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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
幕間(仮) どうせすぐに闘いが始まるで章
22/38

俺たちの戦いはこれからだ!(打ち切り最終回ではありません)


 もはや俺達のたまり場と化している保健室は、今日だけは異様な緊張感に包まれていた。

 すなわち、決闘直後のメディカルチェック中も、俺と暁の闘いは続いているのだ。

 勝負内容は…誰もが知っているポーカーである。

 だが!今の手札なら!!…勝てる!!


 「さぁ暁どうするよ?…降りてもいいんだぜ?」

 「だぜー!」

 

 俺は不敵な笑みで、(はるか)は俺の背中に抱きつきながら暁を挑発する。

 

 「ふふっ…よっぽど自信あるじゃない?」

 「ふっ…そう見えるか?」

 


 当たり前だろう。今の手札は…ロイヤルストレートフラッシュだからな!

 ワイルドカードがないポーカーでこの手札なら、俺の負けは有り得ない!

 暁も不敵な笑みでこちらを見つめる。…その顔はハッとなるほどに綺麗だった。


 「ま、私に負けはないでしょうけどね。」

 「私もそう思います!ましろが勝ったら(わたくし)はましろと結婚するんですからっ!」

 「どういう理屈よっ!!そして愛佳とは結婚しないわっ!!」

 「な、何故ですか!?私の夢の中でしっかり愛を誓い合ったではありませんかぁぁぁああ!?」

 


 愛佳は驚愕したあと、ショックのせいかその場にゆるゆるとへたり込んでしまった。とりあえずこの、ゆる百合姫は放置だな。…つか…夢かよ…


 「さぁユキノ!せーので行くわよ!」

 「あぁ!構わないぜ!」

 「じゃあ行くわよっ!…せーのっ!」


 互いが同時に手札を公開する。これで俺の勝利が決まっ…ん?


 「…あ、あれ?…ちょちょっちょっと待て…ん?ちょっと待て!?」

 「え……う、嘘!?じょ冗談よね!?ぜ、絶対勝てるって思っ…え、えぇえええええええええええええ!!?」

 

 両者は相手の手札を見て混乱と驚愕に思考が空回る。

 ゆっくりと状況を脳に伝達していこう。

 暁の手札は、全て同じスード、つまりハートマークの……10、J、Q、K、Aの組み合わせ。

 対して俺の手札も、全て同じスード、ダイヤの10、J、Q、K、Aの組み合わせ。

 

 「つまり……」

 「…どっちも……」

 暁は驚きながら思わず呟いたが、それに続くように俺の口からも呻きと驚愕がこぼれ、意思が完全にシンクロする。


 「「ロ、ロイヤルストレートフラッシュ!?!?!?!?!!」」


 有り得ない…有り得ないだろっ!!

 ソフィも信じられないといったように瞳を揺らす。


 「……ロイヤルストレートフラッシュの確率…1/649740……二人でロイヤルストレートフラッシュの確率……1/332220508620……」

 「もう凄すぎて(わたくし)、…理解できません…」


 ソフィの計算が正しいのかは分からないが、神崎の呟きはその場の全員の言いたいことだったと思う。……ほんと…宝くじで一等当てるより難しくないか?


 「ほぉ~二人とも仲いいねぇ~」

 

 保健室の主である夏見先生は、ニヤニヤしながら俺と暁の頭にある検査装置を取ってくれた。


 「よしっ!!じゃあラスト一回だけやるわよ!」

 「どんだけやるんだよ……じゃあ最後だぞ?…神崎、カードきってくれないか?」

 「え?…私がカードを切ればいいんですか?」

 「あぁ…一応不正が出来ないようにな。お願いできるか?」

 「まぁ、それくらいならいいですが…」


 神崎は不思議そうな顔でカードを手に取ると……おもむろに…


 「切り裂け!カマイタチッ!!」


 カードにシュパーァァァンッッ!!と衝撃波を打ち込み、進行方向にあった壁ごと綺麗に切り裂いた。


 「お、…おいぃいいいいいいいいいいいいいいい!?何してんのぉお!!?」

 「へ?言われたとおりに…切ったのですが?」

 「そっちの切れじゃねぇよ!?シャッフルしてくれって事だろーがっ!?」

 「すみません…ついうっかり…」

 「ついうっかりで壁ごとカードが切れてたまるかっ!」

 「日本語って難しいですね…これからは言葉は慎重に選んでくださいよ?」

 「え?今、俺が悪いの!?」

 

 暁に顔を向けると、むむー、唸りながら応える。


 「そうね…基本何か問題発生した時はユキノのせいね。」

 「アンタだよ!常に俺が巻き込まれてる問題の根源お前だよ、暁!」

 「えぇー?またまたぁー!ユキノ、エイプリルフールじゃないよぉ?」

 「何で自覚ねぇんだよ!?」

 「うっさいわね!ロリコンだけには言われたくないわっ!!」

 「だからロリコンじゃねぇっつてんだ…って……何してんだ(はるか)?」

 

 

 (はるか)がテテテッと俺の体に抱きつくように膝の上にチョコンと座って質問してくる。

 

 「ユキノー、ロリコンって、なにー?」

 「ほら見ろ!?お前のせいで(はるか)が変な言葉覚えそうになっちまっ…!!?……あのー、な、何で暁さんは拳を構えているのでしょうか?」

 

 暁は怒ったように頬を膨らませながら拳をこちらにロックオンしている。ちなみにキュートで可愛i…じゃなくて!


 「ふんっ!!まず第一に、ユキノがそんなことをされても全く違和感がない時点で怒ってるわよ!!」

 「…あ、えーと…これは、その…」

 「えへへー!悠、お兄ちゃんが…えーとー…ろり、こん?でも大好きだよー!!」

 

 悠は言葉の意味は理解できないようだったが、俺がその言葉を言われた時点で、渚ユキノは暁ましろにぶっ飛ばされる確率がグーンと上がった!


 「さて…ユキノ、何か最後に言い残すことは?」

 「異議あり!俺は無罪だっ!」

 「それは違うよ!」

 「どこを論破できるんだよっ!?俺悪くないだろ!!」

 「……真実は…時として闇に沈み、眠る…」

 「ソフィさん!?希望を捨てさせないでくれませんかね!」


 あぁ!!くそっ!状況を打開する方法がねぇ!!

 (はるか)は止めを刺すように、俺の胸に顔を擦り付けながら言う。


 「えへへー!これからは寝る時もー、お風呂もー!一緒なのー!!」


 ……なん…、だと…!?


 神埼が得心したようにポンッと手鼓(てづつみ)を打つ。


 「なるほど……ユキノさんの剣ですから…一緒に住む。つまり同居生活になるという事ですか…」

 「なっ…!!ちょっとユキノ!!どういうことよっ!!」

 「俺に聞くなよ!!…………でも、仕方なくないか?」

 「それは……そうだけど……うぅ……ううぅうっ!!」

 

 暁は頭を抱えながら葛藤するように暫く呻く。


 「何だよ…そんなに俺が信用出来ないのかよ…」

 「「「うん、だってユキノロリコンだから」」」

 「ロリコンじゃねぇよっ!!だいたい何でお前らそんな息合ってんだよ!?」


 暁、ソフィ、神崎の三人が事前に打ち合わせでもしていたかのように同調させてくる。俺への印象がロリコンしかないのだろうか…


 「じゃあ分かったわよ…しょうがないな、私もユキノの家に同居するってことで手を打つわよ……」

 「何で妥協したみたいに言ってんだ!?無理に決まってんだろ!」

 「ほらよく言うじゃない?無理よ無理よも出来るうちって!」

 「言わねぇよ!!思ったことすらないわ!」

 

 神崎は会話に割り込むように手をビシッと挙げる。


 「ユキノさん打開策を発見しました!ましろを私の家に同居させましょう!そうすれば毎日ましろに寝る前にキスと、一緒にお風呂と、一緒に………うふふふふふ…」

 「何かイロイロ危ない気がするわよ!?」

 「……さよなら…ましろの……貞操…」

 「縁起でもないこと言わないでソフィ!」


 暫くして諦めるように暁は肩を落とす。


 「…分かったわよ……悠との同居を許可しますよ…」

 

 そもそも同居させるのに暁の許可は必要だったのだろうか?と自分に問うが、いつもの事だと自己完結させる。

 どうせ、俺は暁がいなけりゃ生きていけないのだ。

 もちろん肉体的ではなく、精神的な意味でだが。


 「まぁ…ユキノも自分で強くなれたって実感できたみたいだし…これからも頂点目指していくわよ!!」

 

 暁は不敵な笑みを浮かべながら全員の顔を見渡す。最初に反応したのはソフィだった。


 「……異論…なし…」

 

 続いて神埼も暁の腕に絡み付きながら頷く。


 「(わたくし)は、どこまでもましろに付いていきますよ!」

 

 悠はこちらを更に強く抱きしめながら言う。


 「お兄ちゃんがそうしたいならー、悠も手伝うのー!!」


 その言葉で全員の視線が俺に集まる。俺は観念するように大げさに両手を挙げて苦笑した。

 

 「もう…お前の好きにやれよ…最強の《破壊者》、暁ましろ!」


 俺が選択した道は(いばら)の道より険しく、決して一筋縄ではいかないだろう。

 何度もくじけそうになったり、時には、後退してしまうこともあるかもしれない。

 でも俺は……暁となら、そんな道を笑いながら進めるだろうと、絶対的な確信すら生まれていた。





   ※   ※   ※





 自室のピンクのベッドにポスッと小さな音を立ててダイブしながら、少女は厚い本のページを開いた。

 そして隣に誰かがいるように問いかけた。


 「さて…どうだい君達?…ましろちゃん達のシナリオは順調に進んでいるよ。面白い?……え?…【四天王】と全然闘わないじゃないかって?……………ま、まぁ…ボクにも色々と都合があるんだよ…ゴメンね」


 ラティアは苦笑しながら開いたページの一文を、小さな指でそっとなぞる。その部分が優しい光で輝き始め、漆黒の文字だった部分はその本から消滅していた。

 パタンとその本を閉じ、子供を愛でるように優しく抱くと、仰向けになる。

 ラティアはすっと両目を閉じる。もう一度目をゆっくり開いた時には、立っている空間に学園長室の面影は一切なく、巨大すぎる程の図書館となっていた。

 ラティアはふわりと空中に浮かび上がり、4メートル程の高さの棚に飛んでいくと、すっと丁寧に本棚の元に仕舞った。そのまま上昇して棚を指で順番に差していく。


 「うーんとぉ……次は彼の本だね……確か…上から2段目で…左から3冊目だったような~………あ、あったあったっ!」


 題名が『ルシフェル』とだけ表記された本をすっと抜き取る。ふっと微笑んでから両目をゆっくり閉じ、もとの学園長室に帰ってきたことを視認すると、再びベッドにぽーんと身を任す。


 「さぁ!今度は君のターンだよ!堕天使ルシフェル君!」


 この学園の長である少女は、待ちきれないように胸を高鳴らせながら本を開く。


 開いたページの文章が輝き、迸る激しい閃光が世界を覆い尽くしていった。

 これから開く物語は、大切な人との約束のために堕ちた、天使だった少年のお話。


 

 


 

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