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ミッションプリンセス  作者: 雪ノ音
8章 回避不可の力と時間
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13 仕掛けの答え合わせ

 己の導き出した答え合わせをする為に、ナナカは床に転がる空のコインへと手を伸ばす。予想が間違っていなければ、最初の答えはそこにあるはずである。


 拾い上げたコインを”裏返す”――


「やっぱりか!?」

「流石に、お嬢は感がいいな。でも、もう遅いぜ?」

「まさか、”表も裏も”太陽の絵柄とはな……すっかり、やられたな」


 そう、コインはどちらの絵柄も同じだったのだ。

 つまりは最初からナナカに勝たせる為に準備された出来レースだったわけである。

 恐らく、シェガードの手元には最初に見せたコインと両面が月の絵柄のコインがあるはずだ。

 後はナナカが選んだ方のコインをシェガードが投げるだけ。

 簡単な仕掛けではあるが、まさか、わざわざ負ける為のテーブルを作り上げるとは思わなかっただけに、見事に騙されたということである。


「慣れないマジックを使わされたからな。上手くいく自信はなかったし、どこかでバレるんじゃないかと緊張しちまったぜ」


 この男の、あの真面目面は普段やらない事をやらされた事への表れだったわけだ。

 やはり、2人はグルで間違いない。

 爺の堂々とした態度や、ナナカへ向け続けられた視線がその証拠である。

 ただ、どうしても”なぜわざと勝ちを譲ったか”という疑問が残る。


「一体、何の為にこんな手の込んだ事をしたのだ?」

「そりゃ……俺じゃなく、じじいが説明するべきだな」

「首謀者は爺様だったという事か。しかし、意味が分からんな。こんな負け試合を設定し、全財産を相手に与えて何の得があるというのだ?」


 この男供の仕掛けは分かった。なのに心がスッキリしない。仕掛け以外に関しては謎だらけである。


「実はワシは天涯孤独の身でしてな。特に趣味もなく、のんびりと日々を暮らしていた時に、前王から息子であるラルカット様の近衛隊を鍛えてやってくれないかと話を頂いたのじゃ。特に断る理由はなかった為、迷わずお受けしましたのですが、あの娘達に師事しているうちに……なんというか、居もしない家族のように思えてきましてな、こちらから協力してでも幸せな道を示してやりたくなったという所ですかのう」

「それなら面倒な事せずに、最初からそう言ってくれれば何も問題がないではないか?」

「そうは行きませぬ。それでは私の生きがいが無くなってしまうではありませぬか」

「まさか……」


 なんとなく読めてきた。

 この爺様はシェガードから話を聞いて、ナナカの元なら娘達の不幸な結果の可能性は排除出来ると信じたのだろう。

 つまり、今回のステージは彼女達の為に開いたものではなく……


「全財産はナナカ姫の物、そしてワシもその一部として受け取って頂くっ!」

「阿保すぎる……」


 流石に言葉が続かない。実に馬鹿らしい話。

 ここまでのやり取りは此方を観察するためだけに作り上げられたテーブルだったわけである。

 その過程で気にいらなければ、負けましたと認めて財産を失う事も覚悟していたわけだ。


 しかし、今回はどうやら合格だったのだろう。

 自身も引き取ってもらう為の理由は己を財産を含める事で解決するつもりで。

 元より娘達の移譲に関しての計画には反対するつもりもなく、己が使えるべき相手かどうかを見極める目的だったわけである。


 なるほど、シェガードの知り合いというだけあって、一癖も二癖も見せつけてくれる。

 こうなってしまうと「爺様はダメだ」とは言えない。今更だが、ナナカの周りには普通でない人間が多い気がする。果たして、ただの気のせいだろうか?


 ロリコン疑惑のカジル、悪戯好きのシェガード、女なのか男なのか分からないマコト、そして疑いようのない変態的なメイド達面々。最近はシェードもそこに加わらないか心配しているところだったが、まさか先に家族ごっこ爺様が飛び込んでこようとは思いもしなかった。


 ここまで思い直せば確信できる。ナナカの周囲はおかしい。

 そんなナナカを無視するように強引な締めがやってくる。


「お嬢っ、良かったな! 元将軍という大きな戦力も手に入るなんて幸運だぜ?」


 戦力強化とナナカを上手く出し抜いた事で満足感を得たのか、シェガードは満面の表情で白い歯を少女へ見せつける。どうやら、ナナカが断ると言う選択肢を取る事など考えてもいないようだ。完敗。手を上げるしかない。


「ああああっ! わかった、わかったっ! 今回は私の負けだ。ただし、それも計画が上手く行ってからの話だぞ?」

「そこら辺は俺の関係ない役割だからな。実行役の奴らに発破をかけてやれ」


 それに同意するように爺様も視線を傭兵に向ける。その表情は満足そのもの。

 2人にとっては自分達の計画が成功すれば、後の出演者の事はどうでもいいらしい。

 ただ、過程は兎も角、開演の準備は出来た。確かに後は残りの役者に任せるしかない。


 そんな3人の思惑も知らずに役者達は練習を重ね、そして開演の時間は少なくなって行くのだった。

ここで8章は終了となります。

次はチョイ話を入れて9章突入です。


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「偽りの神の望む世界」も随時更新中です!こちらも宜しくお願いいたします!

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