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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
あなたのやりたいことはなんで章
29/38

ヤバイ!俺がロッリロリにされるんよ!?

 「どうだ?ちゃんと着せられたのか?」


 俺は壁越しに暁に訊ねる。何しろここは非常に気まずい雰囲気なのだ。


 「もう!ロリコンユキノはさっきからそればっかり!どんだけ待ち遠しいのよ!………うむむ…服って…意外と着せるのは大変なのね…」

 「えへへー…お兄ちゃん待っててねー!もうちょっとなのー!」


 俺はまだ出会って間もない意思ある剣の幼女、(はるか)の服を買ってあげるために、学園都市にある服屋に来ていた(もちろん資金は俺の自腹)。これからずっと全裸か俺のブレザーで生活させるっていう選択肢はエロゲとかラノベでやってほしい。実際はこちらがドキドキして辛いだけである。

 そして女性の服は全く分からないし、服の着せ方を俺が教えるわけにもいかないので暁に付き合ってもらっているのだが…


 「あぁ!何で嫌がるのよ!?」

 「お姉ちゃんヤダー!お兄ちゃんに着せてもらうのー!」

 「わがまま言わない!ユキノが悠ちゃんの裸なんて見たら発情してどうなるか分からないんだからっ!」

 「お兄ちゃんなら悠はいいもん!」


 ……とまぁ…悠が暁を嫌っているせいでなかなか試着室から出てこない。……あの、女性洋服専門エリアの試着室前で待機は、もはや拷問以外のなにものでもないんだが…

 若そうな店員がチラッとこちらと目が合う。すげぇ…ニコニコしてる。恥ずかしくて帰りたい。

 

 「もう…開けるわよ……はぁ」


 しばらくして暁の抑揚のなくなった声が届く。お前どんだけ嫌われてんだよ。

 試着室の扉がゆっくりと音なく横に開いてゆく。

 

 「…えへへ…どうかなー…似合うー?」


 挿絵(By みてみん)


 ……なん、…だと…!?

 俺は天使は見たことはない。そしてロリコンでもないと先に述べておこう。

 そして、それを踏まえたうえで言いたい。悠マジ天使。

 空のように澄み渡った薄青色のワンピースは、悠の無邪気な笑顔をしっかりと乗せ、究極で反則級の可愛さを照らし出していた。


 「…とっても…可愛いぞ。悠」

 

 思わず頭を撫でてしまった。いや…これは仕方ないよ。


 「えへへー!お兄ちゃん大好きー!」


 悠はぎゅっ、っとこちらの腰周りに顔を押し当てながら抱きついてくる。

 その様子を見ていた暁は静かにこちらに耳打ちする。


 「ユキノ、さすがに一着だけじゃ駄目よ。…一緒に住むんなら生活用品も買わなきゃいけないもの結構あるんだから。いちいち鼻の下伸ばしてる場合じゃないわよ。」

 「…分かってるよ。……なんだか…お前とそんな話してると…まるで夫婦みたいじゃ…」


 …あ


 「!!!っ…な、ななななにを言ってるにょよ!?」


 暁は顔を赤く染めながら激しく取り乱す。…安心しろ…今のはマジで俺もめちゃくちゃ恥ずかしいから。


 「うー?お兄ちゃん、顔赤いよー?」

 「だ、だいじょうぶにゃ!?」


 うがぁあああああああああああああああっ!!10秒前の俺を殴りたい!!


 その後も買い物は順調に進…んだわけでもないが……どうにか必要なものはそろえることが出来た。

 荷物は相当重くなるな~なんて予想してたのだが、驚くべき事に店に設置してある転送マシンというもので、服からなにから全て送れたので、終わってみれば完全に手ぶらになっていた。もちろん財布も中も軽いのだが。

 夕日が帰り道を照らしながらゆっくりと沈んでいく。

 

 「暁、今日は付き合ってくれてサンキューな。」

 「気にしなくてもいいわ。今日はなんだかんだ言って楽しかったし。…この子ももう少し懐いてくれないかな~。」


 そういいながら暁は、俺の背中で眠ってしまっている悠の頬をつんつんと触れる。規則正しい寝息はとても幸せそうだ。


 十字路に差し掛かり、暁は前に走った後、くるっとこちらに体を向ける。

 

 「それじゃ、また明日!…悠に手は出さないこと!いい?」

 「出さねぇよ!…んじゃまたな。」


 暁はもう一度こちらに手を振ると、右に曲がって帰っていた。俺は左に曲がり、今日の晩御飯について考える。

 悠をがっかりさせたくはないんだが……栄養バランスもしっかり考えないと……

 

 ガタッゴソッ!


 ………ん?何だ、今の音…背後から聞こえてきたような…

 ふと思わず後ろを振り向くと、頭の中が強烈な疑問に飲み込まれた。


 「…なに?…これ?」


 視線の先には、大きめのみかん箱が道の中心に置かれていた。いや、何コレ?さっき通った時は無かったぞこんなもの…


 再び、ゴソッとそのダンボールは跳ねる。…うわっ…普通に怖いんですけど!?

 思わず後ずさろうとすると、ダンボールの表面に何か字が書かれている。


 『渚ユキノさん、拾ってください。』

 「ピンポイントすぎるわっ!嫌だよ!怖いわ!」


 思わずそうつっこむと、ダンボールは予想以上に軽快なステップで跳ねて向きを変える。そこにも何か字が書かれていた。


 『まぁそう言わずに。』

 「断られんの予想してたのかよっ!?もう付き合ってられるかっ!帰る!」

 

 踵を返そうとすると、再びダンボールは向きを変え、文字を見せ付けてくる。


 『ユキノさん程度の足で、私から逃げられるとでも?』

 「足の無いダンボールに言われてもなぁ!?」


 しん、と世界が静まりかえり、いやな予感に襲われる。

 ダンボールは獲物を捕らえるハイエナのようにこちらを見据えている…気がした。


 ヤバイ、ここで逃げなければ…やられる!!

 そう思ったのと同時に、ダンボールはドドドドドドドドッ!!っというダンボールにあるまじき音で高速で跳ねながらこちらに襲い掛かってきた!!


 「ぎゃぁああああああああああああああああああっ!!」

 「…!っお、お兄ちゃんっ!!ど、どうしたのー!!」


 俺は背中の叫びを気に留めることも出来ずに、ただただ一心不乱に家まで道を駆け抜けた。

 ようやく家の前まで辿り着くと、力尽き、その場にへたり込む。もう背後からダンボールの走る音は聞こえない。


 「はぁ…はぁ…はぁはぁ……こんなに…走ったのは…はぁ…初めてかも…」

 「お兄ちゃん大丈夫ー?」

 

 悠が心配そうにこちらを見つめてくる。息を切らしながらどうにか頷くと、「何でもないよ。」と頭を撫でる。……さすがにダンボールが走ってきたから逃げた、なんて言って誰が信じるんだよ。

 …うん…忘れよう。…きっと幻想だったんだ。誰か俺の幻想ぶち壊してくれよ……どうか幻想であってください。


 「……よし、じゃあ入るか!俺達の家に!」

 「うんっ!」


 悠の手を握り、家のドアを開くと、もう一度後ろを振り返る。もうそこに気配は微塵も感じなかった。



  ※



 まさか、悠と生活するうえでいきなり壁にぶち当たるとは…

 いや、食事は問題なかった。ちゃんと野菜も食べてくれたし、おいしい、と言って貰えたので、むしろ作った甲斐(かい)があって嬉かった。

 勉強の復習をしている時は凄く大人しかったし、非常にいい子だった。

 一緒に遊んでいる時も、屈託の無い笑みが今までの疲れを全て吹き飛ばしてくれた。

 だが、俺はまだ気づけなかったんだ。避けられない事態にぶち当たってしまうことに。


 「さて、…悠、お風呂先に入りたいか?」

 「う?…お兄ちゃん、お風呂って…何ー?」

 「え?…あの……あったかいお湯に体を入れて…綺麗にすること…だけど……」

 「綺麗になれるの?!わーいっ!気持ちよさそうなのー!」


 まさか…いや、嘘ですよね。


 「悠、お風呂って初めてなのか?」

 「うんっ!だからお兄ちゃん、教えてー!」

 

 ………うわぁあああああああああああああっ!!さすがにお風呂を一緒はまずいだろぉおおおおっ!!!

 もも、もちつけもまいら!じゃなくてユキノ!!とりあえず暁に電話だっ!最悪は来てもらうしか選択肢が無い!

 すぐに暁を呼び出す。コールしている時間が非常に長く感じる。


 「あ、もしもし暁!ちょっと困ったことが…」

 『今ネトゲのイベントボス出現中なのよ!後にして!』

 

 ブチッという音が聞こえてきそうなほど乱暴に会話が切られる。

 嘘だろおい……ま、まぁ…まだソフィがアドレス帳にあるし!

 早速かけてみる。程なくして…ゆっくりとした口調の少女が電話に出た。


 「……はい…もしもし…」

 「ソフィ!今時間あるか!?」

 「………ん、ある…」

 「よかったちょっと頼みたいことがあるんだけどいいか!」

 「……そう、どんまい…今眠い…おやすみ…」

 「え?」


 次の瞬間にはツーッツーッという通信がきれた音が耳に届いていた。


 「ぬわぁあああああああああっ!なんなんだよあいつらぁ!」


 ま、まだだっ!まだ…神崎のことを……あ、……よく考えたらあいつの電話番号しらねぇ!!

 くっくそぉ…まさか…やるしかないのか…!…それとも今日は風呂は止めるか?…

 チラッと悠をみる。

 

 「お兄ちゃんとお風呂ー!えへへー!楽しみー!」


 ……無理だ…今更無かったことには……出来ないっ!!

 覚悟を決めろ!!最強の不死身!渚ユキノっ!!


 「……さぁ、俺たちの戦争を始めましょうっ!!」



  ※



 もうもうと湯気が漂う浴室は二人でも余裕で入ることが出来た。

 もちろん、悠はちゃんと大切な部分にはタオルを巻いてあるし、俺は風呂に入れるだけなので服は脱がないで入り……たかったっ!!


 「……うぅ…お兄ちゃん…悠だけタオルだけだと…恥ずかしいよぉー…」


 どこのエロゲシチュエーションだっ!!…とも叫べず、上目遣いかつ、頬を薄紅色に染めながら頼み込んでくる姿に俺は押し負けて、タオルを二枚装着して風呂に入ることになってしまった。……もしかしたらだけど…万に一つの可能性なのだが…俺は…ロリコンなのかもしれない…

 まず、悠の目を瞑らせ、頭を洗ってやっていると、「えへへー…お兄ちゃん!気持ちいいよぉー!もっとー!!」というアウトなセリフを言いながら悠はめをぎゅっと瞑ったまま幸せそうだった。

 ふと、そんな少女の顔を見て思う。…その子は…今までどうやって生きてきたんだろうか…

 でもそれは…今は聞かないほうがいいのかもしれない。だってこんなにも幸せそうに今を笑えるのだから。


 「ねぇねぇお兄ちゃん!今度は体洗ってーっ!!」


 ………………すみませんっ!文章は綺麗に纏めようとしたけど!もうこれ以上俺があなたを綺麗にするのは困難ですっ!!


 


 

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