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音色(ねいろ)が見える少年と、きらきら光る「ありがとう」

作者: ジョウジ
掲載日:2026/01/22

音色が見える少年と、きらきら光る「ありがとう」


ねえ、知ってる?

世界は、音でできているんだよ。


風が木の葉をゆらす音は、すきとおった緑色のリボン。

車の走る音は、ビュンと伸びる赤い線。

ピアノの音は、七色のシャボン玉。


オトくんは、そんなふうに「音」が「色」に見える不思議な男の子でした。

オトくんの目に映る世界は、まるで宝石箱をひっくり返したみたいにカラフルで、とってもきれい。


……でもね、たったひとつだけ、嫌いな色がありました。

それは、オトくん自身の声です。


「おはよう」

そう言おうとすると、口からモクモクと、ねずみ色の煙が出てくるのです。

「あーあ」

ため息をつくと、空気が濁って、目の前が曇ってしまいます。


(ぼくの声は、汚い色だ。みんなのきれいな景色を汚しちゃう)


だからオトくんは、自分の口にギュッとチャックをして、おしゃべりするのをやめてしまいました。

心の中でだけ、たくさんお話をして過ごしていたのです。


ある冬の日の夕暮れのこと。

公園のベンチで、オトくんが空を眺めていると、どこからか冷たい音が聞こえてきました。


ポツ、ポツ。ザーッ。


(雨かな?)


いいえ、空は晴れています。

それは、ブランコのそばで泣いている、小さな女の子の声でした。


「うえーん、うえーん……」


女の子の泣き声は、冷たくて悲しい「青い雨」になっていました。

その雨は、女の子の周りだけをシトシトと濡らし、地面を暗い青色に染めていきます。

オトくんの足元まで、その冷たさが伝わってきました。


(どうしよう。迷子になっちゃったのかな)


オトくんは立ち上がりました。

女の子は、寒さと不安で震えています。

青い雨はどんどん強くなって、今にも女の子を飲み込んでしまいそうです。


(助けてあげなきゃ。でも、ぼくが声を出したら……)


ぼくの口から出るのは、あの嫌な「ねずみ色の煙」だ。

あんな煙を見たら、この子はもっと怖がってしまうかもしれない。


オトくんの喉が、キュッと縮こまります。

でも、女の子の肩が小さく震えているのを見たら、じっとしてはいられませんでした。


(煙でもいい。雨を止めてあげなきゃ!)


オトくんは、勇気を振り絞って、大きく息を吸い込みました。

そして、女の子のそばに駆け寄り、声をかけました。


「……大丈夫? 一緒に探そうか」


その瞬間です。


オトくんの口からこぼれたのは、いつもの煙ではありませんでした。

ポワン、ポワン。

それは、冬の夜に灯る暖炉のような、温かい「オレンジ色のランプ」でした。


オレンジ色の光は、フワフワと宙に浮かび、女の子の周りを優しく包み込みました。

するとどうでしょう。

冷たい青い雨が、オレンジ色の温かさに触れて、スウッと消えていったのです。


女の子が顔を上げました。

涙で濡れた瞳に、オトくんの言葉のランプが映っています。

「……うん」

女の子が小さく頷くと、その声は薄桃色の花びらになって、ひらりと舞いました。


それからすぐに、遠くから「ミナ!」と呼ぶ声がしました。

お母さんです。

お母さんの声は、安心できるミルクティー色をしていました。


女の子はパァッと笑顔になり、お母さんの胸に飛び込みました。

二人が手をつないで帰り始めたとき、女の子が振り返って、オトくんに向かって大きく叫びました。


「お兄ちゃん、ありがとう!」


そのときです。

世界中の明かりが一度についたような、とびきりの奇跡が起きました。


パァァァン!


「ありがとう」という言葉が弾けた瞬間、それは無数の「金色の星屑」になったのです。

きらきら、きらきら。

チラチラ、きらきら。


それは、冬の澄んだ夜空いっぱいに舞い上がり、天の川のように輝きました。

街灯よりも、本当の星よりも、ずっとずっと眩しくて、美しい光。


きらきら光る星屑は、雪のようにゆっくりと降り注ぎ、オトくんの肩や、冷え切った心の上に積もっていきました。

それは不思議と熱を持っていて、オトくんの体をポカポカと温めました。


(うわあ……きれいだなぁ)


オトくんは、まばたきをするのも忘れて、その金色のシャワーを見つめました。

言葉って、こんなにきれいな色になれるんだ。

ぼくの言葉も、誰かを温めるランプになれるんだ。


女の子とお母さんの姿が見えなくなっても、あたりにはまだ、金色の粉がキラキラと漂っていました。


オトくんは帰り道、マフラーに顔をうずめながら、小さな声で歌ってみました。


「ラララ、ラララ……♪」


すると、オトくんの唇からは、小さな黄色い蝶々たちが、ヒラヒラと生まれて空へ飛んでいきました。

もう、ねずみ色の煙なんて、どこにもありません。


優しい気持ちは、優しい色になる。

勇気を出した言葉は、誰かを照らす光になる。


オトくんは、明日学校へ行ったら、隣の席の子に「おはよう」と言ってみようと思いました。

きっとその声は、朝の光みたいな、素敵な色をしているはずだから。


空を見上げると、一番星が、あの「ありがとう」みたいに、きらきらと瞬いていました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

「冬の童話祭2026」参加作品です。


もし、このお話を読んで「心が温まった」「きらきらした」と感じていただけましたら、

ブックマークや、ページ下の【★★★★★】評価をいただけると嬉しいです。

(あなたの応援もまた、作者にとっては「きらきら光る星」です!)

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