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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
《破壊者》と《不死身》が激突したらどうなるので章
19/38

ユキノ…あんたそこまでロリコンだったの?


 握っていた剣が、虹色に輝く光の粒子が渦巻かれ、幼女の姿へと姿を変えていった。

 幼女はすぐさまオレの懐に抱きつき、満面の笑みをこちらに向ける。

 ……とりあえず……学園に帰るか…まぁここも学園の敷地内なんだけど…ダンジョンが敷地内って…ここは魔王城かよ…

 

 そして…ここを出るにあたって重大な問題が一つ発覚する。これを見逃して外へと出ようものなら、確実に面倒なことになるのは回避できない。……それは、

 

 「…なぁ…とりあえず…服着てくれないかな?」


 

  ※  ※



 長い回廊を戻っている途中でも、腰周りから彼女が取れることは無かった。

 現在、彼女は俺のブレザーを羽織っているので全裸ではない。

 問題は、羽織った後のこの子の反応である。


 「えへへー!お兄ちゃんの匂いだぁー…」


 お兄ちゃんと言う神の単語をもろに喰らう。……なんとか吐血を食いしばりながら抑え、視線を背けた先には、

 

 「ユキノー…私いい加減怒っていいかな?ねぇ?」

 

 暁は横から全生命を全滅させそうな恐ろしい笑顔を向けて拳を構える。


 「……ユキノ…修羅場…」

 「ま、私は、ましろとくっつけるなら何でもいいですが。……よってましろ、私と結婚してください!」

 「愛佳は接続詞の勉強やり直してきなさい!」


 ガヤガヤと騒ぎながら回廊を進んでいくと、地上への階段が、外からの光で差し照らされているのが確認できた。


 「お兄ちゃん!早くいこー!!」

 「ねぇユキノ……いいかしら。」

 「な、なんでせう?」


 袖を引っ張りながら急かす幼女を見て、暁は何かを決意した顔で頷いて俺を見る。


 「…地上に出たら…一対一で勝負しなさい!!」

 「…………は?何言ってんだ?お前?」

 「だから!その剣使って私と勝負しなさいって言ってるの!」

 「いやいや無理だろ!?勝てるわけ無いだろ!!」

 「?お兄ちゃん勝てると思うよー?」


 剣の幼女は不思議がるように首を傾げる。………関係ないけど、そろそろ名前付けないとな…


 「いや、俺まだ剣振って闘う実戦なんて、したことないし。」

 「うん!知ってるよー!じゃあ私に任せればいいと思うのー!!」

 「は?……任せる?」

 「うん!任せて!お兄ちゃんは私に【存在】を食べさせてくれれば、…あとは私が精一杯動くのー!!」


 ……この子はエロティックな言葉を狙っているのだろうか。


 「私のお兄ちゃんは誰にもあげないもんっ!」


 幼女は暁のことを睨みつけるとあっかんべー、を繰り出す。


 「勝負はしてくれるのね?」

 「うん!私とお兄ちゃんが一つになれば!あなたには負けないんだからー!」


 おい勝手に話を進めるな……………と言いたいとこだが、俺も暁と勝負してみたいのは事実だったので堪えることにした。


 「……二人とも…ガンバ…」

 「私はましろを応援してますよ!頑張ってください!」

 

 俺たちは勝負のカウントダウンを階段と共に数えていった。



  ※  ※



 ……が、地上に出ると、階段の近くには十数人程の人だかりが出来上がっており、すぐさま決闘というわけにもいかないようだった。

 まぁ…噴水だった場所にいきなり地下へと続く階段ができてたら…こうなるわな。むしろ地下に誰も入ってきてないことに、今更ながら驚きだわ。

 俺達の姿を確認した生徒達はザワザワと騒ぎ始める。


 「おい…人が出てきたぞ…」「なんか…彼…ちっちゃい女の子一杯連れてない?」「うわっマジじゃん!ハーレムって始めてみたわ」「くそ!リア充爆発しろ~!」「というか…あの腰の近くにいるの少し小さすぎないか?」「うっそ!!超可愛い~まさかあの人って…」


 集まってきていた生徒全員が、同時に頷いて発した言葉が。


 「「「「「「「この人…ロリコンだ!」」」」」」」

 「だからちげぇって言ってんだろーがぁああ!!」


 何で全員でハモられてまでロリコン扱いされなきゃいけない!お前ら打ち合わせでもしてたのかっ!?


 「…全く…その剣に本当に認められる奴がいるとはねぇ!面白い!さいっこうに面白いねぇ!」


 その声が響いた瞬間、世界が凍りついた。さっきまでニコニコしながら抱きついていた幼女は、何故か怒ったような顔で「うーっ!!」と前方を威嚇している。 

 虚空からゆっくりと顕現されたそれは、心底楽しそうな笑みを浮かべながら漆黒の翼を広げる。


 「!!ルシフェル!」


 暁が咄嗟に拳を構えるが、ルシフェルはふっ、と鼻で笑った後に両手を挙げる。

 

 「今回は、別にお前らと遊ぶ気はねぇよぉ。ただ様子を見に来ただけだ。」

 

 そういってルシフェルは腰に掴まっている『代償の剣』である、幼女を見る。


 「よぉ!『代償の剣』!!元気にしてたかぁ!」

 「うぅぅー!!」


 それに対し、幼女は更にルシフェルを藍色の瞳で威嚇しながら俺の腰に抱きつく。


 「全く…嫌われたもんだねぇ…」

 

 ルシフェルは苦笑しながら、肩を落とす。この二人?には何があったか知らないが、ただならぬ因縁があるようだ。


 「ま、精々大事にするこったぁ!また遊べることを期待してるよぉ!」

 

 ルシフェルは翼を広げて空を舞い上がってその場を去ろうとしたが、不意に思い出したように口を開く。その瞳はさっきとは一変して真剣な眼差しだった。

 

 「………渚ユキノだったっけかぁ?」

 「は、はい…俺ですけど…」

 「いいかぁ…その剣に…捧げるものは…絶対に間違えんなよ。」

 「え?」

 

 思わず(まばた)きをした瞬間、ルシフェルの影はもう既に残っていなかった。

 ルシフェルの置いていった言葉を考えようとしたが、思考はある少女の声によって絶たれた。


 「おぉお!!君たち、ボクの創った仕掛け解けたんだ!さっすがボクの彼氏がいるだけあるね!」


 ラティア学園長は、今日も可愛らしいピンクのフリフリが沢山ついた服装で、あいかわず子供だった。

 学園長は感心しながらゆっくりと人の郡を割って歩いてくる。

 

 その様子を見て、暁はしめた!、言わんばかりのガッツポーズをつくる。…はいはい勝負出来ますね、こっち見なくても分かります…

 俺はチラッと来た視線を頷きだけで返すと、暁は幼女とはまた違うベクトルの可愛さがある笑みで返してくる。しょうがないやつだな…


 「学園長…俺あなたの彼氏じゃないです。」

 「お兄ちゃんは私のなのー!」

 

 幼女ちゃんヤメテ!面倒になりそうだからっ!


 「え?ユキノ君……ボク…君との間でこの子…産んで無いよ?」

 「当たり前だ!!」

 「じゃあこの子とはどういう関係なのだよ!!」

 「なんで不倫相手見つけたみたいに言ってんだ!?……だいたい学園長なら知ってるでしょ…この子は…」

 「うん!知ってる『代償の剣』でしょ?」


 こ、こいつ!単にふざけたかっただけか!……何だよその悪戯がばれた時の子供みたいな笑みは…………今回だけは許してやる。

 学園長が剣幼女に視線を合わせる。といっても身長的にはあんまり変化無いけど…


 「ねぇ…君って名前とかもらったの?」

 「……まだー…」

 「もうっ!駄目じゃんユキノ君!この子も可哀想だよ。」

 「…って言いましても…俺名前なんてつけたこと無いんですけど…」

 「じゃあ…この子の願いを名前にしてあげたらいいんじゃないかな?」

 「…願い…ですか?」

 「そ、…ねぇ君…自分のお願いってなに?」

 

 学園長は優しく剣の子の手を取って問いかける。

 それに答えるように、小さい腕は俺に勢いよく抱きつく。

 

 「お兄ちゃんとずっといたいのー!!」

 「…ずっと?」

 「うん!ずっとー!」

 

 学園長は笑顔を返すと、俺に再び向き直る。


 「だってよユキノ君?…彼女は君とずっといたいって」


 暁たちもうーん、と唸りながら名前を考えてくれているようだ。


 「ずっとか………永遠(とわ)とか?」


 永久(とわ)か……むむ…


 「……エターナル…」

 

 ソフィ、せめて名前っぽくしよう。


 「そうですねぇ…ましろなんてどうでしょう?ずっとましろと居たいっていう気持ちを込めて。」

 「お前の欲望しか入ってねぇじゃん!」


 どんだけましろLOVEなんだよ!?自重しろや百合《切断者》!


 「……ずっと…か……」


 とりあえず、それに関連するワード考えてみるか。

 永久、エターナル、永遠、悠久……

 ん……?悠久……確か…悠久の悠って…訓読みで何て言うんだっけ…確か…


 「……………(はるか)

 「?…お兄ちゃん?どうしたのー?」

 

 はるか…何故か俺の頭に妙にしっかりと響く。……よし、決めた。

 ずっと一緒に居られるという願いを込めて、俺は腰の落として名前を授ける。


 「今日から君は…はるかっていう名前でいいかな?」

 「(はるか)?……………」

 「……ど、どうかな…」

 

 気まずい沈黙が続く。

 不意に、腰周りから重みが無くなり、剣の彼女は俯いてしまった。

 駄目か……

 だが次の瞬間、俺は心底ほっとすることになった。

 

 「お兄ちゃん……とってもとってもとぉぉってもー!だい好きー!!!!!!」

 「おいちょま、うわぁ!……いってぇぇぇ!!」


 幼zy…いや、(はるか)は俺の首元に飛びつきながら腕をからませる。咄嗟の事に反応できず、俺は無様に地面に後頭部を(したた)かに打ち付ける。

 それでも俺はぎりぎり(はるか)だけは投げ出さずに済んだ。

 頭痛い……意識が飛びそうだった。

 

 「なっ!!?ユ、ユキノ!?」


 暁の顔が一瞬で驚きに変化し、俺は気意識が飛んだ方がよかった事に気づく。

 ……唇には熱のある柔らかいものが押しあてられていた。

 体と思考が固まってしまっていると、(はるか)がゆっくりと唇を離す。

 

 「ありがとう…大好きな…お兄ちゃん…」

 「お、お前…」

 「んー?好きな人にキスしたいのは当然だよー?」


 その言葉に暁はカァァ…と頬を赤くする。……止めろよこっちまで思い出しちゃうだろ……

 だが、暁の怒りもついに、沸点を飛び越えた。

 

 「もういい!ユキノの目を覚まさせてあげるんだから!!学園長っ!」

 「うん!分かってるよ。……許可します!」

 「行くわよ!ユキノ!!」

 「お、おいちょっと待て!まだ心の準備が…ってあーもういいわ!(はるか)!行けるか!?」

 「うん!いこー!お兄ちゃん!」

 

 ルールは二人で決め、不公平がないように調整したつもりだ。

 

 



 【  勝利条件  相手を除外させる。

          または、戦闘不能に陥らせる

    

    敗北条件  勝利条件を満たせなくなる。

          または、戦闘不能になる。

          降参は敗北とする。

  

                            】




 「言っとくけど!簡単に負けるつもりなんてないからな!!」

 「当然!全力で来なさい!ユキノ!」

 

 暁はニヤッと不敵な笑みを俺に向ける。

 彼女はさっきまで嫉妬しているように見せていたが、俺は知っている。あいつの心は寛大だ。

 ただ純粋に、俺と勝負がしたかっただけのだろう。

 それに対し(はるか)は光の奔流に包まれ、剣へと姿を変える。


 「あなたじゃ(はるか)とお兄ちゃんの愛を崩せないもんねーだっ!」

 「この………絶対ぶっ壊す!!…」


 ……多少は独占欲も入っているかもしれない………


 「「アビリティ・リリース!決闘開始デュエル・スタート!!」」


 俺も……お前に勝ちたい!!勝負だ、最強の《破壊者》暁ましろ!

 

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