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ミッションプリンセス  作者: 雪ノ音
9章 迎えるべきもの
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+0.5 闇の中で影は踏まれる

 ここはとある建物の中。

 随分と前に日は沈み、人々が寝静まった事が直ぐに分かる程に闇が世界を支配している。

 そして――その中で蠢く2つの影が存在していた。


「お前から話があるとは予想外だったな」


 随分と高めの声であるが、それでも男性だとは分かる。ただ誰なのか判別までは難しい。


「あら、そう? あなたなら、その可能性も十分に考慮していたのではないのかしら?」


 こちらの高さは女性独特のものである。

 ただ、心の弱い物なら相手を締め付けるような威圧が含まれているように感じていたかもしれない。


「その可能性を捨てていたわけではないさ。だけども今のような状況になるとお前も予想していたのか?」

「全く考えていなかったわけでもないけど、遠い未来のはずが近い未来にはなったわね」


 その言葉と共に鼻で笑うような音が微かに空気を揺らす。


「それで、その短縮された未来に危機感でも感じて、俺の所に来たのか?」

「短縮されたとはいえ、危機と言うほど状況とは思っていないわよ。ただ、どんな危険にも保険を掛けておくことは大事だと思わないかしら?」

「保険だと? お前の野望の為には必要なものかもしれないが、俺にとっては必要な保険にはならないのではないか?」


 その男の言葉に一瞬だけ、女は返答を遅らせる。

 もしかすると相手には「本当にそうかしら?」と幻聴が聞こえたかもしれない、微妙な一瞬。


「……わたくしの所に、1つの情報が流れてきているのよ」

「情報だと……どういうことだ?」

「あら、恍けるつもりですか。ここ最近になって、あなたが”大きな望み”を持つようになったと耳にしたんだけど、何かの間違いかしら?」


 その言葉を聞いた男の瞳に獣のような鋭い光が灯る。


「そうそう、その目よ。今、必要なのはそれなのよ」

「お前、どこからその情報を手に入れたんだ!」

「聞かれて答える馬鹿はいないと思いますが? 第一、私はあなたに危害を加えるつもりはありませんわ。ただ、ちょっと協力してくれたら、逆に望みの力になれるかもしれませんわね」


 例え、表向きには危害を加えないと言った所で、それを口にした時点で十分に脅迫になる。それを十分に理解した上での発言である事は誰にでも分かるのではないだろうか。


「……聞かせてもらおうか。お前のいう協力とやらを……」


 その言葉に悔しさを含ませながらも、男は折れた。

 それはまるで、蛇が蛙を飲み込むような弱肉強食の世界そのもののようだった。 

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