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マーダーなミステリーへようこそ  作者: よもぎ餅
第1章 『雨の館の殺人』

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プロローグ

 推理小説が好きだった。


 犯人を追い詰める探偵。

 巧妙に仕掛けられたトリック。

 散りばめられた伏線。

 そして、全ての謎が一つへと繋がる瞬間。


 そんな物語が好きだった。


 玖城透は、どこにでもいる大学生だった。

 講義を受け、友人と話し、家に帰る。


 少しだけミステリー小説が好きなことを除けば、ごく普通の二十一歳だ。


 マーダーミステリーという遊びの名前も聞いたことがある。

 最近流行っているらしい。

 それ以上のことは知らない。

 やったこともなければ、詳しいルールも知らなかった。


 だから。


 その日届いた一通のメールを見ても、特に気にしていなかった。



 夜。

 透は自室のベッドに寝転びながらスマホを眺めていた。


 動画サイト。

 SNS。

 ニュース記事。


 いつも通りの時間。


 その時だった。通知音が鳴る。


 一件のメール。

 差出人は不明だった。


 件名は――

 『マーダーなミステリーへようこそ』


「……なんだこれ」

 思わず呟く。


 いたずらメールか。

 迷惑メールか。

 どちらにしても怪しい。


 透はメールを開いた。

 本文は短かった。


『あなたを次のシナリオへ招待します』

 その下にはURLが貼られている。


「意味わかんねぇな」

 閉じようとする。


 だが、なぜか指が止まった。


 理由は自分でもわからない。

 数秒悩み。


 そして。


「見るだけなら……」

 URLをタップした。


 その瞬間だった。

 スマホの画面が白く光る。


「は?」


 眩しい。

 画面だけではない。部屋全体が白く染まっていく。


 壁も。

 天井も。

 床も。


 世界そのものが塗り潰されていくようだった。


「なんだよこれ――!」


 立ち上がろうとする。


 だが。

 足元が消えた。

 身体が落ちる。


 どこまでも。

 どこまでも。


 暗闇の中へ。


 そして。

 玖城透の意識は途切れた。



 雨音が聞こえる。

 ぽつり。ぽつり。


 いや。

 違う。

 激しい雨が窓を叩いていた。


 透はゆっくりと目を開く。


 知らない天井。

 知らない部屋。

 知らない場所。


「……どこだ、ここ」


 身体を起こす。

 すると。


 机の上に一枚のカードが置かれていた。


 まるで最初からそこにあったかのように。

 透は警戒しながらカードを手に取る。

 表には大きく書かれていた。


========================================

『プレイヤーカード』


【名前】

 アルフレッド・クロウ


【役職】

 旅行作家


【秘密】

 昨夜、館の主人と口論した


【勝利条件】

・事件の真相を解明する

・エンディングまで生存する


========================================

「なんだ……これ」


 意味がわからない。


 だが。

 裏面を見た瞬間。

 背筋が凍った。

 赤い文字で、一文だけ記されていた。


『被害者は今夜死亡する』


 その瞬間。

 館のどこかで鐘が鳴り響いた。


 ゴーン。ゴーン。ゴーン。


 まるで。

 物語の始まりを告げるように。


 透は無意識にカードを握り締める。

 嫌な予感がした。

 説明できない。

 根拠もない。

 それでも確信できた。


 ――何かが始まる。

 そしてその予感は。

 決して外れることはなかった。


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