4話 訪れた婚約破棄
「ふふっ……つい頬が緩んじゃうわね」
お金稼ぎと復讐の準備を整えていたら丸二年が経過した。
マゼンが私の所に来る回数は減り、逆にラブメアと一緒にいる姿が何度も目撃された。
勿論、大丈夫なのかと私とマゼンの家に仕える従者達は心配したけど敢えて黙っている。
余計な事に首を突っ込んで、自分の立場を失いたくはないしね。
ただ、それも今日で終わり。
今から私が全てを壊して解放される。
あぁ楽しみ、すっごく楽しみ。
これから起きる事を想像するだけで今まで以上に幸せな気分が味わえちゃう。
後は一字一句間違えないようしっかり演技を……っと、早速一人目が来たわね。
「ノエル!! これはどういう事だ!?」
「手紙の通りです。私と婚約破棄をしてください」
手紙を片手に私の部屋へと勢いよく飛び込んでくるマゼン。
相当焦っているわね。
まさか自分が捨てられるとは想像もしてないみたい。
「な、何故だ!? 距離を置こうと言ったのは君じゃないか!!」
「その関係に限界を感じたんですよ。貴方もかなりラブメアに夢中みたいですし?」
「なっ!? ラ、ラブメアはただの友人だ。やましい事など一切していない!!」
「ふぅん……」
誕生日に高級な魔石の指輪をプレゼントして、
記念日には夜まで二人の時間を過ごして、
人目に隠れてキスやその先の事までしているのがただの友人ですか?
ちなみに今並べた罪状は全部優秀な商人さんが教えてくれた。
物凄く助かった。
けど、本当に馬鹿馬鹿しい。
距離を取った途端本性を表すのだから。
「なら本音で私に語ってください」
「本音……?」
「決められた関係とはいえ私という婚約者がいながら、ラブメアへ情熱を注ぐのは、私に不満があるからですよね? いい機会なので話してください」
「そ、それは……」
まだ隠そうと言うの?
心の奥底では私に対する不満や愚痴でいっぱいのハズでしょ。
「全部話せば、スッキリするかもしれませんし……ね♡」
「っ……」
私はマゼンの本性が見たい。
だから柄でも無い上目遣いと無理やり高くした可愛い声でマゼンを揺さぶった。
「お前なんて嫌いだ……」
するとその不快感に反応して、マゼンが震えながら声を荒げていく。
「何故僕の花嫁がお前のような傷アリなんだ!! 美しくもない、醜くて辛気臭い顔で俺の隣に立ちやがって!! 俺の隣に相応しいのはお前じゃない、世界で誰よりも美しく可愛いラブメアなんだよ!!」
その一言からどんどん膨らむ。
私に対する愚痴や不満。
今まで積み重ねていた負の感情を私に向けて顕にしている。
肩を動かす程に荒く呼吸をし、敵意をむき出しにして私を見るその姿。
最っっっっっ高
それが見たかったのよ。
貴方が隠し持っていたその本性をさらけ出すこの瞬間を私は待っていた!!
「ではこの関係も終わりにしては? 思う存分ラブメアを可愛がれますよ?」
「ああしてやる、やってやる!! その代わりヴァーレイン家への支援も無くなるぞ!! このまま破滅して売春婦にでも落ちるがいい!!」
私が渡した書類に殴り書きでサインをし、足音をわざとらしくたてながら帰っていくマゼン。
確かに二年経ってもギリギリのヴァーレイン家に支援が無くなるのはかなりの痛手。
お父様は相当お怒りになるでしょうね。
けど、
「ふふ……あはは」
サインされたマゼンの名前を見る度に笑いが止まらない。
さぁ、次はお父様よ。
このサインに貴方はどう反応するのか楽しみだわ。
私の復讐はまだまだ終わらない。
全てを壊すまで私は止まらないんだから。
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m(_ _)m