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❄*プロローグ


*プロローグ




















「今だけ、お別れだ」





とても悲しい響きを持つ言葉。


私は冷たい雪の中、彼に抱き寄せられながらその言葉を耳元で聞いた。


私は静かに彼の胸で泣いた。


悲しい。


哀しい。


そして、何よりも怖かった。


私といつも隣にいてくれた彼が、隣から消えてしまう。


いつも笑って、私を温かく支えてくれた彼が、遠くに行く。


私の手の届かない場所へ。


私とは元々世界が違う彼は、まるで同じ世界にいるような錯覚を私に与えた。


そして私は、彼の愛に溺れた。


最後に、彼は言った。



「愛してるよ」



いつも彼が言う、冗談の愛情表現じゃない。


彼の小刻みに震える手から、この言葉が本気だと感じた。


冗談の愛さえ嬉しくて壊れそうになった私は、本気で彼が言った言葉が切なかった。


何故か胸が苦しくて。


今まで感じたことのない劣等感を感じる。


私達は、きちんと愛し合えたよね。


これから会えることがなくなるかもしれない。


これが最後になるかもしれない。


そんな不安がさらに増した。


けれど、行かないでなんて言えないから。


私達の間にある壁はどうしようもない。


しょうがない。


だから私は彼に呟いた。 



今までの楽しかった日々を私に記憶として与えてくれて。


私の知らない感情をたくさん教えてくれて。


いろんなことを支えてくれて。


こんな私をたくさん愛してくれて。



「ありがとう」



そう呟くと、彼は少し眉を顰めて、後ろを向いた。


そして歩いていく。


静寂の中で彼の足音がやけに寂しくて。


彼の背中が見えなくなった頃に、私は泣き崩れた。



「…っう」



まるで私の悲しみを表すかのように雪は激しさを増した。




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