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この学園は最強しかいない!  作者: 魔王さん
頂点に立つ為に進みま章
12/38

暁、お前だけは負ける気がしない


 暁が決闘開始と同時に光の奔流の包まれた後、俺は学園長に、思わずげんなりとしながら問いかける。


 「あの…学園長…質問いいですか?」

 「なにー?ボクの彼氏のユ・キ・ノ・君。歴代ポケ○ンで何地方が一番好きか?…うーん…ボク的にはホウエン地方派かな。」

 「彼氏じゃないし!聞いて無いし!俺的にはシンオウ地方派だよ!…いやそうじゃなくて!!…何で俺は学園長を肩車してるんですか!?」

 「あれ?重かった?」

 「いや別に重くは無いですけど。」


 むしろかなり軽い。そんなことより………あなたのスカートから伸びる小さく柔らかい太ももが、顔に当たってイロイロ危ないのですが………ちょっとグラッと来ちゃうだろ。


 「なら問題ないよ!だってボク達付き合ってるじゃん!」

 「だから付き合って無いです!!」


 ぐ……そんな上から無邪気に笑わないで下さい。……そうだ…無心になれ…無心だ。俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない……よし。

 

 「…ぐっ……じゃ、じゃあ次の質問、……何で暁と神埼を闘わせたんですか?…別に学園長なら止める方法はいくらでも…」

 「うーん【ボクのシナリオ】にはこの展開は欠かせないんだよねー。」

 「……………はい?」

 「ほーら、そんなことより!そろそろ試合始まるよ!」

 

 俺は学園長の言葉の意味が理解できないまま、ただ空間に浮かび上がる暁ましろの映像を見つめることにした。


 勝てるという確信を持って。



    ※    



 思考を眩い光の中に埋める。

 この学園に来てから、3回目の決闘の光。

 今までの決闘とは違う点、それは、隣にユキノがいないこと。

 ふふっ…だけど何でだろう……寂しいなんて感じないし、負ける気なんて一切考えられない。


 『…えーと…その…お、俺は、…お前を信じてっから……』


 ユキノの言葉が妙に頭に残る。気恥ずかしげに言う姿は、何回思い出しても、私に力をくれる。


 ……よし!準備万端!

 光に包まれていた視界がこれから始まる舞台を具現化していく。正面には既に神埼愛佳が、…破壊対象が待ち構えていた。そしてその第一声は


 「……(わたくし)は全力で行きます!あなたも全力で来なさい!」

 「…ふふふっ…いいわよ愛佳!…全力で…駆逐してや…じゃない、……ぶっ壊してあげるっ……せぃやぁああ!!」

 

 先手必勝も私の座右の銘なので、思いっきり地面を蹴り、敵に突っ込む。

 音速を超えて間合いを詰め、体を捻った回し蹴り。この距離なら回避はできないはずだ。

 

 だが、愛佳は舞うような動作で、両手を下に構える。すると、彼女の周囲の空間が不規則に乱れ、だが主を守るように渦巻いていく。

 

  「…私に切れないものはありません。………『無刀術・カマイタチ』!」

 

 愛佳が袴の袖を振ると、衝撃波のようなものがこちらに高速で生み出された。

 !!避けなきゃ、やられる!!

 本能的にそう判断した私は、構えを無理やり逆方向に向け、空中を無理やり蹴り飛ばした。

 衝撃が全身に奔り、自分の体の向きが蹴り飛ばした方向と逆向きに吹っ飛ぶ。

 その刹那、左脇腹の辺りから、違和感が発生した。


 「……!!っぅう!!?」


 地上に何とか着地し、咄嗟に脇腹を押さえると、小規模だが、脇腹辺りの服がスッパリ斬れ、皮膚までが赤い鮮血で少し濡れていた。

 今更になって痛みがこみ上げて来る。

 ……正直言って、泣きたいくらいに痛いわ。

 でも、こんな所で負けられない!!

 痛みを無理やり力で抑え込み、大きく息を吐いて落ち着く。

 愛佳は若干のたれ目を驚きに少し開いている。

 

 「私の無刀術を勘とはいえ回避するとは…凄まじい反射神経です。」

 「こちとらステータスは攻撃と素早さに全フリ派なのよっとおぉ!!」

 

 地面を思いっきり踏み切り、足元が崩壊する音と共に、愛佳に拳を振りかぶる。


 「二度目は避けられます?…『無刀術・カマイタチ』!!」

 

 「あぶなっ!!」

 

 衝撃波を咄嗟に紙一重でかわす。すぐさまバック宙で大きく距離をとる。

 何と!後ろを見れば、山が真っ二つに斬れているではありませんか!!

 …やっぱりアレは切断系のもので間違いな…


 「まだ、終わっていませんよ!!」

 「え、な!!?」

 

 愛佳が舞うように腕を何度も振り下ろす。振った空間から全てを切り裂く衝撃波が、幾多にもなって襲い掛かってくる。

 私は思考を強制的に回避に切り替える。


 「ちょっ…弾数制限ないのおぉ!?」


 なんなのよアレ!!あんなの避けてたらいつまで経っても、攻撃出来ないじゃない!!

 普段使わない思考をバーストリンクさせ、とりあえずいったん逃げ延びてから反撃の時を…


 

 そんなの……私の闘い方じゃないわ!!


 

 「ふふっ…ほいっと!ほいほいっ!!」

 「くっ…なんて素早いのですか!?」


 愛佳を苛立たしげに腕を何度も振るう。

 私は衝撃波をヒラリと身をかわしながら………愛佳の周囲を…徐々に詰めていく。

 

 残り……5メートル!……残り…3メートル!!……!!!


 「っ!ここだぁあああああああ!!!!!」 


 体を針金のように(しな)らせながら、左の拳を振りかぶる。

 まだ攻撃には移れないはず!これで決める!!

 もう愛佳も諦めたのか、両目を閉じ静かに呼吸を整え…

 !!!

 私は彼女の目が開かれて、戦慄する。

 あの目は、まだ…負けてない!!?


 「………『無刀術・堅牢陣』!!」


 愛佳の周囲の空間が歪み、その歪みそのものが(あるじ)を護るように、檻のような形を形成していく。

 なるほど、これはおそらく防御の技なのだろう。

 …でも!!防御されるなら…ぶち壊すだけよ!!


 私は自分の力を信じている。立ち塞がるどんなものも、絶対に壊してみせる!!

 それが、破壊者である、暁ましろよ!!


 「はぁぁあああああああ!!」


 空をも切り裂く勢いで拳が檻に到達する。

 刹那、世界が鳴動し、元は平らだった地面は、衝撃のせいで、文字通り砕けていた。

 

 だが、その滅んだような世界で、両者は驚きの声を上げていた。


 「…そんな……私の堅牢陣を……壊した!?」

 「…う、そ……私の攻撃が届かなかった!?」


 愛佳が作った檻はガラスが砕けたような音と共に消滅する。

 だが、肝心の標的は…愛佳は無傷である。

 瞬時に後方に飛び退き、拳を再び構えようと…


 「………え?」


 そしてふと、私は自分の体の違和感に気づく。


 「……ありゃ?…左腕が……動かない!?」


 どう頑張っても左肩から下が完全に動かない。まるで動き方を忘れたように、感覚すら掴めない。

 

 「………どうやら堅牢陣で切れなかった訳では無いようですね。」


 愛佳は少しほっとしたように微笑む。

 どういうこと…さっきのは、ただの防御タイプの類じゃないの!?

 なおも愛佳は続ける。


 「……『無刀術・堅牢陣』は攻防一体の技です。この技で貴女のその左腕の感覚神経のみを切りました。………残念ながらしばらくは使えそうにありませんが…」

 「か、感覚神経だけを……切ったぁあ!?」


 五ェ門の斬鉄剣でもそんなこと出来ないわよ!!っと思ったけど…衛星砲台の切れるから何とも言えないわ。 

 でもそれで得心がいく。

 何故、この腕が動かないのかも。

 そして何故、私の攻撃が、愛佳まで届かなかったのかも。

 ……あれ?どゆこと?……えぇーと…一つずつ整理しようかな!!

 飛んでくる衝撃波の軌道を読みながら出来事を振り返りましょう!

 

 まず前提として、私は相手からの攻撃には、全くと言っていいほど対処が限られるということ。ようは…

 

 「っとお!…このように!避けなければ!いけま、せん!っとぉ!!」

 「何の説明ですか!?」


 愛佳は苛立たしげに素早く袖を振って『カマイタチ』を繰り出すが、私が不規則に動いているせいでなかなか狙いが定まらないようだ。

 

 というのも、私は攻撃すれば山だろうが、ユキノだろうが比喩無く一撃で吹き飛ばせるのに、こちらに放たれた銃弾などは、何故か、殴っても拳が貫かれるだけだし! 剣を受け止めようものなら腕ごと落とされてしまうのだ!

 って…あぶな!髪掠った!

 つ、つまり!私の攻撃は『堅牢陣』の防御の部分だけは壊せたが、、神経を切るという攻撃部分には攻撃が効かなかったのだよ。

 自分の力が機能しなかった訳でも無力化された訳でもない!それが分かっただけでも安心したわ!

 

 「…さぁて!……遊びは終わりだ!!」


 一回言ってみたかった台詞を言い放ち、私は体を思いっきり捻って、進行方向を無理やり逆向きに変える。 

 自分が加速させたせいで襲い来る風圧を感じ、高揚感を抑えながら愛佳を見る。

 愛佳は腕を相当振ったのか、息を切らしながら愛佳もこちらを睨む。


 「…もう止めた。最後に質問、いい?」

 「……もう…諦めたという訳ですか?」

 

 真意を読み取ろうしているのか、愛佳が目を細めて聞いてくるが、私は構わず続ける。

 

 「愛佳は切れないものは無いって言ってたわよね?」

 「えぇ、私は切りたいと思ったものは必ず切れます。自分が最強の『切断者』だという絶対的な自信があります。切れないものなどありません!」

 「じゃあ何で私の腕を切り落とさなかったの?」


 そこで愛佳の眉がピクリと反応する。間髪いれずに


 「だって愛佳が私の腕の神経じゃなくて腕を切っていたら、今頃私は出血多量とかで負けてたかもしれないわ。」

 「………はぁ……その答え、聞きたいですか?」

 「うん!確認のためにも是非お願いしたいわ!」

 「?…確認?…」


 そう、愛佳はいつでも私をシャンクス状態に出来たという訳なのだ。

 私はこの愛佳という子にあることを感じていた。

 その勘が、当たっていることをただ祈るだけね。

 愛佳は観念するように「分かりました。」と一言だけ言うと、不敵に笑う。


 「だってそれでは……面白くないじゃないですか!」

 「!!っ……ふふっ…あはははははははは!!ビンゴよ!やっぱり愛佳は私の読み通り!さいっっっこうに面白いわよ!」


 ふふ…これでもう思い残すことは無い。こんなにも面白い人と闘えたのだから。

 もうつまらないことは止めよう。

 

 私は決めた!


 この人を…絶対に徹底的に!完膚なきまでに!ぶっ壊す!!


 そしてその後、必ず友達になるわ!!


 「さぁ……破壊の時間よ、準備はいい?」


 自分が今、笑っているのが分かる。戦いたい!…壊したい!…ぶっ壊したい!

 砕けた大地を破壊衝動と力に任せて、思いっきりぶん殴る。

 

 「あははははははっはあ!!」

 

 その衝撃で空間そのものが鳴動し、跳ね上がってきた無数の岩を、愛佳めがけて蹴り飛ばした。


 「なっ!!これは!!」

 

 愛佳は先程より大きなカマイタチで迎撃するが、その顔には苦悶が広がっている。

 私は跳ね上がってきた岩に着地し、更に地面めがけてジャンプしながら拳を振り下ろすと、また岩が跳ね上がり、今度は裏拳で襲い掛からせる。


 「ふふっ…私がさっきまで無駄に逃げてたと思う?…そんなわけ無いでしょう!?敵を倒すには情報収集は基本よ!

 …愛佳の弱点、それは……こういうことぉおお!!」


 地面を殴り、跳ね上げた岩を愛佳に降り注がせる動作を、高揚感と共に加速させる。

 愛佳は向かってくる岩を高速で切り刻む。が、切り刻むゆえに襲い掛かってくる岩が増え、愛佳に弾丸のように降り注いでいる。

 

 「くぅ…堅牢陣があれば!!」

 

 そして、無限にも等しい流岩ばかり気にしていたことは、愛佳の最大の失敗だった。

 私は刹那の瞬間、宙に舞っている岩を足場にしながら背後に回り込み、右の拳を構える。

 

 「これで…!!」

 「なっ!!いつの間…」

 「ぶっ壊れろぉおおおおおおお!!!」


 愛佳は一瞬より早くその場から吹き飛び、衝撃と爆風だけが大気を激しく揺らした。


 【神崎愛佳かんざき・まなか) 決闘から除外されました。敗北確定】

 

 「……よし!…勝っ…た……あ、ありゃ?」


 力が腰から抜け、その場に突っ伏す。

 …うぅ…ふらふらするわ…ちょっと…さすがに疲れ…


 勝者にして、破壊者である暁ましろは、学園へと帰還する光の渦に意識をゆだねた。



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