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いつか散る桜に僕らは誓う  作者: だいのうえ
第1章 再会と始動
9/11

第9話 生徒会、夏合宿 前編

蝉の声が響く校門前。

生徒会メンバーが、合宿の集合場所でそれぞれ荷物を持って集まっていた。


百合香がスーツケースを転がしながら手を振る。


「おはよ〜!合宿だよ!夏!海!最高!」


麻依先輩が腕を組んで苦笑いする。


「百合香、はしゃぎすぎ。これは”研修”なんだから。」


「堅いよ先輩〜。もっと楽しも〜。」


そんな2人を横目に、バスの前でチェックリストを確認していた。


「美桜は来てるか?」


「さっき着いてたよー」

先輩が指さした先。


美桜が美桜が静かにこちらに向かってくる。

夏の日差しが目線を霞ませ、儚さが増して見える。


「おはよう、柊真くん。」


「おはよ、荷物重たくない?持とうか?」


「うん、大丈夫。ありがとう。」


美桜はたしかに大丈夫と笑っている。

けれどその笑顔はどこか苦しそうだった。


だが声にはしない。

言ったところで、美桜は「大丈夫」と言って、さらに無理をするだけだ。



バスの中。


バスが出発し、街を抜けて海沿いの道に出る。


百合香は相変わらず騒がしい。


「見て見て!海だよ海!」


麻依先輩たちは前の席で静かに資料を広げ話している。


「今日の予定、把握しておいて。

午後はミーティングと分担作業。その後自由時間ね。」


そんな中、美桜は窓の外を見つめながらさりげなく胸を押さえていた。


(やっぱり体調が悪い......夏バテかな......)


その仕草を見逃すことはできない


「美桜?やっぱり具合悪い?」


美桜はやはり笑顔を作って返す。


「うん。でもちょっとだから少し寝るよ。」


「そっか。なら着いたら起こすよ。」


美桜は柊真の肩にもたれて目を閉じた。



合宿施設に到着。


蒼く広がる海、白い砂浜、そして施設の立派さ。

バスを降りた瞬間、百合香が叫ぶ。


「最高!!!!!」

今にも荷物を振り回しそうな勢いだ。


「テンションが高すぎ。高校生の反応じゃないわよ。」

麻依先輩は荷物を持ちながら呆れる。


美桜は海風を受けて目を細める。

「気持ちいいね……」


その姿を真横から見て、小さく息を呑んだ。


(……痩せた?)


腕、鎖骨、首筋。

本人は気づいていないかもしれないが、

ほんの少し、線が細くなっている気がする。


美桜が気づいて笑う。


「どうしたの?」


「いや、なんでもないよ。」


「柊真へんたい!」

百合香からやじが飛ぶ。


軽く返したが、深く考え込んだ。



自由時間。


ミーティングなどが終わり、自由時間となった。

生徒会の仲間たちは浜辺へ出た。


百合香が浮き輪を持ち、


「泳ぐぞーーー!」

と海へ走っていく。


「私はまだいいや。」

麻依先輩は日陰でサングラスをかけ見守る。


僕と美桜は足だけ海に入って遊んでいた。


「楽しいね!」


「はしゃぎすぎ」


「だって久しぶりだもん。こうやって柊真くんと遊ぶのも。夏らしいことも。」


僕はその笑顔を見て少し安心してしまった。


海だったから気づかなかったが、美桜の指先は震えていた。

日焼け止めだと思っていたが、肌が白かった。



その様子を遠くから見ていた九条麻依は、海風に紙を揺らしながら静かに呟いた。


「やはり、そういうことか。」


スマホを見つめる。

そこには”神崎美桜の健康データを理事長が尋ねてきた”と書かれたメッセージ。


「さて、これはただのおっさんの趣味なのか。それとも何か企んでいるのか。」

麻依はこの事実をどうするか悩んでいた。



夕方。


海から上がり、タオルで髪を拭いていた美桜は、視界が揺れる感覚に襲われる。

砂浜だったため、足がもつれる。


すぐに麻依先輩が肩を掴む。


慌てて駆け寄る。


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫。少し転びそうになっただけ。」


眉を寄せたまま、言葉を飲み込むことしかできなかった。



夕暮れ。


施設へ戻る道。


美桜は夕陽に照らされながら呟く。


「今日、すっごく楽しかったね。」


「そうだね。今日は良く寝れそう。」


「そうだね。」


美桜の横顔はとても儚く、美しかった。

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