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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
あなたのやりたいことはなんで章
34/38

うわぁ!ウィルたん最強にかわいい!略してさいかわよ!とりあえずprp(ry

 

 スクリーン越しから見える感じだと、舞台はジャングルといった感じだろうか。見たことのない植物が二人の周りを取り囲むように複雑に絡み合っているのが見て取れる。


 『ほう…あいかわらず見事な異世界を創造したもんじゃ。』


 ウィルは感嘆の声を上げながら周りを見渡す。


 『お姉ちゃん…………行くよ!』

 『ふふっ…………来るがよい弟よ!久しぶりに遊んでやろう!』


 突如、その変化は起こった。

 竜介の周囲に爆発的な衝撃が渦巻いて包み込み、世界の悲鳴とも錯覚させるほどの轟音が大気そのものを揺らていき、周囲の木々は抗う術なく、豊かな世界を育んで来た大地ごと根こそぎ吹き飛ばされていった。

 もはや天災に匹敵するものを正面で見せ付けられてもなお、ウィルは楽しそうに仁王立ちしながらその経緯(いきさつ)を見つめている。

 しばらくして竜介を発生源として渦巻いていた衝撃の波が徐々に弱まっていったが、同時に俺達の心に衝撃の翼を広げていった。


 「マ、マジかよ…」

 

 思わず呻き声の様なものが漏らしてしまった。……いや、これはさすがに……


 「うわぁ!お兄ちゃん!すっごくおっきいねー!」


 悠は目を輝かせて感動しているが、俺にそんな余裕は微塵も残ってない。

 竜介の、『竜』という字に、比喩も嘘もなかった。

 頭部には二本の角がそびえ立っており、巨大な蛇のように長い胴体には並みの攻撃では傷一つつかない鱗と逆鱗がびっしりと生やされている。姿は中国や日本の伝説に出てくる竜のそれだった。

 さすがのうちの最強共も、その様子をふざけて見ている者など一人もいなかった。

 そう……ふざけてはいなかった!ただ真面目に!


 「ねぇソフィ…あれってどう見ても神龍(シェンロン)よね?」

 「……むむ…日本昔話の竜にも見える…」

 「なるほど……愛佳はどっちに見える?」

 「えーと…(わたくし)は 幽白の飛影の龍が飛び出したらあんな感じかなー…なんて思ってました。」

 「……な、なるほど、そこは盲点だったわ。もう少しあの色が黒かったらなぁ……」

 

 ………馬鹿をやっていただけだった。

 つか何!?お前ら今回闘わないからって気楽過ぎじゃね!?ほんとに真面目に見ようとしてる!?


 そんな内心の叫びをぶちまけようとした瞬間、モニターに大きく映されている巨大な竜が、空気を引き裂く甲高い咆哮を轟かせた。


 思わず全員の視線が強制的にモニターに引き戻される。

 ウィルは至近距離で竜と対峙しても尚、頬を引き上げたまま余裕そうな表情で口を開く。


 『なるほどのぅ…力も前より格段に上昇している。……弟よ、褒めてやるのじゃ!』

 

 ビシッ!と親指を前に突き出しながら竜にウィンクする少女に対し、森林だった荒野に降臨した巨竜は、先ほどよりも低い竜介の声で少女に疑問を投げる。


 『…何故、本来の姿に戻らない?』


 いつまでたっても仁王立ちのままのウィルの質問に対する回答は、誰もが驚愕するものだった。


 『このままで勝てるからじゃが?何か問題でもあるかのぅ?』

 『!!!!!』


 少女は絶対的な自信の中で笑って…否、嗤っていた。この瞳はすぐ隣の奴から何度か見たことがある。

 チラッとその人物を横目で見ると、紅蓮の瞳を輝かせながらこの状況を楽しそうに見守っていた。そう、暁と瞳が似ているのだ。あの瞳は、己の力に対する絶対的な自信を持つ者の証なのだと俺は確信する。


 『…それは、本気で言ってんのか?』

 『うむ、本気よ。なんなら、まだゲーム内容は明確にしてなかったからここで決めるか?』


 



【【 対戦者≪極夜竜介≫

   

☆勝利条件  対戦者、ウィルミラ=ゲオルダカーハを流血させる。

              本来の姿を完全に解放させる。

              対戦者のゲーム除外。

             上記のいずれか一つを満たしたとき

               

   ★敗北条件  自身のゲームからの除外。 



  対戦者≪ウィルミラ=ゲオルダカーハ≫ 

   

   ☆勝利条件  対戦者、極夜竜介のゲーム除外。

   

   ★敗北条件  自身の皮膚からの流血、または本来の姿の完全解放。

 

    

                                   】】



 『さぁ、始めようかのぅ。』

 

 ゲーム内容がウィルから提案され、誰もが絶句するしかなかった。そもそもこの条件で勝てるものがいるのだろうか。ハンデにも程がある。いや、もはやハンデの領域ではない、自殺行為だ。

 そんなふざけたゲームを提示された竜――――竜介は激昂に満ちた咆哮で大気を歪めた。


 『……ざけんなよ……ふざけんなよオイ!………俺と……俺と勝負する気あんのかァアアアアアアアアアアアッ!!』


 その怒りの嵐を直接ぶち当てられた少女は、大きく俯き、顔の様子は確認できない。

 

 ――――やがて、その華奢な体はスクリーン越しにも圧倒的な威圧感が放ち、ゆっくりと顔を上げる。そこには獰猛に、何かが、嗤っていた。


 『弟よ、聞こえなかったのかのぅ?……始めるのじゃ……かかってくるがよい…』

 

 竜はその言葉に一瞬おののく様に後退しかけたが、もう一度巨大な叫びを上げて天を駆けた。どうやら覚悟を決めたらしい。

 天空を何回か旋回したのち、竜は力を溜めるように己の身をぐっと仰け反らせた。その直後、首をウィルの方向に振り、力を一気に解放するようにアギトを大きく開く。空を切り裂くように竜の口から一線の黒々しい炎が放たれ、姉である少女に向かって行く。

 あれでは血が出る出ないの問題ではない。跡形も無く体そのものが消え去ってしまう。その一撃はもはや回避不能の必殺技にしか見えなかった。

 そう、少なくとも俺にはそうとしか見えなかった。

 だがその炎の対象者である少女だけは、違ったようだった。


 『ふむ……なかなかの威力じゃが……』


 あと数メートルで黒炎が到達するとなったとき、ウィルは体をひねりながら拳を引いて構え、

 

『弟よ!この程度では、我は討てぬのじゃ!』

 

 正面の炎を―――――殴った。


 「「………はぇ?」」


 俺と暁がその場で全員の感情を代弁した。いや、もう驚きを超えて素っ頓狂な声である。

 殴られた漆黒の炎はウィルの左右に綺麗に大地を割れ穿つように流れていった。


 『ふむ、…少し痛かったのぅ…』


 荒れ狂う奔流の炎が止み、ウィル以外の誰もが声を上げられない静寂だけが訪れる。

 どう見ても幼女にしか見えない少女は、星すら砕く一撃を、少し痛かっただけで済ましてしまった。

 ………やっぱり【四天王】って…どいつもこいつもケタ違い過ぎんだろ……

 驚愕が離れない竜介に対し、ウィルはやさしい声音で問いかける。


 『竜介よ、我はお主に聞きたいことがあるのじゃ。』

 『…………』


 竜介は無言で先を促す。ウィルは天空に佇む竜をじっと見つめながら続ける。


 『お主にとって…最強とは…何じゃ?』

 『……最強とは…だって?』

 

 ほぼオウム返しに竜介は返す。…………予め言っておくが俺は即答できる。

 俺の答えをチラッと横目で見ると、向こうも紅蓮の瞳が眩く光っている。どうやらあちらも自分の答えは決まっているらしい。

 

 「お兄ちゃん!(はるか)この答え分かるよー!えへへー!」

 

 聞いて聞いてオーラ大放出な悠が抱きつきながらピョンピョン跳ねている。……とりあえず可愛いからナデナデしまくると幸せそうに頬をうずめてきた。…んだよ、ナデナデしてわりぃかよ……


 「ぬぬぬ…(わたくし)は分かりません…」

 「……同じく…」


 神埼とソフィはまだ首をかしげている。まぁ…これは答えは人それぞれだろうし、いきなり回答を考えるのは厳しいのだろう。

 竜介も答えが見つからないのか、無言で天に静止している。

 だが、それも分かっていたようにウィルはうんうんと頷きを繰り返す。


 『答えが出てなくともよい、そんなもの考えないのも道の一つじゃ…』


 『じゃが…』と【四天王】の少女は黄金の瞳を煌かせながら頬を引き上げる。その表情は、竜の…否、スクリーン越しの俺達にも恐怖を吹き鳴らした。


 『答えが無いうちは…我には絶対に勝てぬとだけ言っておこう。』

 『!!……ガ、…ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』


 恐怖を振り払うように竜は大きく咆哮をあげ、少女の元へ殺到する。大気が揺れ、地上に直撃すれば地形を留めることはないだろう一撃に対し、ウィルはただただ…嗤っていた。


 『また強くなって挑みに来るんじゃぞ…弟よ。その時は…しっかりと答えをもってな。』


 刹那、大地が砕ける爆音が響く。それと同時に竜の頭上には既にウィルが飛び出していた。そこからはまるでスローモーションのように時が流れ始める。

 頭上まで高く上げられた足が、竜の脳天へと狂い無く振り下ろされる。断末魔さえ出す間も無く巨竜は地へと叩き落とされ、一瞬大きく痙攣したあと、その場から消滅した。

 そして二つの当たり前な結果がスクリーン一杯に表示される。

 


 【極夜竜介(きょくや・りゅうすけ) 決闘から除外されました。敗北確定】


 【勝者一名 ウィルミラ=ゲオルダカーハ(うぃるみら=げおるだかーは)】



 うわぁ………勝てる要素を見つけられないぞー…だってまだ完全な姿ですら無いんですよね!?こんなもの俺たちがどうこうできる話じゃな…


 「ふふっ…面白いわ…最高に面白い状況じゃない…」


 この絶望したい状況の中、暁からは笑みが不敵なこぼれていた。


 「ふふふふふふっ…さぁ…破壊の時間よ。ウィルたん…」


 何故だろう……勝てるかどうか別として、こいつの顔を見ていたら、闘うのは嫌では無くなるのは。

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