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ミッションプリンセス  作者: 雪ノ音
3章 動くモノと静寂のモノ
23/142

4 予想 対 予知

サンの口から告げられた「森の異変」と「町への被害」

館内は緊迫の空気の中でカジルが対応に当たる。火事がもたらす事態とは?

 館内にはナナカの知っている数日間の穏やかだった時間は存在していない。

 もちろんナナカの周辺だけは例外的に騒がしかったが、今日までは基本的に平和だったのだ。


 だが今は――

 いつもは女子学生の様に楽しそうにしているメイド達ですら、身にまとう空気には緊張感が感じられ、対応に向かえる者は消光の森に行くための準備に入り、カジルも町の有力者と協力する為に町へ向かっていった。


 当初は直接的には被害が及ぶ事が難しい話をしていたが、火事で被害が町に及ぶ可能性をどこか念頭に入れているのだろう。危険を少しでも摘み取るために動いているのかもしれないが他にも何か理由があるようにも思える。


 館中が騒がしくなる中で現在取り残されたのはナナカ、護衛のシェガード、土子族である二人の姉弟だけだった。奇妙な話だが大きなイベントから除け者にされた感覚すらある。


「シェガード。分かれば教えてほしいのだが、消光の森で何かが起きても町に被害が及ばないと言っていたと記憶しているが、みんなの慌てようからすると状況が変わったのか、それとも火事は予想外だったのか?」

「お嬢。切れる割には知識が追いついていないな」

「完璧な人間などいないだろう? もちろん、私自身が足りない事は自覚しているとも」

「力不足を素直に認める奴は今後の成長に繋がる。そういう奴は嫌いじゃないぜ?」

「好きでも嫌いでもいいから、話の続きを頼む」

「あははっ。そういうストレートな所は俺好みの女って言うところだっ! おっと、そんな照れた顔で俺を睨むなよ? ちゃんと話すからよ」


 シェガードが言うには、火事自体は十数年に一度くらいの間隔で確かに発生する事もあるらしい。ただし、それは秋口の空気が乾燥した時期に限られた事で、今回の様に夏になる前の時期には発生した事は記録にはないと言う。


 ある程度の環境が揃った時に警戒するだけで良かったのだが、今回はそれらを無視した状況であり、考えたくはないが人為的な原因の可能性も考えられると言う。


 特に今回のタイミングは予想外の出来事で森の近くに人を配備もしていない。

 現段階では後手に回っており火事の拡大を避けるのは難しい状況である。ただしそれは森だけの被害であり、サンの言う「町への被害予想」は現段階では当たっているとは言えない。シェガードの持つ知識から予想は以下のようなものだった。


1 森と森周辺の生産物消失


 町の食糧、財政への被害と言えなくもないが、サンの言う大きな被害とは少々違う気もする。


2 油田地域への引火


 森にある油田周辺は警戒の度合いも高く、そこに関しては常に十分な警戒態勢が取られており、飛び火する事は考えにくいとシェガード自身も認めている。


3 灰による大気汚染


 雨に交じったり、長期間降り注ぐような事になれば問題がない事もない。現状は現れていない被害ではあるが、長期の期間になれば面倒である事は間違いがなく、3つの中では一番厄介かもしれない。


 シェガードが上げる3つの予想が、どれもナナカには腑に落ちない。


「どれも被害としては無いに越したことはないが、町に与える被害としては弱い気がするな」

「お嬢。サンの予知は絶対とは言えないんだぜ? 火事の対応が後手に回っているとはいえ、例えば『灰が降ってくる』程度で終わってくれれば、万々歳じゃないか?」


 その言葉に納得しそうになるが、2人の対話中も「違う」とつぶやき続けるサンと、それを心配そうに見守るルナの姿がナナカの心に不安の風を送り続けてくるのだ。


 と言っても質問をしたところでサンは落ち着きを取り戻す様子もなく、口からは同じ言葉が繰り返えされるだけで、これ以上の問いかけが無意味である事は3人ともに理解した。


 ルナへとサンを休ませる様に勧めると謝罪と礼を述べ、弟を抱え込むようにして会見場を後にした。残ったのが2人だけになった事が確認できると、シェガードは重くなりつつある空気を入れ替えに入った。


「なあ、お嬢。俺から聞いてやれとは言ったが、さっきも言った通りに予想が外れる事もあるし、予想が当たって意外と簡単に解決する事だってある。心配したって起こっちまうもんはしょうがない。その時はその時で考えればいい。なぁに、カジルがうまくやるだろうよ。火事の対応はあいつを信じて任せておけ」

「そうだな。『教会の様に』祈って解決できる事でもないな。王族だとしても神ではない、しょせん人間だからな」

「お嬢もなかなか言うじゃねーか。その『教会の様に』って文言は笑えるがな」

「なんだ? シェガードもやっぱり教会は好きではないのか?」

「当たり前だ。戦場じゃ、神の名前を出しても誰も助けてくれないぜ。逆に相手に殺してくれって言っているようなもんだ。自分の力を信じた奴だけが生き延びていく。戦場は嘘をつかない。神の名を口にする傭兵なんていたら馬鹿だ。そう思わないか?」


 確かに神の名を出して奇跡を信じて待つ人間が自分を信じて進み続ける人間に勝てるわけもない。神の名を口にするのは死を待つ人間だけで生を決めるのは自分自身だと。それと同時にナナカは思う。今ここでカジルを信じて待っている自分は神の名を口にして待つ、その人間達と違いがないのではないかと。


 その後、ナナカが考えたよりも早く火事の騒ぎは治まる事になったのだが、シェガードの予想していた被害は起こる事はなかったものの、サンの予知していた町への被害が現実味を帯びる事態へと変化して行ったのだった。

2015.9.9

描写と表現の変更修正を致しました。

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