第5話 疑惑の矢先
昼休みの生徒会。
窓から射し込む光が、積み上がった書籍の山を照らしていた。
美桜がその中から、1枚の報告書を見つめている。
「......試験問題の流出?」
美桜が声に出して読み上げた。
「匿名の内部告発、、試験問題が流出している可能性あり、か。」
麻依先輩が興味深そうに見つめる。
「この学園で試験問題の流出なんて、あり得ないでしょー」
百合香はそう言ってお茶を飲む。
「でも今回のテスト、順位が大きく変動してたよね。いつもより簡単っていうか」
「その真偽を僕たちに確かめて欲しいってことね」
百合香が困ったように眉を寄せる。
「でもこれって、生徒会の仕事なのかな。教師の仕事じゃないのかな?」
「試験問題の流出であれば、教師が生徒と結託している可能性もある。そうなれば生徒会が請け負い、真偽が分かり次第報告すべきだろう。」
麻依先輩の一声に皆が納得した。
夕方、生徒会室に残った3人。
柊真はパソコンを使い、問題流出の可能性を探っていた。
「印刷室に、放課後ログインアクセスが残ってた。」
「誰かわかったの?」
美桜の声が鋭くなる。
「......一ノ瀬百合香」
沈黙。百合香が固まった。
「ちょ、ちょっと待って。わたしそんなことしないし、時間もないよ!」
「ログは本物だよ。生徒1人1人が持ってるカードキーだから、間違いないと思う。」
「そんな、おかしい......」
百合香の瞳には涙が浮かんでいた。
美桜は慌てて立ち上がり、百合香を慰める。
「百合香がそんなことをするはずないよ。部活とかだって忙しいんだし。」
確かにその通りだ。百合香は生徒会、剣道で基本的に忙しい。
だから放課後にそんなことをしている余裕はないはずだ。
となると考えれることはただ1つだ。
「百合香、もしかしてカードキーを教室に忘れて家に帰ったことないか?」
「あ、剣道部の集まりで急いでて1回忘れちゃったことある」
百合香が恥ずかしそうに言った。
とりあえず、数日以内に何か動きを見せるだろうと踏んで、解散した。
翌日。
学園内には”なぜか”「黒川柊真が試験問題を盗んだ」という噂が広まっていた。
これはおそらく内部告発者がやったことだろう。
色々なところでヒソヒソとこの話している。
昨日の生徒会3人以外でこの話を聞いていた者はいない。そして調査してわかったのは昨日の段階でだ。
つまり、犯人側の目的としては、最初から僕を狙っていたってことだ。
成績上位故の妬みか何かは分からないけれど、無実を証明しなければならない。
もともと美桜や百合香、クラスの男子以外とあまり話さないが、いつもより孤立していた。
美桜はとても不愉快だと言わんばかりの表情をしている。
「試験問題流出させたってまじ?」
男子生徒が嘲笑まじりに声をかけてきた。
「そんなわけないだろ。いちいちそんなことする必要がない。」
そう言い返したが、相手は不機嫌そうに
「だったらなんでお前と神崎はいつも成績上位なんだよ。生徒会の中で不正してんじゃねーの?」
と言った。
確かにそう思うのも無理はないだろう。
「次の全校集会でわかることだ」とだけ伝えた。
昼休み。
ある男子生徒たちの会話を百合香が聞いていた。
「黒川もやっちまったなぁ。まさか一ノ瀬のカードキー盗んで犯行に及ぶなんて。」
「そうだったの?あいつやばいな」
「情報部は監視カメラにアクセスできるから、間違いないぜ」
放課後。
状況報告を麻依先輩にした。
「噂の出所は橘。昼休みに話してたの聞いたから間違いないと思う。」
「橘くん?あの、情報部の?よく柊真くんと話してる子だよね?」
美桜の声が硬くなる。
「確かに。情報部は監視カメラのデータなどに触れる権限を持っている。監視カメラや情報のログなどを見ることが出来るから犯行は可能だな。よくやった百合香。」
「つまり僕に似せた格好で百合香のカードキーを盗み、印刷室に入る様子を撮影し、あたかも監視カメラの映像のように作った。そしてたまたま防犯カメラの映像とログのID、性別が違う人物がいて、それが僕でしたーと噂を広めたって感じかー。」
「......最低」
美桜はさっきよりも不機嫌で、怒りを交えた表情をしている。
「証拠や犯人も大体はわかった。全校集会で全てを暴こう」
麻依先輩は静かに目を開けた。
「金曜日に全校集会を開く。それまでに資料などを作成しておけ。売られた喧嘩、しっかりと買ってこい!」




