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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
頂点に立つ為に進みま章
13/38

これが伝説の…嵐の前のゆりゆりなの!?


 俺は、学園長に(無理やり)手渡された小さめな花束を持って、保健室に向かっている。

 暁は決闘で神崎に勝利した後気絶して、俺達のいた体育館に帰還することなく神崎共々、保健室に直接転移されたので、こうして迎えにいっているという訳だ。

 もちろんソフィも当然のようについて来ている。

 

 「っと…こっちか…」


 保健室までの道のりは、生徒手帳から空間に浮かび上がっている案内地図に表示されているので迷うことは無い。


 「……ねぇ…ユキノ…」

 「うん?どした?」

 「……決闘始まる直後から…ずっと思ってたこと…聞いていい?」

 「え…あぁ別にいいけど…」


 そういやソフィ、その時からずっと黙ってたな。


 「……ユキノは…ましろが絶対に負けないと思ってた…何で?」

 

 なんだ…そんなことか。


 「…まぁ…あいつの強さは…俺が一番よく知ってるからな…」

 「??…ましろの……強さって…何?…破壊力?」

 「…まぁ、それもあるだろうけど……」


 まぁ、ソフィもいずれ分かるだろう。あいつの、暁ましろの強さを。

 いや、実際俺も鱗片(りんぺん)を知っているだけか。

 そうこう言っているうちに生徒手帳の案内地図が終了し、保健室まで辿り着く。

 扉に生徒手帳をかざすと、ピピッという音と共に開閉した。


 「…失礼します…暁っと…うぉ!?」

 「あ、ユキノ?やっぱ来てくれたのね!!」


 いや、…それより…お前の頭に装着されたナーヴギ…じゃない…ヘッドギアの説明をしてくれ。

 暁は「ああ、これ。」と頭についたヘッドギアをコツコツ触れながらドヤ顔になって説明に入る。


 「分からないわ!!」

 「威張るな!!」

 

 相変わらず暁はどこまでも暁だったので、ひとまず安心するが。

 そして反対側のベッドから小さくため息が漏れる。 

 

 「全く、あなたって人は…この装置は、精神のメディカルケアに使用するって、ついさっき先生が言っていたではありませんか…」

 「そうだっけ?」

 「そうですよ……このような人に(わたくし)が敗れるなんて…」


 愛佳(まなか)はチラッとこちらを、いや、正しくは暁を見つめる。


 「…ん?どうしたの?愛佳。」

 「そういえば…どうして私の名前を呼び捨てなのですか?」

 「あれ?嫌だった?えーと…私は、友達になったなら名前で呼びたいのよ。」

 「と、友達…ですか?」

 「うん!だって愛佳、しっかりしてそうだし、面白そうだし、強いし。そして何より…可愛いから好き!」

 「か、可愛い!?好き!?なな、何を言っているのですか!?」


 神埼は急に頬を赤くし、動揺し始める。

 暁はキョトンと首を傾げる。


 「うん?正直に感想言っただけよ?」

 「そ、そうですか……………………これは、告白でしょうか……えぇきっとそうです!…いきなりそんなこと言われても…とはいえ、ときめいてしまったのも事実……そもそも私達は女の子同士ですし…ぅぅ……まずは手をつなぐ所から…じゃなくて…ぇぅ…」


 神崎は一人で小さい声でブツブツと呟き始めたので、俺と暁は同時に首を傾げて、神崎を放置することにした。

 そして俺は暁の体をもう一度見て、ふと気がつく。


 「…あれ?…お前怪我してなかったか?」

 

 確か、脇腹が切れていた気がするが。

 

 「あぁあの傷…何故かこっちに戻ってきたら治ってたのよねー…見る?ほら。」


 暁はシャツをペラッとめくり上げ、陶器のような白い肌を露にす…


 「ちょ!?ななな、何見せてんだよ!!」


 慌てて俺は顔を横にずらす。

 暁の性質(たち)が悪いのが…


 「あれれー?ユキノくーん!顔が赤いよぉ!どうしたのぉ!」 

  

 俺がこうなることを知っていて、わざと、やっていることである。

 俺がチラリと暁を睨む。………悪戯が成功した子供のような可愛らしい笑顔は、正直…反則だと思った。


 「……ユキノ…やっぱり…ロリコン…」

 「ソフィさん!何で今の流れでその結論になったのか説明をくれ!!」

 

  俺が叫んだ直後、保健室の奥の部屋から少女が不思議そうな顔をして出てきた。


 「ありゃ?一気に人数が増えた?」



 紫がかったショート髪。暁ほどじゃないが、身長は低く、中学生くらいにしか見えないその少女は、大人用の白衣を着ているのか、サイズが全く合っておらず、袖で両手が見えない。


 「あ、先生!」

 「え?……先生?」

 「うん!私と愛佳はこの先生にコレつけられたの。」


 暁は頭についているヘッドギアを指差す。少女はいかにもといった感じで胸を張る。


 「そうよ!私がここの保健室の先生、療原夏見(りょうはら・なつみ)!夏見ちゃんでいいよ!神崎の心理状態が少し乱れていたから様子を見に来たんだけど…」


 そう言って、夏見先生は神崎の頭の装置に触れる。先生は「…ほほぅ…」と小悪魔っぽい笑みを浮かべて頷いた。


 「……なるほど……」

 「へ?先生!なにが…なるほどなのです!?」


 神崎は少し赤い顔のまま問いかけるが、夏見先生は「問題ないよ。」と笑みを浮かべる。

 夏見先生は続けて暁に付けられた装置に触れると、大きく頷く。


 「精神異常なし。感覚正常機能。もうそれ取っていいよ。」


 暁と神崎は装置に手をかけて外す。


 「はぁ…あんまり付けてる感じなかったけど、いざ外すと開放感があるわ。

 ……あ、そうだ先生。私の切られた傷、決闘が終わってこっちに戻ってきたら無くなってたんですけど。どういうわけですか?」

 

 夏目先生は「何を言っているんだ?」と首を傾げる。


 「決闘で受けた外傷は、その決闘が終了した時点で、勝者・敗者関係なく全治するんだよ?」

 

 なるほどと全員が頷く。だから決闘では死なないっていう訳か。

 あれ…でもそしたら…


 「………保健室…意味…ある?」


 ソフィがもっともな質問を投げかける。保健室とは傷を治す所ではないのか。傷が治るなら必要なんて無いだろう。


 「あるある!例えば君達みたいに決闘後に転送されて来る生徒なら、精神チェックとか、傷を受けた時に発生する痛みの感覚を治したりね。 暁、君の場合だと左腕の感覚神経が切られたけど…今は違和感無く動くでしょ?それは私のおかげなんだよ。」

 

 「へぇ………つまり、どういうことなの?」

 「…………もういいよ。」


 夏見先生は、更に首を傾げる暁への説明を断念し、遠い目で天井を仰いだ。


 


 全員で保健室を後にし、自分達の教室に戻ろうとすると、暁がハッと何かに気づいた。


 「ねぇねぇ愛佳。…そういえば…決闘に負けた方が、勝った相手の命令を何でも聞くっていう話だったわよね?」


 ギクッという効果音が聞こえてきそうな身振りで、愛佳はその場で停止する。


 「…そ、そうでしたっけ?」

 「言ったわよ!ねぇユキノ!!」

 「いや、俺に振るなよ。」

 

 俺は横目でチラッと愛佳を見る。

 約束は覚えているのだろう。その瞳には、諦めと、要求されるものに対しての恐怖が渦ま………って…あれ?むしろ顔が徐々に赤く染まっていくのですが…


 「………うぅ…ぅにゅぅ…し、仕方ありません!!

 神崎愛佳として!あなたの命令受け入れましょう!!」

 

 意を決したように神崎は真剣な眼差しで暁を見据える。


 「じゃあ、命令します!愛佳、あなたは私の友だ…」

 「恋人になってあげます!!!!」


 暁が言い終わる前に、神埼が大声で叫んだ………………え?…こ、恋人!?

 なに何故!?どゆこと?暁でさえ固まってんじゃん!つか何!?え?

 思考が停止して理解が追いつかない。いや、たぶん神崎以外の全員の思考が停止しているだろう。

 暁は目を点にしたまま、神崎に問いかける。


 「あの…ま、愛佳…それってどういう…」

 「ですから!ま、ましろは…私のことが…その…す、好きなのでしょう!?でしたら…わ、私も覚悟を決めてあ、あなたの恋人になってあげると言っているのです!!」

 「は……え?…ち、違うわよ!!そういう好きじゃないわよ!?友達として好きってことで…ライク的な意味で、ラブって訳じゃ…」

 

 暁も頬を赤く染めながら動揺する。ヤバイ…動揺した暁初めて見たけど……結構可愛いな。はっ!違う!別にロリコンではない!

 

 「…え?、で…では……私の心を弄んだということですかぁ!!?」

 「そ、そっちが勝手に妄想しただけでしょうがぁ!?」

 

 ウガーッと両者が顔を染めながら言い争う。たぶん、どちらも本気で怒っている訳ではない。恥ずかしいのだろう。

 

 「………ゆるゆり?」

 「こりゃぁ百合なのか?」

 「………私…ちなつ派…」

 「俺的には京子が好きだな。」

 

 俺とソフィは暫く続きそうな口論を、温かい目で見守る事にした。


 

 10分後。

 ついに両者が息を切らしながら、互いを見つめた。


 「ぜぇ…はぁ…じゃ、じゃあ…もういいわよ!私は愛佳が友達と思ってるけど……愛佳が私のこと…どう思うかは…す、好きにしなさい!」

 「!!!!……つ、ついに!…ましろのデレ期が…」

 「デレてないわよ!」

 「なるほど…ましろはツンデレですか。にゅふふ…そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか!」

 

 神崎は暁の腕に抱きつき、満足そうに密着している。


 「っ!近い………ユキノー…ソフィー…」

 

 暁が少し困ったような顔でこちちを向くので。

 俺とソフィは無言で頷き、同時に親指をぐっと立てた。


 「ふぇぇぇ……」


 なんかもう……うん、お幸せに。


 

 暫くして、暁が神崎を引き離して、小さくため息をついた。


 「うぅ…命令は、『私の友達になって!』にしようとしたのに…まぁいいわ…」

 

 いいのかそれで?


 「それじゃあ愛佳…命令というか…質問でもいい?」

 「はい!何でもいいですよ。…結婚式場ですか?新婚旅行の予定ですか?…私はましろとならどこで…」

 「聞いて無いわよ!………愛佳は5秒で先輩を倒したのよね?」

 

 愛佳は「ええ、そうです!」と大きく胸を張る。


 「私達のチームは2年4組の先輩一名に、開始5秒で勝利しました。 正式には私のカマイタチで切ってしまったのですが、相手になりませんでした。」

 「じゃあ何で、一人だけにしたの?もっと勝負を挑みはしなかったの?」

 「!!っ!そ、それは…」


 愛佳の目が泳ぎ、動揺を隠している。いや……体が震えている?


 「………大丈夫?」


 ソフィは愛佳の体に触れると、僅かにビクッと体を跳ねさせて愛佳は大きく息を吐く。


 「…すみません…大丈夫です。……私は勝負に挑まなかったのではありません…」

 

 神崎は無意識なのか、暁の腕を強く抱きしめていたが、抱きしめられている当人は止めはせず、無言で進行を促す。

 

 「私達は……負けたんです………圧倒的な力の前に………いえ、あれは負けとは言いませんか……勝負以前の問題に感じました。力量も図れず、なんて…なんて私は……愚かなことを!!」

 

 苦しそうに叫ぶ愛佳に、暁はそっと微笑んだ。


 「愛佳は愚かなんかじゃないわ。だって…私の友達になれたんだもん。」


 理屈はよく分からないが、それでも愛佳はクスッと微笑んだ。

 

 「ありがとうございます。ましろ」

 「それで…愛佳達が負けた相手って…誰?」

 

 愛佳は大きく息を吸い、ゆっくり呼吸を整える。


 「私達が負けた相手は……【四天王】称号【アレス】の保持者……堕天使ルシフェルです。」


 「「「!!!!」」」


 俺を含め、暁、ソフィの全員はその場で絶句せざるを得なかった。

 ついに、【四天王】との接点が見つかった。


 


 ※  ※ 




 暁たちが、神埼にルシフェルの名前を聞かされた同時刻、学園長室。

 

 学園長であるラティア・フォルティシムスは虚空のチラリと一瞥する。

 

 「あ、来た。入っていいよぉ!」

 

 ラティアがそういうと、虚空が歪み崩れ、一人の少年が顕現していく。

 神々しくも誰もが畏怖するような真っ白い服、病的に白い肌。それとは対照的に、翼からは光すら反射できない漆黒の翼が授けられていた。

 少年は心底楽しそうな笑みを浮かべたまま、床へと降臨した。

 そのまま部屋をぐるりと一瞥すると、呆れるように笑う。


 「全く…相変わらず子供っぽい趣味してるねぇ~…あんたは…」

 「えへへ~照れちゃうよぉ…」

 「全く褒めてねぇよ……んで?…何の用だよ。呼び出したからには、楽しいことなんだろうなぁ?」

 

 少年が疑念の眼差しを向けると、ラティアはえっへんと無い胸を張る。


 「実はね~…君に勝負して欲しい相手が…」

 「帰る。」

 「わぁぁ!!?『君はまだ帰っちゃいけないよ』!最後まで聞いてよぉ~!!」

 

 真意が紡がれ、虚空に消えかけた姿が逆再生のように戻される。

 少年は再び地に足を付けて舌打ちする。


 「ちっ…全く…あんたの能力は相変わらずだな…これでも全力で帰ろうとしたんだが?」


 学園長をあんた呼ばわりする少年を、ラティアは咎めもせず、続ける。

 

 「いいから聞いてよぉ…僕のシナリオで必要なんだよぉ…」


 ラティアは懇願するように上目遣いを少年に向ける。少年はシナリオなど少年は全く興味が無かったが、どうせ決定しているのだろうと、鼻で笑う。

 

 「全く…前回の相手は雑魚過ぎたんだ…今回は…面白い相手なんだろうなぁ?」

 「ごめんね~あの戦いもシナリオの布石だったから…今回は…とっても面白い相手だと思うよ?…堕天使ルシフェル君。」

 「へぇ………期待しないで待ってるよ。」


 ルシフェルは、ニヤリと楽しそうな笑みを浮かべ、刹那にその場から消え去った。

 

 

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