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第一八話

 ◇◇◇◇




「あんた、一人でトレーニングセンター通ってたでしょ?」



 アリサだ。だからなんだ、だからどうした。




「寂しそうだから、リナが誘おうかって言ってた。今日の試合の後、考えといて」




 大分、上から目線の誘いだが嬉しい。




「だが、断る!」

「はっ?... ...あんた、ぼっちが好きなのね」




 う、うるさい。ぼっちどうこうじゃないし。俺は... ...そう!自由が好きなんだ!誰にも縛られない自由が!カッコいいな、それ。




「よし!お前ら!今日は作戦があるからな!心して聞けよ!」




 皆の注目が集まったのを確認して続ける。




「今日は、俺が先行して突撃する!」

「それ、前、聞いた」

「あぁ、聞いた」




 アリサ、ドラグだ。ちょっと黙っててくれる?




「俺が敵チームの注意を引き付ける。その隙にお前らが雑魚を仕留めろ!」

「随分と偉そうね」

「最初からそのつもりだけどな」




 アリサ、ドラグだ。ちょっとうるさいよ?




「当然、キングは俺が仕留める」

「個人戦て完敗って聞いたけど?」

「1対1でも厳しいのに無理っぽいっすね」




 リナ、サスケだ。こうなると味方はマンダだけだな。




「拙者がキングを討ち取るでござる」

「キングは私よ!」

「キングのタマは私が抉るわ!」

「いや、俺の狙撃で仕留める」

「じゃあ、俺も」




 見事にバラバラだ。だが、これでも今のところ全勝だから不思議。




「それでは... ...開始!」


「うおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」




 開始の合図とともに吠えてやった。チームメイトがびびったようだ。いきなり吠えるなよ、と文句が後方から聞こえてきた。


 思いっきりダッシュ。木の枝に引っ掛かりそうになるが、無視。そう、今日のフィールドは森・草原タイプ。俺の勘が冴え渡るぜぇ!多分。




「うおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」




 俺は森の中でも吠えてやった。「気配察知」も「俯瞰視点」も持ってないから、こっちから見付けるのは厳しいだろう。加えて「危険感知」も持ってないから、狙われたらヤバそうだ。俺は敢えて自分を追い込む。




「うおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」




 森を疾走する。何度か木の根っこに躓き、危うく転びそうになった。


 誰にも襲撃されずに、森を抜けた。つまり、相手の陣地である草原に出た。




「うおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」




 吠えながら相手チームを確認すると、全身鎧と槍の組合せのヤツが二人。軽鎧、小盾、片手剣の組合せのヤツが二人。革鎧に狙撃銃が一人。軽鎧と斧槍が一人。


 なんだ、全員揃ってるじゃねぇか。


 俺は... ...


 踵を返して森へ走り込む。


 何人かが追って来る。


 肩越しに確認すると、軽鎧・小盾・片手剣の二人と狙撃銃の全部で三人だ。


 森の中を全力疾走し、大きく回る。


 再び草原に出ると、一直線で相手のキング、斧槍持ちへ突き進む。


 後ろから銃で狙われた感じがしたので、右前方へステップする。


 直後に銃声。


 いいね~。勘が冴えてるんじゃねぇか?


 俺を迎撃しようと全身鎧の二人が構える。


 二人に衝突する瞬間、二人の真ん中へ滑り込む。


 頭の上で槍同士がぶつかる音が響き、その音を置き去りにして、キングの前に辿り着いた。


 待たせたな!




「うおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」




 吠えながら、突進する。


 相手の斧槍が凄まじい速度で迫り来る。


 これは受け流せない。


 回避も出来ない。


 タイミングと軌道が絶妙だ。


 受け流さず、回避せず、全力で相手にぶつかる。


 左右の旋棒(トンファー)をクロスさせ、相手の斧槍の根元にぶつかり、斧槍が上方に弾けた。


 力では負けているだろうが、こっちは速度と俺の体重を乗せてるんだ。負ける訳がない。


 だが、その一撃で俺の両腕は死亡。骨が折れたか、関節が外れたか、筋がイッタか。


 俺は、相手に飛び付き、膝蹴りを入れる。


 体勢を崩していた相手は、見事に俺の膝をめり込ませていた。



 股間に。



 悶絶する相手の顔面に爪先をめり込ませる。親方に頼んで補強してもらった俺のブーツは、先っちょに鉄板と爆薬を仕込んで貰った。



 結果、相手の顔面が爆発。



 俺も相手も爆風で吹き飛ぶ。


 相手を見ると、まだ頭上の生命力(HP)は0ではなかった。


 着地と同時に、前方へ飛ぶように転がった。俺の背筋らへんが嫌な感じがしたからだ。


 直後、直ぐ後ろで金属音。また、槍同士がぶつかる音が響いた。


 そこから、素早くダッシュ... ...あれ?右足に力が込められない。


 確認すると、右足の足首より先がグチャグチャ... ...今度は爆薬の量とブーツの耐久力を計算して貰おうかな。


 無理矢理、壊れた右足に力を込め、相手のキングに接近する。残りの左足の爆薬で仕留められる。


 まだ動けない相手のキングに接近し、左足を蹴りこむ瞬間、嫌な感じがした。


 首を傾け、嫌な感じを避けるが、右の後頭部から額に掛けて何かが通り過ぎた。


 多分、銃弾だろう。


 避けた拍子にバランスを崩し、左足が空振った。


 そのまま倒れてしまった。


 ちっ!バランス崩すなんて不甲斐ねぇな!


 素早く起き上がろうとするが、体が言うことを聞かない。


 腕も動かず、足も動かず、首も動かない。だが、まだ生きてるし、戦闘の音も聞こえる。


 直ぐ近くの槍持ちの二人か狙撃銃持ちからの攻撃を予想したが、来ない。


 漸く、味方が追い付いたのだろう。


 直ぐ近くだ。


 だが、おかしい。音が小さくなっていく。


 あぁ。そうか。徐々に耳が聞こえなくなってきたのだろう。俺は、このまま倒れているだけで生命力(HP)が減少しやがて0になるだろう。


 そうなったら、俺を撃破したことになるのは狙撃銃持ちのヤツだろうか。


 俺とキングの戦いは、俺の勝ちでいいかな?個人戦で勝てなかった恨みを晴らす訳じゃねぇが、完敗やら、手も足も出なかったとか言われたくねぇ。


 あぁ。意識が遠くなっていく... ...





 ◇◇◇◇




「キング、次回はもう少し粘って的になってくれよ」




 ドラグである。今回、俺が相手チームの注意を引き付けたのだが、どうやら時間が短すぎた。皆が漸く追いついて、これからだっていうときに試合が終わったからな。




「まぁ、勝ったからいいんじゃねぇか?」

「あんた以外は不満だらけね」

「自分だけ撃破ポイント獲得とか、ねーよな」




 アリサ、ドラグは相変わらず俺にキツい。




「皆が来るの遅かっただけだろうが」

「コハクが速すぎよ」

「拙者、まだ森を抜けてなかったでござる」

「俺、相手の狙撃手もう少しで倒せたのに」




 リナ、、マンダ、サスケも不満のようだ。






 で、結果は、


 〇コハク()、撃破数1(キング撃破)、合計10ポイント獲得


 〇リナ、撃破数0、合計5ポイント獲得


 〇アリサ、撃破数0、合計5ポイント獲得


 〇サスケ、撃破数0、合計5ポイント獲得


 〇ドラグ、撃破数0、合計5ポイント獲得


 〇マンダ、撃破数0、合計5ポイント獲得




 俺が相手のキングの顔面に叩き込んだ爆薬付きの蹴りで勝負が決したらしい。俺の生命力(HP)が尽きるよりも相手のキングの生命力(HP)の方が先に尽きたらしい。


 そう言えば、試合後、運営サイドに色々と調べられたな。何でも爆薬の量が制限範囲内だったかとか、機動力のカスタマイズが規定の範囲内だったかとか。


 客からも不正があったんじゃないかとクレームがあったそうだ。後から飛んでくる銃弾を避けたり、あまりにも速すぎる動きとか。


 結果、不正はなかったと運営が発表してた。まぁ、親方の腕と俺の実力がすげぇのだろう。どれも数値的には規定内だったんだからな。


 でも、運営からは、爆薬付きの蹴りはえげつないから控えるようにと注意があった。打撃武器+爆薬とか、弓矢の鏃に爆薬とか、他にも使ってるヤツは居るんだけどな。


 まぁ、使い方は親方と相談するかな。




「んじゃ、解散するか。次はもう少し粘るよ。皆も置いていかれないように頑張れよ。じゃあな」




 ◇◇◇◇

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