表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/28

15話 過去の亡霊にさよならを

「ノエル、これは?」

「グリーンポーションですね。飲むと眠気が吹き飛びますよ」

「眠気が? 是非仕事中に欲しいねぇ」

「ただ副作用が強くて長時間目が冴えてしまうんですよね。ここをもう少し短くしたくて……」


 今日もエリスさんに教えられながらポーションの研究に励んでいた。

 職員の皆さんは少々癖が強いが基本的には私に大して好意的に接してくれてとても気が楽。


 散々バカにされた辺境伯時代は何だったのかしらね……


「ノエルさん、大変です」

「どうしましたか?」

「庭の入口の方でノエルさんの名を叫ぶ男がいまして……」

「……まさか」


 嫌な記憶が蘇る。

 私という存在を否定し、私という存在を捨てて新しい愛を求めた。


 こんな事をするのはマゼン伯爵ただ一人しかいない。

 

「はぁ……」

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫です……いつか出会うと思っていたので」


 ここまで来てまだ好き放題されるの?

 思わずため息が出てしまう。


「私が対応します。ご迷惑をおかけしてすみません」


 だけど自分で蒔いた種だ。

 関係のない職員を巻き込むワケにはいかない。

 最低限身なりを整えて、重い足取りで庭の入口まで向かおうとする。


「待って、ウチも行く」

「エリスさん?」 


 そんな私の元にエリスさんが近づく。


「今はディゼ様も遠出でいないしね。ノエルはウチの部下であり仲間、だから力になりたいんだよ」

「そんな……相手は伯爵家の人間ですし、エリスさんの身に何があるか」

「あー、こう見えてウチは元伯爵家の出身でね。癖のある男爵家や伯爵家とのやり取りは慣れてるんだよ」


 そう言いながらポンポンと背中を撫でられる。

 私にここまでしてくれるなんて……

 経験したことがない優しさに頭が混乱してしまう。

 

 助けてくれる人なんて、今までいなかったから余計に。


「ま、流石にどんな関係かわからないとお話はできないから、その辺は歩きながら教えてね?」

「わかりました」 


 重い足が少しだけ軽くなったような気がした。

 今まで自分だけで抱えていた悩みを他人に打ち明けたからだろうか?


 私は庭の入口に着くまでの間、これまでの事を全てエリスさんに打ち明けた。

 エリスさんは頷きながらも真剣に聞いてくれて、むしろ酷く扱いを受けていた事に同情してくれた。


 特に彼女がドン引きしたのが、ラブメアとの関係についてだ。


「まさか辺境伯との関係を利用して別の侯爵令嬢に近づくなんて……商売ならまだしも、私情でそこまで踏み出したら王家や公爵家が黙ってないよ」

「ですよね。少なくとも土地や資産の没収はあってもおかしくないと思います」


 少なくともディゼ様の耳には入っているから何かしらの処罰を受けるのは間違いない。

 具体的な内容は知らないけど、時間の問題だと思う。

 ただ、マゼンという男があまりにも無神経で無鉄砲な人だったのは予想外だったが。


「後、ラブメアって侯爵令嬢も中々だね。彼女も側室としての立場があるだろうし……」

「えっ? 彼女と王族に繋がりが?」

「ディゼ様からちょろっとね。側室とはいえ王族関係者なのに侯爵家の男に手を出すのはどうかなーって」

「うわぁ……」


 まだ浮気を重ねていたの!?

 下手すればディゼ様より酷い気がする……

 

 何が真実の愛よ。愛をストックして好きな時に楽しんでいるだけじゃない。

 こんなヤツらに私は頭を悩ませ続けていたなんて。


「あ、そろそろだね。気を引き締めないと」

「はい」


 できればここで終わらせたい。

 けど今のディゼ様が何をしてくるかわかったものじゃない。


 失う者がない人というのは、剣を持った兵士より恐ろしいと言われている。

 余計なトラブルが起きなければいいのだけど……

面白かったら、ブクマ、★ポイントをして頂けるとモチベになります。

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ