命に送り続けている。『魔力』とは体の中の小さな生命から逆に分けてもらう力である。これを『魔法』として利用する技術を『魔術』と言う。『魔力機構』とは、これを体内に再配分する事で肉体強化する魔術であり、体外へ放出する場合は『具現化』といわれる。

2015.9.26

描写と表現の変更修正を致しました。

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