第三三話
◇◇◇◇
「おぅ。久し振りだな」
「おぉ?親方?なんでいんだよ?」
「てめぇが情けないから助けてやってくれってな」
「けっ!情けねぇ訳ねぇじゃねぇか!」
久し振りに親方と再会した。情けねぇことはねぇが... ...正直、迷いが生じているのも確かだ。
「おぅ。てめぇ、らしくねぇな。迷ってんだろ?」
「... ...分かるか」
駆け出しの頃から面倒見てもらってるからな。親方なら、俺の迷いも解消してくれるかもしんねぇ。
「俺... ...最近、戦いに飽きてるみてぇなんだわ」
「ほぅ。病気みてぇに戦いが好きな、てめぇらしくはねぇな」
「なんつーかな。こう燃え上がる感じじゃねぇんだよな」
「てめぇ、余計なことごちゃごちゃ考えてんじゃねぇか?頭よくねぇんだから、余計なこと考えんなよ」
そう言われてもな。俺だって考えることはある。例えば... ...あれ?俺、なに考えてんだ?
「てめぇ、まさか... ...」
「なんだよ!」
「何も考えてねぇんじゃ... ...」
「... ...」
「... ...馬鹿か、てめぇ」
「... ...おぅ」
これは参ったぜ。俺の頭ん中、すっからかんじゃねぇか!
「てめぇ、何で戦いに飽きてんだよ」
「おーい!それ分かったら悩まねぇし!脳ミソ詰まってますか~?」
「ああ!うるせぇなてめぇ、童貞のくせに!」
久し振りの殴り合い。なんだかスッキリしたぜ。
「てめぇ、鬼騎士の設定見せてみろ」
お互いスッキリしたところで、親方から真面目な話が出てきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
鬼騎士データ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇機体名◇kh00003
◇身長◇178
◇体重◇150
◇剛 柔◇
→剛 ■□□□□
→柔 ■■■■□
◇筋 力◇
→胴 ■■■■■■
→腕 ■■■■■■■■■
→脚 ■■■■■■■■■
◇速 さ◇
→機 敏■■■■■■■■■■■
→加 速■■■■■■■■■■■
→最 大■■■■■■■■■■■
→反 応■■■■■■■■■■■
→伝 達■■■■■■■■■■■
◇性 能◇
→耐 久■■■■■■■■■
→持 久■■■■■■■■■
◇感 覚◇
→視 覚■■■■■
→聴 覚■■■■■
→嗅 覚■■□□□
→味 覚■■□□□
→触 覚■■■□□
→知 覚■■■■■■■■■■
◇特 殊◇
→勘
→飛耳長目
→窮鼠噛猫
→自己修復
◇状 態◇
→異常なし
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「おい... ...」
「... ...なんだ?」
「てめぇ... ...なんだこのひ弱な設定は!!!!!!」
突然怒鳴るなよ、うるせぇ!
「何がひ弱ってんだよ?」
「てめぇ、今でも速度特化って言い張るつもりじゃねぇよな?」
言われてみれば、多少、速度に比重を置いてるが、特化と言う程ではない。
「特化じゃねぇけど、何が悪いんだ?」
「てめぇ、今使ってる武器は、旋棒か?」
「あぁ」
「てめぇ、最近、全速力で戦ったことあるか?」
「ねぇな」
「何故だ?」
「全速力じゃなくても敵を倒せるから」
「何故だ?」
「筋力付けたからじゃねぇか?」
よく分からねぇが、筋力を上げ始めた頃から、攻撃力がアップしてきた。ミノさんにも通じるようになった。間違っていたとは思えねぇが... ...
「てめぇの信条は?」
「... ...え~と、何でしたっけ?」
「... ...速度を攻撃力に替えること」
「そうそう。それそれ」
「馬鹿なてめぇに言っても分からんだろうが、てめぇの旋棒は、最大速度で叩き込んでこそ意味があるんだよ。てめぇの速度、てめぇの体重、遠心力、それらを全て乗っけてこその武器だ」
親方、歳だな。歳とると話が長くなっていけねぇ。
「親方、簡単に言ってくれ」
「てめぇが気持ちいいって思える鬼騎士に造り変えてやる」
◇◇◇◇
鬼騎士の再セッティングはかなりポイントを消費した。当然、サーラにも反対されたが、親方と一緒にサーラを押しきった。
「なんでぃ。てめぇ、オーガナイト相手に童貞喪失狙ってんのか?」
その際、見事に親方にバレた。親方、表現がストレート過ぎますから。
で、出来上がった鬼騎士への初騎乗。
一言で表すと、
「うおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!」
って感じ。速すぎて制御しきれず幹に体当たりしそうになるし、ミノさんの正面から突撃しちゃうし、大変だった。
だが、やはり、これこそが俺なんだろう。
「なんぴとたりとも俺の前は走らせねぇ!」
そう言えば、最近、マンダ、ドラグに先行させてた気がする。そんなの俺じゃねぇ。
「らぁっ!」
全速力で走り抜け、旋棒を振り抜く。
パァッッッン!と破裂する音を後方に置き去りにして、次の獲物へと突き進む。
そうだよな。血飛沫浴びるとか、体液浴びるとか、高速機動を信条とする俺にあっちゃいけねぇ。
「うおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
一際大柄なモンスター。ミノさんの進化版だ。こいつに通用する攻撃なんて
ねぇだろ?と少し前の俺なら思ってたよ。こいつの硬い皮を突き破れねぇ。
だが、俺の旋棒。本来は打撃武器だ。俺の体重、旋棒自体の重さ、旋棒の回転力、それに最高速度を乗せた一撃は、皮の上からでも内部に浸透する。
「らぁっ!」
すれ違い様、ミノさんに渾身の一撃を食らわす。俺の右手には重い感触が残り、旋棒に震動が残る。
振り向くと、ミノさんが片膝を着いている。そうか、俺の攻撃は通じるのか。
攻撃力について、親方が難しいことを言っていた。運動エネルギーってのは、速度の二乗がどうのこうのと。俺は難しい話は分からねぇから聞き流したが、俺の旋棒は、俺の速度を攻撃力に替えるものなんだって。難しいね。
俺が気持ちよく疾走していると、その俺に並ぶ影。
この森で唯一、俺のスピードに付いてこれるモンスター。銀毛狼。こいつは、灰色狼と違い、いつも単独行動をとっている。速すぎて追い詰められないし、追い付けなかったから、今までこの近辺では狩ったことがなかった。
だが、今の俺なら。
「らぁっ!らぁっ!らぁっ!」
二発空振り、三発目がヒット。だが、そんなんじゃ倒れないのが、この狼。最高速度を乗せた一撃が放てないのも問題だ。
少しずつ動きを鈍らせ漸く仕留める。
「うおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
勝利の雄叫びだ。俺がこの森で最強!最速!俺がナンバーワン!気持ちいいぜぇ!
「キング、なんか楽しそうだな」
「琥珀殿、吹っ切れたみたいでござる」
この日から、俺たちの快進撃が始まった。
◇◇◇◇




