駒の上の騎士
講堂。
全校生徒が集まり、理事長の挨拶が終わる。
「では、最後に生徒会から今回の不正問題について報告があります」
マイクの前に立つ柊真を生徒たちが見つめる。
ざわめきが起きる。
「あれが女子生徒からカード盗んだやつらしい」
「生徒会がグルでやってんじゃんぇの?」
講堂中が静まり返った時、柊真はマイクを握る。
「生徒会の監査であり、今回の噂の人物、黒川柊真です。
今日は皆さんに誰が犯人か、それを確かめてもらいたいです。」
大画面のスクリーンに映し出されたのは防犯カメラの映像。
ー夜の教室。
一ノ瀬の机からカードキーを抜き取る男子生徒の姿。
ざわめきが走る。
「皆さん驚きでしょう。皆さんが見たであろう映像とは異なっています。
しかし、これは教職員から頂いた防犯カメラの映像です。」
次の映像が映し出される。
「俺たちが見たのはこっちだ。」
「なんかこっちの方が違和感がある」
口々に違和感に気づく。
「お気づきの通り、皆さんが見ていたものは何者かによって作られた映像です。
さて、一体誰が作ったのでしょうか。罪悪感に苛まれ、勇気を出して自白してくれた方がいます。
スクリーンが切り替わる。
別の映像ーーそこには橘がカメラをセットする場面、他の協力者に指示を出しているであろうやり取りが映し出された。
講堂が静まり返る。
「情報部の橘だ。」
前列に座っていた橘が立ち上がり、顔を青ざめさせる。
「な、なんでその画像をお前が持ってるんだよ」
「お、お前。裏切ったのか?」
協力者へ睨みつける。
「君は僕を陥れるために、他人までも犠牲にした。最低な行為だ。」
「こんなのでっちあげに決まってるだろ!」
橘が今にも襲い掛かろうとしている。
ーーまさかこんなに上手くいくなんてな。これで黒川も退学。俺は英雄扱いで次期生徒会長だなーー
音声が流れる。
その動きが止まった一瞬に教員が慌てて駆け寄り、橘を連行する。
会場の中に、小さな拍手が巻き起こる。
そんな拍手の中、生徒会長である九条麻依と壇上を入れ替わる。
「この通り、生徒会の関与はなく、私が選んだ黒川柊真、一ノ瀬百合香は無実だ。今回は優秀な1年生、そして勇気を出してくれた者のおかげで誤解は解けた。しかし、もし黒川が生徒会のメンバーではなかったらどうだろうか。確証もない事実に大勢が叩き、批判の目を向ける。なぜ片方の意見しか聞かなかいのか。生徒会でなければこのような場で証明する機会もなかったはずだ。私はこのような偽の正義によって優秀な芽が摘む行為は、この聖華学園の生徒会長として容認することはできない。今回のことはしっかりと反省してもらいたい、以上だ。」
講堂の照明が落ち、
静かな拍手の中九条麻依は壇上を降りた。
放課後。
生徒会室。
百合香が泣き笑いで言った。
「本当に良かった...柊真も麻依先輩も良かった!」
「かっこよかったよ、柊真くん。」
美桜が腕を組み誇らしそうに言う。
「3人ともご苦労だった。今回のことで生徒会の信頼はさらに強くなっただろう。」
麻依先輩が労いと感謝の言葉を述べる。
夕日が差し込み、生徒会室は金色に染まる。
皆薄々感じていたのだろう。
風に揺れ、葉っぱが空に舞う。
これが始まりであることを。




