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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
少年よ!もっと強くなりま章
17/38

ユキノのその行動は死亡フラグよ!!


 冒険ものRPGの中では、武器の存在は必ず重視されるといってもいい点だろう。

 その中でも、王道になっている武器、それが剣系統の(たぐい)だろう。

 その理由は、なによりカッコイイし、ど派手な威力を秘めているものが多いので人気も非常に高いのだ。

 今回俺が手に入れようとしているのが、まさにその王道の武器である剣なのだが……


 「……なぁ…普通の学校って……中庭にダンジョン隠されてんの?」


 そう、雷電先輩から貰った情報どおり、中庭にある鳩や白鳥の白い彫刻を逆向きにした結果、噴水は放出を止め、水がそこから完全に抜けると、ゴゥンゴゥンゴゥンゴゥン……という重々しい音と共に、噴水は二つに割れて、ダンジョンにありがちな下へと続く階段が出現したのだ。


 「ま、まぁ…学園長があのような人なら、学校も学校ですから……」

 「……『面白そうだったか作った』………とか言いそう。」


 なるほど…神崎やソフィの言うとおりだ…この学園なら、あの人が学園長と言うのなら、納得だ。あの人(学園長)なら中庭にダンジョンつくるくらい造作もことだろうし(ロリ学園長マジチートスペック)


 「よぉーし!!行くわよ皆!」

 

 暁は腕をブンブン振り回しながら不敵に笑う。その笑みを見ると、この先何が起ころうと、全て暁に任せられると思うことが出来る。


 いや


 もうそれじゃ駄目なんだったな。任せるだけじゃない…俺もアイツの隣で進みたいんだ。ただ、近くにいるだけは、もうご免だ。

 俺は…行くよ。必ず強くなって見せる。

 階段に広がる闇は……俺達をゆっくりと、だが確実に包み込んでいった。



 ※   ※



 ソフィが高速で呪文を詠唱すると、常にソフィの近くで浮遊している本自体が白っぽい光を放ち、内部を明るい照らし出した。

 光が届かない先まで、無数の剣が床に突き刺さっている回廊が続いており、ゾッとするほど静かだったので、足音が妙に響く。

 全員で視線を交え、会話無く注意深く進んでいく。一本道とはいえ、今にも横に突き刺さっている剣が襲い掛かってきても不思議ではない雰囲気である。

 そして十分くらい歩き進めると暁は…


 「暇ね…」

 

 おい。全然まだ時間たってねぇよ。

 ソフィはお腹を押さえながら、小さく呟く。


 「………お腹…すいた…」

 

 だから…さっきご飯食べたじゃん…

 神崎はそんな二人を見て呆れるように…


 「じゃあ一旦帰ります?」

 「いやはえーよ!!!?お前らどんだけ忍耐ないんだよ!」

 「おっかしーわね…最近忍耐力上げるためにドラ○エでダメージ追っても回復しないようにしてるんだけど…」

 「いのちをだいじに!」


 ソフィは何かを決意したように…前方を見据えて止まる。


 「……………」

 「ん?どしたソフィ?早く行こうぜ。」

 「…………もう飽きた……」

 「は?」

 「……魔法で……皆を加速させる……『フィジカル・アクセラレート』…」

 

 近くで浮遊していた本のページが高速でめくれ、俺たち全員の体には白い光の膜のようなものに覆われる。

 神埼は少し戸惑うようにソフィに問いかける。

 


 「あの…ソフィさんこれは?」 

 「……とりあえず…前方に向かって一歩だけ進んで…一歩だけだよ?」

 

 ソフィは質問には答えず、代わりに自分の魔女帽子を少し押さえながらみんなの顔を見る。


 「はぁ……では、一p」


 神崎は右足を踏み出した途端、その場から残像を残して前方の闇に消えていった。

 

 「え?何コレ?何があったの!?……スッゴイんだけど!」

 

 暁はキラキラした目で神崎が消えていった前方の回廊を見据える。

 

 「………歩く、という動作を加速させた……じゃあお先…」

 「あっ待って!私も行くわ!!」

 

 ソフィと暁は一歩前方に踏み出し回廊を瞬時に駆け抜けていった。

 ん?待てよ……ソフィから離れてしまったということは光源となっていた本も消えてしまうという訳で……

 ……超…真っ暗闇なんですけど…


 「え?ちょ!…………あ、やべ…」


 咄嗟にその時に気づいて光源を探すためにキョロキョロ見渡した結果……道がどっちか分からなくなった。

 ともかく横に剣が沢山、そして道に延々とつきささって続いていたはずだから、それを触れながら辿って行けば…

 ここまで言えばお分かりだろうか?

 剣を辿る為には、剣に触れるために動かなければいけないわけで……記憶をたどって剣に向かって一歩踏み出すと……

 ガキャャァーンッッ!!


 「ぎゃ嗚呼あああああああああああああああああああああっ……!!!」


 全身が無数の剣に切り刻まれました。なお直すのに七分かかったンゴ。

 


 ようやく、前方を把握し、(それでも軌道が若干ずれて何度か剣に串刺しにされた。)ボロボロになりながら暁達と合流した。すぐさま加速を解除してもらう。…まだ加速世界には行けないな。


 「おっそーい!」

 

 暁は、どっかの島風ちゃんみたいに言いながら頬を膨らませ、俺を見やると、ボロボロの服を見て首を傾げる。


 「あれ?ユキノー、何でそんなコミケ行ってきたみたいになってるの?」

 「うん……まぁ色々あってな…」


 隠し切れない疲労で思わずその場に座り込む。


 「………大丈夫?…」

 「あぁ…とりあえずh…ってな、なな何してんだソフィ!!?」

 「……検診…」


 ソフィは超至近距離で俺の体をペタペタと小さい手で触っていた。

 あまりにも近くにいるので、胸が何度も当たってしまっている。小学生くらいの体躯なのに、それに見合わない豊満な胸がぽよっぽよっぽよっぽよ…、俺の色んな部分をその柔らかい感触で攻略していった。

 …………ヤバイ……ヤバイぞ…これは…死にたいくらいに理性が溶け始めてるぅぅぅうっ!!!

 だが、そこで…俺はもっとヤバイ状況だったことに気づく。


 「ふぅーん…へぇ…そぉう……ねぇ…ソフィ、私にもケンシンやらせてくれない?け・ん・し・ん!!」


 暁は怒りと不敵な笑みが混ざったような恐ろしい顔で、座り込む俺を見下ろす。…ヤバイなんで拳鳴らしてんの?…検診ですよね?


 「ふふふっ…大丈夫よユキノ…私は「不殺」を誓った九頭龍閃くずりゅうせんだから!!」

 「それ検診じゃねぇ…剣心だっ!!」

 「心配しなくてもぉ…私は剣心より速く拳を打てるから大丈夫…」

 「何が大丈夫!?心配しかねぇよ!」

 「大丈夫!ユキノの感情の心配は停止できないけど…身体における心肺の停止はさせてあげる!!」

 「何でちょっとうまいこと言ったみたいになってんだ!?」


 なんとかソフィや神崎の仲介で、一旦暁は怒りの矛を収め、大きくため息をつく。

 

 「こ、今回だけだからね!今回だけはぶっ飛ばさないであげるんだからねっ!」

 

 暁は頬を少し赤くしながらぷいっとそっぽを向く。……何デレ?…脅デレですか?…………少し可愛いと思った俺を心で殴った。


 「……でもそのままじゃ…格好悪い……」

 

 ソフィは…浮いていた本を手元まで寄せ、何語で書かれているのか分からない文章をなぞって詠唱する。

 すると、俺のボロボロだった服が光を纏い始め、やがて光の奔流が激しくなっていった。

 

 「お、おいおいおい!どうなってんだ!?これ?」

 「……すぐ終わる…」


 言葉通り、光の輝きと奔流は徐々に弱くなり、いつも俺が着用している制服が形成されていった。

 

 「お?服直してくれたのか…サンキューな。」

 「……直しただけじゃない…」

 「へ?」

 「その服は特殊…どんなにボロボロになっても三分後に元に戻る……」

 「マジか!!すっげぇ優れものじゃん!!」

 

 これで全身が服ごとバラバラに吹き飛ばされようが、体が再生したら服も戻ってるラノベの主人公みたいになったぜ!!


 「……しかも…」

 「え?まだあんのか?」

 「…いつも思ってた通り…ユキノ…制服着てると……カッコイイ…」

 

 ソフィは目を伏せながら、頬を赤く染める。

 ………ん?…あれオカシイな…今回のソフィさん超ヒロインモードなんですがっ!……ドキッした!鼓動早まった!全身が熱いなるのを感じ…

 

 「んじゃぁ…ぶっ飛ばしてもいいよね?」


 その怒りを封じ込めた一言で全てを確信する。オワタ。

 暁の拳は俺の脇腹を完全に捉え、塵あくたのごとく、盛大に空に散らされた。




   ※   ※   ※



 

 学園長室の窓は大きく開け放たれ、机に開いて置いてあった本のページがパラパラと風でめくれる。

 その本は、あらゆる世界の武器のことが載っている図鑑だった。もちろんラティア学園長以外はこの本を所持などしていない。オリジナルのお手製である。

 世界に出回っている説明も一部分あるが、それはその武器を存在させるための最低限の情報なのだ。この本にはそれ以外の全ても載っている。


 偶然か必然か…その本は、ある一振りの剣のページで、めくるのが止まった。





 ≪ 魔剣NO.999『代償の(つるぎ)

   

    この剣は運命を超越することも、

    世界を善へ導くことも、

    悪へ堕とすことも、

    絶対なる神を打ち砕くことも、

    英雄になって世界を駆けることも、終焉の果てまで堕ちることもできる。

   剣は主の【存在】を喰らい尽くすまで不滅にして終焉を迎えぬ。

    

  代償を捧げし者よ。命を捧げることを恐れるな。だが決して捨てるものを間違えるな。

 

  そして忘れるな。意思ある(つるぎ)を手に入れた者は、いつの日か必ず、大切なものを失う。

   

                            ≫




 解説部分より下図では、一人の小さい少女が、黒髪の隙間から藍色の瞳を鈍く光らせながら、一糸纏わぬ姿で佇んでいた。

 

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