第三二話
◇◇◇◇
「琥珀様。それでは、頑張って下さい」
鬼騎士の操縦席であるカプセルに乗り込むと、サーラに笑顔(実際には微笑程度だが)で送り出された。
あ~、あの笑顔をいつも見ていたい。
「キング、気持ちわりぃ顔すんなよ」
「最近、顔のしまりがないでござる」
途端に現実に引き戻される。もう少し夢のような世界に居たかった。
そう。最近では鬼騎士自身が現実。こっちの戦いに没頭している方が現実のように感じている。あっちの夢心地の世界こそ儚い幻なのではないかと思ってしまう。
それほどまでに、俺は鬼騎士を操縦しているのだ。
「おぅ。てめぇら、よく聞け!今日こそは600㎞に到達すんぞ!」
「最近、そればっかだな」
「レパートリーがなさすぎでござる」
こいつら、最近、突っ込みが多彩だ。こいつら、ホントにAIか?
「おーし!行くぞ!」
「ぅおっし!」
「おぉぉっす!」
第五拠点を勢い良く飛び出し、薄暗い森を突き進む。
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁああああああ!」
咆哮一発。モンスターを引き寄せるが誰も止めるヤツはいねぇ。それこそ俺の代わりに吠えるぐらいだ。
次々に現れるモンスターを遠距離からドラグが仕留めていく。こいつは走りながらライフルでの狙撃が出来る馬鹿だ。
マンダはすれ違い様に、モンスターを両断する。
俺は頭を叩き割る。
で、暫くすると... ...
「キング、くせぇよ」
「琥珀殿、近寄らないで欲しいでござる」
俺、血濡れ。体液とか色んなのが身体中にまとわりついている。で、物凄く臭い。自分でもやんなる程に、臭い。
小休憩を入れると、俺は革鎧を脱ぎ、服を脱ぎ捨て、新しい服に着替える。サーラに買って貰った殺菌、消毒、消臭の効果のあるスプレーを鎧に吹き付け、鎧の汚れを落とす。
「最近、探索距離が伸びねぇのって、キングが原因なんじゃねぇ?」
「琥珀殿は休憩が長いでござる」
俺、実際に体を休めてる時間って、すげぇ短い。着替えとかに時間使ってるから。それでも急いでるのに。
「うるせぇ!てめぇら、俺より討伐数増やしやがれ!休憩終了だ!行くぞ!」
◇◇◇◇
「琥珀様。お疲れ様でした。600㎞突破おめでとうございます」
「あぁ、ありがと。早速、新しい拠点の設置をしてくれ」
「畏まりました」
今日、600㎞を突破した。嬉しい筈なのになんだか、気分が乗らない。
「琥珀様。いかがなさいました?」
「う~ん、気分が乗らねぇんだよね」
「疲れが溜まっているかもしれませんね。琥珀様、アロマオイルのマッサージはいかがでしょうか?」
アロマのマッサージねぇ。俺、男だよ?肌綺麗にしてもねぇ。
「身心ともにリラックス出来ますので、お薦めですよ」
「じゃあ受けようかな」
サーラの案内でリラクゼーションスペースへと行き、着替える。すっぽんぽんにバスタオル一枚巻いてベッドに案内される。
「あれ?マッサージって、サーラがやってくれるの?」
「はい。マッサージの技術は修得しております」
まずは背中から。粘性のオイルを垂らされ、両手で優しくマッサージしていく。
体のコリがほぐれ、ふわふわした気分になってくる。
背中、腰、お尻、足、腕、首を入念にマッサージしたところで、今度は仰向け。
胸、腹、股関節周り、脚、腕とオイルを染み込ませるように入念にマッサージしていく。
「琥珀様。どこかマッサージして欲しいところはございますか?」
「こ、この辺」
「畏まりました」
バスタオルをずらし、入念にマッサージしてくれるのだが、あともう少しで触られそうなところで、触ってくれない。焦らし作戦ですか。
「琥珀様?」
「もうちょい」
マッサージを延長してもらい、再度、股関節周りを入念にマッサージしてもらう。タオル越しだが、硬くなった己が自己主張する。
触ってくれ~!
サーラのマッサージテクにもうメロメロ。ぎりぎりで触れないテクに身心ともにぐったりだよ。
「サーラ、今後もマッサージしてくれるか?」
「はい。では、100㎞突破毎にマッサージしますね」
と言うことは、次は700㎞突破か。近い目標が出来た。また、明日から頑張るかな。
◇◇◇◇
「キング、俺が言うのもなんだけどよお」
これから探索開始しようって時にドラグがローテンションで話し掛けてきた。
「よく飽きねぇな」
こいつは、AIのくせに何てことを言いやがる!
「ぶっちゃけどうよ?」
「めっちゃ飽きてるわ!」
あぁ。俺の心の声が...
「拙者、琥珀殿のハイテンションが信じられなかったでござるよ」
「こっちだって、テンション維持すんのに必死じゃー!」
飽きる。この変化のない森。出てくるモンスターも代わり映えしない。100㎞走って拠点つくって... ...
ポイント貯めてサーラを買い取るって大きな目標はあるのだが、ポイント貯めることが、流れ作業、ノルマ制の仕事の様に感じてきた。
「ドラグ、マンダ。何か面白いことしてくれよ」
「てめぇがしろ」
「拙者の役割ではないでござる」
ここ最近、特に強く感じていた。もうそろそろ、この生活に限界がくる。なにかしら面白いことを見つけなければ。
「なぁ、何か俺の知らない面白いこと知らねぇか?」
「キングがアホ」
「琥珀殿が馬鹿」
「知っとるわ!俺の知らんことだよ!」
勢いで認めてしまったが、こいつら、何てこと思ってやがるんだ。
「じゃあ、ここのモンスターの秘密はどうだ?」
「モンスターの秘密?」
なんだ?ちょっと面白そうじゃないか。
「俺の中の知識では、地球上、こんな生物はいない」
「そうだな。ファンタジーな物語とかに出てくる生物だろうな」
そんなことなら知ってるが、まだ続きがありそうだな。
「マンダが斬った時の切り口見たことあるか?」
「あるぜ」
「ゴブ公とか、人間に似ているヤツら。切り口を見ると人間とは異なる構造どったぞ。筋肉とか骨とか」
それがどうしたと言うのか。お前、俺があんまり理解力がないこと知ってるよな?
「ドラグ、もっと簡単に言えよ」
「ここのモンスター、どっかで生きてる生物なんじゃねぇ?その生物をクローン技術で造ってる。しかも、ただのクローンじゃなく、俺らと同じ鬼騎士と同じ技術が使われている」
ドラグ。それは俺も知らなかった。だけど... ...
「ドラグ、それ面白くねぇぞ?」
「琥珀殿、ここは地球じゃないでござる」
「マンダ、それ面白くねぇし、ショックだぞ!」
◇◇◇◇




