13話 始めて得た生きがい
「これが傷用、こっちが痛み止め、こっちは風邪用ね」
ディゼ様が管理する薬草研究所で私は忙しく働いていた。
まずはどういった薬草が栽培されているか。
次にどういった研究をして、何を作り出そうとしているのか。
薬草栽培を商売ではなく研究として本格的に関わるのは今回が初めて。
だから分からない事だらけで頭がこんがらがっちゃう。
「ウチは基本から応用までなんでも研究してるからね~、だから全部は覚えなくてヨシ!!」
「なーるほど……」
と、見習いの私へ丁寧に説明してくれるラフな口調の女性。
彼女の名前はエリス。
この研究所の副所長であり、私の教育係だ。
「しっかし、キミがオレンジポーションの開発者とはねぇ……一回飲んでみたけど寝心地最高すぎ、中毒になりそうだったよ」
「そ、そこまでですかね? 高級な材料は一切使っていませんが」
「違う違う」
エリスは私の方へ振り返り、懐から普通のポーションを取り出す。
「新しい発見というのは意外と身近な物から生まれる。そこに高いも安いも関係ないのさ」
そしてポーションの器をカキーンと指で鳴らした後、再び研究所内の案内を再開した。
(ここは落ち着く……立場や地位を気にせずに過ごせるから)
辺境伯令嬢だった頃は多くの悩みがあった。
地位は高くとも資金はない。
目の傷のせいで周りからは避けられる。
父親やマゼンからは傷アリだと言われ、そのマゼンは私との婚約で得た地位を利用してラブメアと密談を……
あぁ、やだやだ。
思い出しただけで吐き気がしてくるわ。
「大丈夫かい?」
「あぁ、個人的な事なので。ここは平和でいいですね……」
「ははは、その様子だと相当ワケありだね」
なんとなく察してくれたエリスに感謝しつつ、私は研究所内の薬草を頭に入れていくのだった。
◇◇◇
「どう? 研究所には馴染めそうかい?」
「ディゼ様……お疲れ様です」
研究所内で作業をしていると、ディゼ様が様子を見に来た。
「居心地がよくて助かっています。エリスさんも色んな事を教えてくださるので」
「彼女は研究が大好きだからね。あまり肩入れしすぎると長引くよ」
「それを言うならディゼ様もだと思いますけどー?」
「そうかな? 私は結構わかりやすく話してるつもりだけど」
(話が長い事は否定しないんだ……)
一応ディゼ様は侯爵でエリスの上司なんだけど、エリスさんとディゼ様は結構フランクに会話をしている。
その様子を周りの研究員達も楽しそうに眺めているし、ここの雰囲気の良さがより一層伝わった。
(頑張りたいな……)
不思議だ。
何かの為に動くことがこんなにイキイキできるなんて。
生まれて始めて誰かの役に立ちたいと思った私自身の変化に驚きつつ、任された仕事をこなしていくのだった。
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