あなたはだぁれ
前回のあらすじ
今朝教室を間違った人はどうやら教室を間違えたわけではないらしい。
っていやいやいや、オレは何を言ってるんだ!?
見たところこのバッジは本物のようだ。
第一オレの中学のバッジを複製して良いことなんて無いだろう。
ハッ!!もしや新手のドッキリとか?
でもこんな微妙なドッキリなんてつまらん。
ってそういう問題じゃ――
「あなたも知らないですよね、2年3組の平野加子のこと・・・」
今朝教室を間違えていそうで実は間違えていないらしい少女、平野加子さんがしょんぼりとして言った。
ここで知らないと言ったら更にへこんでしましそうだ。
でも、知らないのできっぱりとここは言っとこう。
「知らないです」
「ううぅ~・・・」
そのまま平野さんは両膝をガクリと地面につき、項垂れてしまった。
なんか、、、このままにしとくのもアレだったので、、、とりあえず、、、話を聞くことにした、、、
「朝、いつもの様に登校して自分の席に座っていたら隣に座っていた人に、あなたの席はここじゃないです、って言われて・・・
それで周りを見てみたら私の全然知らない人ばかりいて・・・・・・
教室間違えたと思って慌てて出たんですけど、そこは私の教室のはずで・・・・・・
どうしようもなくて、いったん家に帰ってみたんですけど・・・・・・」
そこで彼女は一息置いた。
そして深いため息をついて言った。
「母が帰ってきた私を見て、あなた誰って言ったんです。
姿形声も母なのに、母は私のこと全然知らなくて
・・・・・・それからはもうなにがなんだか・・・・・・・・・・・
・・・気がついたらまた学校に来ていて・・あんまりうろうろしていても怪しまれるし、ここでじっとしていたんです」
これが彼女が知っている、彼女に起こったことの全てらしい。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
昼休みの終了が間近だということを知らせるチャイムがなった。
「あ・・・」
加子さんが心細そうな顔をする。
「すいません、オレもうそろそろ行かなきゃならなくて・・・」
「はい、分かってます」
俯いたまま返事をする。
・・・・・・このまま放っていくわけにもいかないよなぁ
「あの・・・平野さん今、携帯持っていますか?」
「え・・・あぁ・・・持ってるけど・・・・・・」
怪訝そうにしながらポケットから取り出す。シルバーの、折りたたみ式の携帯だ。
「番号交換しましょう。何かあったとき、連絡してください。オレに何ができるってわけじゃないんですけど・・・
一人よりかは二人の方がマシだと思うんです。授業終わったら、またここに来ます。そして、考えましょう。
何か分かるかもしれませんし」
「・・・・・・ありがとうございます」
二人の携帯番号を交換してから、オレは一目散に走った。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
そんなオレの背中を、午後の授業開始のチャイムが押していた