6話 貴方にはもう価値がない
side:マゼン・オルクス
「言いたい放題しやがって……誰のおかげでヴァーレイン家が生きていられると思っている!!」
ノエルが去った後も僕の怒りは収まらなかった。
目元に傷がある女を隣に置くだけで不快だったのに、僕を煽るような態度を取る始末。
そして最後のあざとい顔。
醜い女が可愛い子のフリをするという、吐きそうな光景が頭の中へ鮮明に刻みつけられた。
「ああああああああああっ!!」
消えろ消えろ!!
僕の頭にいていいのはお前じゃない!!
誰よりも美しくて可愛いラブメアだけで十分なんだよ!!
屋敷内の物に当たり散らかし、嫌な記憶を無理やり追い払おうとする。
その様子を従者達は気まずそうな顔で見ていた。
「はぁ……はぁ……」
冷静に考えろ。
さっきのは今までで一番最悪な出来事だった。
しかし、あれは最後だ。
僕とノエルが関わる最後の記憶になる。
つまり、これから訪れるのはラブメアとの幸せな日々のみ……
「ふふふ……あははは!!」
だったらいいじゃないか!!
あの女の事をもう考えなくてもいい。
四六時中ずっとラブメアの事だけに集中できる!!
最高だ……
嬉しすぎて笑いが止まらない。
「マゼン様がノエル様と婚約破棄を……?」
「今のオルクス家の地位ってヴァーレイン家との繋がりがあったから成立してるよね」
「あの手紙は本当だったんだ……!!」
ん? なんだ?
従者達がやけにコソコソしている。
君たちはラブメアに一歩も近づけないからねぇ。
この幸せを味わえないのが非常に残念だよ。
◇◇◇
「なんだこれは!! 飯がマズいぞ!!」
「す、すみません!!」
幸せに浸りたかったのに現実はそうさせてくれなかった。
翌日、僕に待ち受けていたのは明らかに劣化した食事内容だった。
スープは煮えてないしパンもボソボソ。
オマケに食器の並べ方だってぐちゃぐちゃだしどうなっている!!
「じ、実は昨日から退職者が続出しておりまして……」
「人員が圧倒的に不足しているんです……」
「はぁ!?」
人員が不足!?
伯爵家の稼ぎ頭で多くの従者から理想の職場だと名が上がるオルクス家で!?
まさか昨日の婚約破棄が影響して?
いや、たかが婚約破棄で従者は動かないし、あいつらに貴族社会の知識はほとんど無い。
一体何が起きて……ん?
「おい、なんだその紙は」
「っ!? こ、これはその……」
「見せろ」
「あっ」
従者が隠し持っていた紙を取り上げる。
手紙のようだが内容は……っ!!
『近日、オルクス家に大きな災いが起きます……が、それは今後起きるであろう破滅への一歩でしかありません。今の内に覚悟しておいてください』
な、なんだこの内容は!?
まるでオルクス家が崩壊するかのような書き方じゃないか!!
この文書を読んで、従者達は逃げるように退職したのか……たかが婚約破棄でビビりやがって!!
「しかし、一体誰がこんな手紙を……」
ノエルか?
いや、彼女もそこまで器用な事はできないだろう。
仮に計画した所でどうやって全従者に手紙を送ったんだ?
まあいい。
これからの未来を考えれば軽い事だ。
「おい!! 馬車の準備をしろ!! ラブメアへ会いに行くぞ!!」
だけど、この時は気づいていなかった。
ノエルとの婚約破棄が自分にどれほどの損害を与えるのかを。
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