第一二話
◇◇◇◇
俺は、フィールド中央の大通りを走った。雄叫びをあげながら。
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
当然、誰しもが振り向く。相手の短槍持ちと双剣使いはリーダー達の背後を取ろうとしていたところで、こちらを振り返る。盾持ちを相手にしているリーダーと太刀使いは振り返らなかったが、リナとアリサの二人が振り向いた。
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
尚も雄叫びをあげながら疾走する。
相手チームとしては、チョロいキングが単騎で走ってる訳だ。自分でチョロいとか言っちゃったけど。
目の前に美味しい餌さが飛び込んできて、飛び付かない訳がないよな。案の定、短槍持ちと双剣使いは俺を標的と定め、俺に向かって構えてる。
だが、二人とも大事なことを忘れている。お前ら、直前に何してた?リーダー達の背後を取ろうと忍び寄ってたろ?こっち向いたのお前らだけじゃないぜ?
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
俺は雄叫びをあげながら、離れた所で止まる。今の俺の役割は注意を惹くこと。俺だってチームプレイが出来ないわけじゃない。ただ、事前に行動を決めておくと、その通りに動けなかったり。作戦通りに動くのが苦手だったり。命令されるの嫌いだったり。だけど、協力することは出きる。
短槍持ちにはリナが、双剣使いにはアリサが。背後から忍び寄り、鎧に覆われていない部位を狙って渾身の一撃を放つ。
リナもアリサも攻撃力が高い訳ではない。致命傷とはいかなかったようだが、それでもこのアドバンテージは大きい。
短槍持ちはリナを、双剣使いはアリサを相手に必死に応戦しているが、動きが悪い。最初の一撃が効いているが、それだけではない。背後に俺がいるから、目の前の相手に集中出来ないのだろう。
俺は、若干、攻められ始めたアリサの相手、双剣使いに襲い掛かった。左右のトンファーを回転させ、威力よりも手数で攻める。
双剣使いは左右の剣で俺の攻撃を全て受け止め、受け流すが、それだけ。防戦一方になり、攻められない。
僅かに生まれた隙を逃さず、アリサが至近距離からの銃撃。
悲鳴をあげる双剣使い。
追い打ちを掛ける俺。
一切容赦無しの殴打。殴打。殴打。
ふと横を見るとアリサが引いてる。これか。この徹底ぶりがいけないの?ここまでやると世の中の女は敵になるのか?
いやいやいや、今は戦闘中。気をとられるな。集中しろ俺。
リナを見ると、優位には立っているが決め手がなく、仕留めきれないようだ。
疾風迅雷、紫電一閃。俺の好きな言葉。
まさに字の通りに、俺は最大速度で走り抜け、鉈で短槍持ちの首を薙いだ。
執拗に見えないように仕留めるには、一撃で決めることか。これが出来れば、引かれない気がする。
相手チームの残りは、大楯持ち二人とキングの全部で三人。こっちは、俺、リナ、アリサと、リーダーと太刀使い... ...あれ?リーダー殺られてない?
いつの間にかリーダーが殺られていて、太刀使いが必死に二人を相手にしていた。
慌てて駆け寄るリナとアリサ。
じゃあ、俺は相手のキングでも探すか。
ちょっと高めの建物の屋根に登って、双眼鏡を取り出す。相手のキングが最初に隠れた路地から繋がる道を確認する。屋内には隠れられないから、隠れるとしたら、建物の陰、狭い路地、あとは屋根の上。ただ、重装備で屋根に登るのは、面倒だろう。
隠れられそうな路地や建物に当たりを付ける。
あの一帯が臭うな。
屋根伝いに移動して、隠れていそうな場所で気配察知を発動する。
いた!
慎重に近寄り、屋根の上から覗く。
おいおい袋小路じゃないですか。しかも、ちょうどいい高さの石に堂々と腰かけ、微動だにしない。なんか、格好良く見えてしまう。
威風堂々。
ここまで辿り着けるのか?ここまで辿り着いたならば相手をしてやろう。
と言うような雰囲気を醸し出している。
えっと、始まって直ぐにこそこそ隠れてなかった?戦闘は他の者に任せてなんだか偉そうだな。昔の殿様かっ!
ここまで辿り着くには、あの大楯二人の後の路地を道なりに進む感じだろうな。大楯とやりあって消耗した相手を仕留める作戦か。
よし決めた。
俺は全力のダッシュである場所へ戻った。
多少息が切れた。かなり急いで相手のキングの周辺に再び戻ってきたが、状況は変わってない。
あの大楯二人はかなりの防御特化に仕上げて来たのだろう。勝ちを捨て、防御に徹してしまえば、うちのチームの攻撃力では抜けないのだろう。
混戦の五人を横目に回り込んで建物の上に登る。気配を殺し、忍び寄る。さっきより少し離れた所でうつ伏せでスナイパーライフルを構える。
そう。全力で戻ったのはこれを拾うため。
スナイパーライフルは、かなりの威力を持っているはずだ。
分厚い盾は貫通出来ないだろうが、兜の顔の部分を覆うフェイスガードくらいはなんなく貫くだろう。スナイパーライフルの扱いは学んでいる。照準を最短距離に合わせるが、この距離なら上方にぶれるはずだ。狙いはキングの胸の中央、若干、喉より。多少ぶれて喉か顔面に着弾すると予想する。
動かない相手にこの距離であれば外さないだろう。
安全装置を解除し、引き金に指を掛ける。
落ち着いて、狙いを定め、引き金を引く。
銃声とともに崩れ落ちるキング。
「終了ーーーーーーーー!」
司会の声が響いた。
◇◇◇◇
「よう。勝ったらしいな」
「あぁ」
「なんでい、嬉しそうじゃねぇな?」
「あぁ」
勝ったよ。後期始まって、ランクC、ランクB合わせてチーム戦最初の試合で。史上初の試合で勝利した。栄誉。栄光。そんな言葉が試合前には囁かれていた。勝ったのに。終わってみれば、非難。罵倒。軽蔑。なんでだ?
負けたチームは何も言われなかった。勝ったチームだけに非難が集中。
まずは、背後からの攻撃。これは、相手だってやろうとして成功しなかっただけだ。多くの人は正面切って正々堂々の勝負を期待していたらしい。見事に裏切る結果となった。
次に倒し方。執拗に叩き潰したことが非難された。個人戦であれば、審判に勝ちを宣言して貰えるが、あの時はその宣言がなかった。中途半端な状態で放置して、後で背中を刺されることを恐れたために、徹底的に叩き潰した。降参もないし、死んだか確認するする隙もない。確実に潰しておいたのがいけなかったらしい。
最後に、物陰からの狙撃。元は相手の戦略だ。それを利用しただけなのに、卑怯だと罵られた。
で、ほぼ俺の行動なのだが、非難はチームとして受けている。
当然、チームの皆からは軽蔑の目で見られることとなった。誰も俺を擁護する者はいない。
あの試合後、予定されていた試合は全て中止になり、ルールが改正されることになった。まだ、改正中で、後期の試合再開の目処は立ってない。その事も俺に原因があるように言われている。
でも、冷静に考えて欲しい。正々堂々の勝負を期待するなら、態々、あんな隠れやすいフィールドを用意せず、個人戦と同じようなバトルフィールドで良かったはずだ。スナイパーライフルだって、今年から許可された武器の一つだ。運営だって、そういう使い方を想定して導入したはずだ。
運営の考えでは、実際の戦場に見立てたフィールドでよりリアルな集団戦闘を想定していたはずだ。
それを、その通りに実行した者が卑怯者だと?くそったれだ。
「はぁ」
「いいんじゃねぇか、悪役で。誰にも真似できねえぞ」
「悪役ねぇ... ...別に物語の主人公やら勇者やら英雄になりたい訳じゃねーけど... ...」
「けど、なんだ?」
「味方が少なすぎねぇかな」
分かってはいたが、これじゃあ、ぼっちだよ。
「俺が味方になってやるよ... ...」
「余計、寂しくなるよ... ...でもありがとよ」
◇◇◇◇




