❄*3rd -高1
私は空が紅くなり始めたころ、2-1の教室へと向かった。
足取りは、どうも重い。
誰から告白されるのだろう?という緊張が迫り来る。
2-1の扉の前で、少し深呼吸をして扉を開けた。
そこにいたのは予想外の人物だった。
色素の薄い茶色の髪。
長身で鍛え抜かれた体。
綺麗な茶色の目。
「か、か、会長!?」
三瀬会長は、どうやら帰りの支度をしているようだった。
で、でも待って。
まさか、会長が私の告白するわけもないし・・・。
一瞬でも期待をしてしまった私が馬鹿だった。
ん…?
期待?
き、期待って何!?
私、会長に告白されるの期待してたの?え!?
「ちょっと、何さっきから百面相してるの?」
会長は半笑いでこっちを見つめる。
「い、いや、その…か、か、会長…」
「何きょどってるんだ?どうした?」
「いや、その…今日、手紙を私の鞄の中に入れたりしました?」
「は?手紙?何の事?」
…なんだ。
やっぱり。
「いや、何でもないです」
「何だ?いじめか?あ、ラブレターか?」
的中され、私はビクッと肩を震わせた。
「はははっ!なるほどな。お前もモテモテだなー」
「そんな…」
「ま、青春しろ!青春してこその風花高校だ!」
「はい…」
「ん?どうした?告白されるってのにそんな顔じゃだめだろ」
少し、という以上に会長に告白されなかったことに残念な気持ちを抱いている自分がいる。
まだ会って、少ししか経ってないのに。
何で、ここまで気になっているのだろう?
「会長は、告白されたことあるんですか?」
「は!?」
会長は異常というほどに反応した。
「いや…だから告白されたことはあるんですか?」
「んな、そんな何回もされたことはないぞ」
「数回はされたんですね…ですよね…」
じゃあ、付き合ったこともあるんだろうな。
そりゃあ、会長かっこいいし。真面目だし。
女子がほっとくわけがない。
「でも、お前だってあるだろ?それに好きな奴とかもいるだろうな」
「い、いませんよ!!それに告白されたこともないです・・・。」
「もったいないな。」
そういって、会長は私の髪を撫でた。
「俺なら、すぐに好きになりそうだがな」
「なっ…」
ガターンッ
「かいちょおおおおおおおおおおおお!!!」
私の横を通り抜けて、扉を勢いよく開けた男子は会長に向かって拳を突きつけようとした。
「おっと」
会長は見事に男子の拳を交わした。
しかし、男子はひるむことなく、また次の拳を出す。
また、塞がれた。
「あぁぁぁぁぁッ」
「お前なぁ…俺に手出すなんざ100年早いんだよ。リク」
「でも、今のは見過ごせないです。高月さんの髪に触れましたよね?」
「あー…触ったな」
「あぁぁぁぁぁあああああ!!!!かいちょおおお」
私は横で呆然と見つめるだけだった。
すると、不意に私の手をリクと言う男子が握り締めた。
「高月さん…、手紙で、来たんですよね?」
「え?あ、はい」
「あぁ、本当、可愛い…」
私の目を真っ直ぐ見つめてくる。
戸惑ってしまう。
「あ、そうだ!好きです!付き合ってくだすぁっ…ぶほっ」
会長がリクという人の頭を叩く。
「先に名乗るのが礼儀だろ。副会長」
副会長?
「ふぁーい…。えっと、俺の名前は、山本利久です!生徒会の副会長してます!」
「あ…は、はい。高月…紗和です…」
「今日、ここに呼んだのは、その好きということを伝えたくて」
私はどうすれば良いのか迷い、会長に助けを求めるように見てみた。
しかし会長は考えるように顔を顰め呟いた。
「今日、ラブレター渡したって騒いでたのは、高月に渡したからか。てっきり…」
「てっきり…?」
私が会長の呟きに問う。
「あ、高月さん。返事はいつでもいいですから」
山本君は私に笑顔を向ける。
「てっきり…あいつかと・・・」
しかし私は会長の言葉しか耳に入ってこなかった。
「あいつ?」
私がまた繰り返す。
「高月さん?」
山本くんが私の名前を呼ぶ。しかし、気になるのは会長の言葉で。
「あいつってだれですか?」
私は会長に改めて問いた。
「あ、えっと、前に書記になりたいって生徒会室に押しかけてきてた子だよ」
会長はやっと私の声にきづいた。
山本くんも、私達の話に耳を傾けたようだ。
「違いますよー会長。俺はあんな軽い奴苦手です」
嫌そうに首を振った。
「そうかそうか。あいつにデレデレしてたから、そうかと」
「違います!!ただすごく近くで話すものだから…っていうか、高月さん、聞いてました?」
「え?」
「だから、返事は、後ででも良いですから!!」
「え、あ、はい…」
「会長のせいでゴタゴタじゃないですかー!!!」
「俺のせいじゃねえって。お前が、こんなとこで告白しようとするからだろうが」。。。
この後も会長と副会長の口論は続くのであった。