見えない支配者と立役者
試験流失問題が解決した翌週。
聖華学園は静けさを取り戻していた。
誰もが「橘による犯行」であると信じ、
犯人・橘の停学。
黒川柊真の潔白され、解決かに思われた。
昼休み。
生徒会室に流れる穏やかな空気。
神崎美桜は窓の外を見ながら呟いた。
「やっぱり、なんか変だよね。」
「変?」
一ノ瀬百合香がパンを頬張りながら尋ねる。
「事件は解決したけど、なぜか退学ではなくて停学。教師も理事長もメディアも触れない。
まるで”触れちゃいけないこと”みたい。」
「おそらく保護者などからの圧力だろうね。名門校としての信頼が落ちるし、
何より橘が大手メディアの息子だ。自分の子供の不祥事は流さないと思う。」
黒川柊真はどこか誤魔化すようにしていた。
(おそらく内部の誰かが黒幕としているはず。橘には僕を貶めいれるメリットがない)
放課後。
理事長室。
理事長が静かに紅茶を啜り、帰宅する生徒を眺める。
机の上には報告書。
【試験問題流出計画:結果報告】
「失敗」の2文字が赤く打たれている。
「黒川柊真、やはりそう簡単にはいかないか。」
低い声が部屋に響く。
そこへノックの音。
報告書をゴミ箱に捨てる。
「どうぞ」
入ってきたのは生徒会長ーー九条麻依。
いつも通りの冷静な表情で彼の前に立つ。
「失礼します。新しい制度の導入についての提案書を持ってきました。」
「そうか、ご苦労だ。」
書類を渡し、目を通す。
「どうやら今回の”作戦”は失敗したようですね。」
理事長の眉が僅かに動く。
「ほう。作戦?はて、なんのことか。」
「知らないふりをするのは結構です。ただ、生徒を利用して”彼”を退学に追い込もうとした事は事実でしょう?」
沈黙。
理事長はゆっくりと椅子に背を預けた。
「ほう。やはり君が監視カメラの情報などを彼らに渡したんだね。」
「ええ、生徒会長の役目は学園の生徒を守る事ですから。
それに可愛い私の後輩たちのためです。」
「そうか。それで、どうするつもりだ?」
「今回は警告をしに来ただけですよ。」
九条麻依は一歩前に出る。
「黒川柊真。あなた方が彼を退学に追い込もうとしている理由はわかりません。ただ、彼を侮らない方がいい。あなたが駒として切り捨てた相手は、あなたの後ろにいます。」
理事長の口元に微かな笑みが浮かぶ。
「まるで私がチェスをやっているみたいだな。」
「さぁ、それはどうでしょうか。」
麻依は深く一礼し、背を向けた。
「では、失礼します。
扉が閉まる音が響く。
理事長はゆっくりと息を吐き、カップを手に取る。
「九条麻依。君は何もわかってない。ただ君もまた、聖華学園の理想の生徒だ。」
彼の視線の先には、
”聖華学園 要注意人物”と書かれたファイル。
そこには新たに「九条麻依」の名前が刻まれた。
翌日。
昼休みの屋上。
柊真は空を見つめていた。
美桜が僕の隣に立つ。
「まだ何か気がかりなことでもあるの?」
「うん。試験問題の流出。これで教師側が何も動いてなかったのが気がかりなんだよね。だって普通は大問題じゃん。何かおかしいなって。」
「確かにそうだね。でもそれは柊真くんの勘違いじゃないかな〜。だって、監視カメラの映像を生徒会に提供してくれたのは先生たちなんだから。きっと生徒会に一任してくれただけだよ。」
「確かに。そうなったらその人に感謝しないとだなぁ。正直それがなけりゃ比較のしようがなかったし。」
「本当にそうだね。いつかお礼言わないと。」
風が2人の髪を揺らす。




