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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
あなたのやりたいことはなんで章
32/38

私は争いが好きなわけじゃない!ただ闘いが私を呼んでいるだけよっ!


 本日最後の授業がチャイムと共に終了し、がたんっと勢いよく暁が立ち上がる。

 

 「よしっ!ユキノッ!ソフィ!愛佳と合流してあの子をゲットしに行くわよ!!」

 「なんか目的変わってね!?」

 「……ポケ○ンも…ゲットは…基本」

 「…そうっすか…」

 

 そんな二人に対して思わずため息が漏れるのと同時に、暁が真面目な顔で首を傾げていた。


 「ん?どした、暁。」

 「…ねぇユキノ、すっごい疑問が今生まれたんだけど…いい?」

 「あ、あぁ、別にいいけど…なんだ?」

 「ポケ○ンのミュウとアルセウスって…どっちが先に誕生したのよ?」

 「どうでもいいわ!!今はそれどころじゃないだろーがっ!」


 少しでもコイツに真面目さを期待した俺が馬鹿だった。…………まぁ、こいつのこういう所も好きなんだが…

 話を【四天王】へと戻すためにため息で頭を切り替える。


 「つか、お前ら先輩から【四天王】の情報きいてたんだろ?俺にも教えてくれよ。」

 「あれ?言ってなかったかしら?」

 「あぁ…?…ぐぉ!お前なにすん…」

 「説明は引きずりながら話すわ。」

 「何故だ!?」

 「わーーい!お兄ちゃん号進めー!」

 「悠は少し離れてくれませんかね!?」

 

 悠がニコニコと腰に引っ付いたままの俺は首根っこを掴まれ、ずるずると引きずられながら暁の話を聞く。

 その話を統合すると、あの教室に宣戦布告に来た【四天王】は、高等部二年一組所属の、ウィルミラ=ゲオルダカーハという名の、最強のドラゴンらしいのだが……


 「なぁ……俺達に来た奴……どう見ても…ロリだったよな?」

 

 暁とソフィはそれぞれ首を傾げていたが、やがて得心するように頷く。


 「細かいことは…気にしない気にしない!」

 「……そんなに……重要?」

 「いや重要だろ!もしその少女が【四天王】を偽ってるだけの奴だったらどうするんぐぇぇ!?」


 引きずられている首が突然締められ、咄嗟に意識が飛びかける。抗議しようとすると、暁は立ち止まり、ずいっとこちらに可愛らしい笑顔を寄せる。…俺はその顔を見て、かぁっと顔に熱を持った気がしたので、思わず視線をそらす。


 「あの子は嘘なんてついてないわ。」

 「…何で、んなこと言えるんだよ…」

 「決まってるじゃない!君なら分かるはずよ、ユキノ!」

 「……確かに…あなたなら…分かる…ユキノ……」


 二人はチラッと悠を見た後、俺の瞳を覗き込む。


 ……俺なら…分かること?………一体何のことだ?

 俺も反射的に悠に視線を落とす。当の本人は「えへへー!」と幸せそうにはにかんで………っぅ!!!

 全身に雷を受けたような衝撃が駆け巡り、戦慄する!!…ま、まさか…あれか…アレなのかっ!…古今東西問わず全ての存在しうる世界に共通する不変にして絶対なる真実っ!!

 ハッとしながら目の前にいる破壊者と魔法使いを見ると、両者はこちらの心を読み取ったように頷き、不敵に微笑み返してきた。

 全員の口が同時に開き、その真実を告げる。


 「「「…可愛いは正義!」」」


 ……なるほど…納得せざるを得ない……か…

 悠はしばらく頭にハテナを浮かべていたが、きっとその疑問はしばらく解消されないだろう。



  ※



 神埼がいるクラスの自動ドアを、ソフィが電子生徒手帳を反応させて開く。いいか暁、ドアはこうやって開けるんだよ!

 

 「あ、ましろ!私を嫁にする為に迎えに来てくださったのですね!」

 「違うわよ!放課後第3グラウンドに行くって言ったじゃない!」

 「はいっ!知ってますよ!それを踏まえて言いました!」

 「ねぇ…ユキノ……この子殴っていい?」

 「構わないが…校則のせいで俺以外にはお前は暴力をふるえないんじゃなかったか?」

 「ぐぬぬ…そうだった……歯がゆいわね…」

 「ねぇねぇ、何でほかの人は痛くならないのにー、お兄ちゃんだけは痛くなっちゃうのー?」

 「…………俺も聞きてぇよ…」


 だが、その疑問は最もである。本来この学園内では、校則で決闘以外での他生徒への暴力は不可能となっている。実際、何度も暁が愛佳を殴ろうとしたことがあるが、全て届拳がく寸前で停止している。暁曰く、目の前に見えない壁のようなものがある感覚、とのこと。

 …何故か…俺にはそれが適用されないらしい。…学園長曰く、俺が不死身だからとのこと……意味がわからないし、迷惑極まりない話だ。おかげで毎日死に掛けている。…………まぁ、死なないんだけど。

  

 「仕方ないわね……とりあえずユキノ殴ってここは収めるとするわ…」

 「あんた本当にそれで平和になると思ってんですかね!?」

 「私には殴りたい正当な理由がある!そこにユキノがいるから!」

 「何で登山家みたいなこと言ってんだ!?」


 このやりとりに満足したらしい暁は、「冗談冗談」と舌を出しながら微笑み、「さてと!」とみんなの顔を見渡しながら頷く。

 

 「んじゃま、ウィルたんをゲットしに頑張ろー!」

 

 

 暁が意気揚々と拳を振り上げると、続けてソフィと神埼の拳が上に伸び、更に後から俺を含めた二本の拳が伸び……って…二本?

 四つ目の拳が上がった方向に、俺達の視線が一斉に向く。


 「??どしたん…………お腹すいたん?」

 「いや、そういうことじゃなくてだな…何でお前も行くみたいになってるんだ?」

 

 突如、俺たちの視線を浴びた少年は、きょとんとした目をしながら、自分の挙げた手をしげしげと見つめている。…どっかで見たことある顔だな…

 てててっと悠が少年の顔をのぞき、すぐさまこちらに問いかけてくる。


 「ねぇ、この人誰ー?」


 だがその答えは、意外にもすぐ隣から飛んできた。


 「あら、竜介じゃないですか?」

 

 そうだ、確かこの前、先輩とのバトル大会で好成績を収めて神埼と一緒に表彰を受けてた少年だ。彼はいったい何故ここに…

 

 「さっき、ウィルをゲットしに行くって言った。だから、ついていく。」

 「……なんで?」


 ソフィが首を横にしながら聞くと、竜介は衝撃の言葉をつむいだ。。


 「ウィルは、俺のお姉ちゃんにして、…超えたい存在なん。」

 「なっ!?…なんぐぶぉっ!!」

 「あのロリで姉属性ですってぇえええええええええええええっ!!?」


 お姉ちゃんだと聞かされた俺の驚きは、目をキラキラさせた暁に殴られ叩き落されることでかき消された。いや、驚く場所おかしくね!?そして今のは痛かった…痛かったぞーーー!!!


 「あれ?、ユキノ、何であんた地面に顔が埋まってんの?」

 「十割アンタのせいですけどぉ!?」

 「……そんなことより、ようは…竜介はウィルたんと戦いたいってこと?」


 おい、顔面陥没はそんなことで流せる問題じゃないぞ。

 悠に顔を引き抜いてもらい、ナデナデされながら竜介の話に耳を傾ける。


 「そう…でも、今までどこにいるか分からなかった……姉ちゃんを探そうと思って腹ごしらえすると…毎日朝になっているん…」

 「どんだけ食ってんだよ!?」

 「それは……神のみぞ知るセカイ。」


 うわぁ…絶対こいつ狙ってきてるわ…だってなんか最後がカタカナっぽかったもん…


 「むむむ…神のみかぁ…私はハクアちゃん派かな…」

 「んなもん聞いてねぇよ!俺は美生派だよ!」

 「……ユキノ、それも聞いてない……」

 「すみません…」


 半目であきれる様にソフィに睨まれてしまった。とりあえず話を戻しますかね。

 

 「…んで…どうすんだ、暁。竜介を連れて行くのか?」

 「モチのロンよ!一緒に行きましょう!」

 

 暁は屈託のない笑みで竜介に手を差し出す。

 だが竜介は、その手には笑顔で首を振るだけで、握ろうとはしなかった。

 

 「ごめん、確かに君たちに付いていって姉ちゃんに会うのは事実だけど…俺は一人で闘わせてほしい。」

 「え?…でも闘うかどうかは本人に聞いてみないと…」

 「必ず向こうは了承する。…次あえたら闘うって…約束したから。」



 暁は少し困ったような顔でこちらに目配せしてくる。いや、そんな目されても…

 

 「ましろ、どうします?」


 神崎の一言で全員の視線が暁に移される。基本、俺たちの行動の最終判断はいつも暁がによって決められるのだ。

 そして決まって暁の判断基準は、面白いかどうかである。ましてや【四天王】と闘える絶好の機会を、こいつが逃がしたりしないはずなのだが。


 「いいわよ。」

 「……………………は?」

 「いや、だからオーケーって言ったんだけど?」

 「は…はぁああああああっ!?」

 

 ば、馬鹿なっ!?あの狂気に満ちた戦闘馬鹿の暁が!?某戦闘種族もびっくりなくらい闘い馬鹿の馬鹿あかつイダダダダダダダダッッ!?脳がぁ!脳がぁ!

 

 「なーんか…その目…すっごい私のこと馬鹿にしてる気がするんですけど。」

 「だからって頭を握りつぶそうとす痛い痛い痛いぎぃゃぁああああああああああああっ!弾ける!マジで弾ける!」

 「はじけてまざれっ!」

 「何でべジータ風に言ってんだ!?」

 

 頭部をガシッと暁に握りられ、ギシギシッと鈍い悲痛の叫びは確実に骨が砕ける寸前の音で、脳内に盛大に絶望を奏でた。

 暁からの拘束を解かれ、床に倒れこみながら理由を聞くと。


 「だってその勝負で勝ったほうと闘いたいもんっ!強いやつと闘ったほうが面白いに決まってるじゃない!」

 

 暁は天井を仰ぎながら(……いや、もうこいつの瞳は天井ではなくもっと遠くを見据えているのだろう)続ける。


 「私は強いものを壊したいっ!もっと面白いものを見る為に、目の前の壁を壊したいっ!」


 ………そうだったよ。

 やっぱり俺の見解は間違ってねぇじゃねぇか。

 こいつの…破壊者の真っ赤な瞳は、いつだって純粋に、面白いことだけを求めているんだ。


 「ま、俺はお前の言う事を聞くだけだよ。」

 「悠もお兄ちゃんが行くならいくのー!」

 

 あきれ半分に吐き出した息に、悠は同調ように俺の腰に抱きつき、


 「……私も…ましろに…ついていく…」

 

 魔法使いは同意を示すために小さいあごを引き、



 「私はあなたに未来永劫ついていきます!だからこの婚約届けにサインをしてください!」


 …………切断者はプロポーズした


 「って最後にアンタは何言ってんのよっ!?」

 「あら?今の流れ的にオーケー貰えそうな雰囲気だと思ったのですが?」

 「いいわけないでしょうがっ!」

 「ブフォ!」


 何故か俺の頬に拳が襲い、めのまえがまっしろになった!某ゲームなら即ポケセン行きになるだろーがっ!

 

 「ごめん、悪気しかなかったわっ!」

 「よくそんな笑顔で言えるなおい!」



暁は「そんなことより」と他人の顔面陥没を放置すると一変、身が震えるほどの不敵な笑みでそんな俺を見る。…あぁ…もう言いたいことは分かってるよ。


 「さあ、私達の破壊(ターン)を始めるわよ!」




 その台詞を言った後、暁は「ちなみに」と付け足し、


 「この台詞に出てくるターンは破壊って書くの、これ考えるのに丸一日費やしたわー。」

 「しょーもなっ!心底どうでもいいわっ!」

 

 決め台詞くらいカッコよく締めてくれませんかね!?

 



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