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異世界と、ラノベ。

 *4


 三十年前、三つの世界の間に『裂け目』が見つかった時。〝他の種族〟を想定していたのは、意外なことに人間族だけだった。

 物語や、空想の世界ではあるけれど。

 エルフも、獣人という存在も。

 世紀をまたいで、いろいろな角度から描き、想像し、創造を連ねてきたのは僕らだけ。当初は明らかに戸惑っていた二つの種族に対し、僕らはむしろ諸手をあげて、彼ら、彼女らを歓迎した。

 言ってしまえば〝好きなものに節操のない〟僕たちは、最初から敵対しようとは、まったく考えない人々が大半を占めた。そして幸運なことに。〝異世界人〟もまた、創作された「ファンタジー」と呼ばれるジャンルに対して、すごく興味を示してくれた。


 話はちょっと変わって。

 当時のライトノベルっていうのは基本、表紙を可愛らしく装飾して、十代のティーンズに買ってもらえることを第一にしてた。だけどそんなことは〝本物の異世界人〟には、まったくもって関係がなかった。

 十代に満たない小さな子供から、〝いい歳をした大人〟をはるかに超えた老人まで。そのすべてを「創造」という名の「世界」へと巻き込んでいった。

 ところで、時々いるよね。

 某有名電気街で『萌!』とか『俺の嫁!』って書かれたシャツをまったくちゅうちょなく着こなして、大人向けのゲームなんかを大量に購入していく、いわゆる『コアな外国人オタク』(偏見じゃないよ)っていう人たちが。

 彼らははっちゃけているけど、反面「そこまでするの!?」っていうぐらいに、エネルギッシュだ。


 そんなエネルギーあふれるムーブメントが。

 異世界まるごと、老若男女分けへだてなく、伝わった。(偏見じゃないよ)


 特にエルフ達は、真面目で、勤勉で、ある種のこだわりも兼ね備えてた。異世界の存在が知られたわずか三年後には、言葉を覚え、パソコンを使いこなし、ネットで情報を仕入れ、だけど何故か羊皮紙に手書きで、「ライトノベル」の新人賞に応募してくる強者もさたちが、一割を超えていたのだ。


 ――たとえば、こんな感じ。


 応募部門:第○回○○ライトノベル大賞


 作品タイトル:これが本当(リアル、迷いの森のジジィの話。


 原稿枚数:120枚。


 氏名:ギャンダルフ・ホワイト・ハイエルフ。


 ペンネーム:山田太郎。


 年齢(推定):200歳超(すみません、途中で数えるのやめたので)


 住所:フリァルヒルト・レゾナンデイウス・迷いの森一丁目。

    建物名『賢人たちの寝床302号室』


 電話番号:すみません。伝書フクロウの名前でもいいですかのぅ?

 

 最終学歴:前古代432年 赤竜の月。

      魔法都市『ガーデンベルグス・アカデミー』卒業。

      

      前古代421年 蒼燕の月。

      魔王『グヴンヒルデルハルアル』討伐。


      前古代400年 聖杯の月。

      迷いの森に隠居。


 その他:「投稿履歴」というのはございませぬが、

     著作に魔法書が何十冊かありまする。



 ――真面目な話。 

 こういった「応募寄稿」が、当時は百通を超えたのだ。

 そして今は軽く千通を超えている。今はどこの編集部も「フクロウ便」での応募を許可してるのが大半だ。

 ――そして今日も。バサバサと翼、はためかせ。

「き、きましたぁ~~っ!! オレ魔道の先生からの原稿ですぅ~!! やったぁーー!! 今から作業すれば印刷所まにあうー! でもなんで原稿だけメールじゃないのか解せぬぅぅうう~~!!」 

 異世界を駆け抜ける「伝書フクロウ」が。

 今日も異世界の『裂け目』から飛んできて、僕らや、読者となりうる人々に、新しい物語を届けてくれる。



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