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舞踏会直前の不安

「はぁ……ついにこの時期が来てしまった……」


エリスは机に突っ伏し、溜息をつく。次なるイベント、それは――学園主催の舞踏会。煌びやかな装飾に彩られたホールで、華麗に踊る攻略対象たち。そして、その相手となるヒロイン……つまりセシルが主役になるはずの超重要イベントだ。


「どうしたのエリス?お腹でも痛い?」

隣で屈託のない笑顔を浮かべるセシルが心配そうに覗き込んでくる。


「いや、違うの。ただ、舞踏会って聞くと色々と思い出して……」

(そう、ゲーム内のこのイベント……まさに波乱の舞踏会だった)


舞踏会イベントはディランやルークとの親密度が大幅に上昇する重要な分岐点。だが、問題はクラリスが絡んでくることだった。ゲーム内でも、クラリスはヒロインであるセシルに対し、容赦なく嫌がらせを仕掛けてきた。


(確か、ゲームの中だとクラリスはセシルが着るはずだったドレスを舞踏会当日にビリビリに切り裂き、ディランかルークが用意してくれていた替えのドレスも舞踏会の途中でワインをこぼして台無しにしてきたんだよね……とりあえず、汚れてもいいドレスを一応三着は用意しておこう)


「まぁ、庶民にはお似合いの装いになったわね、ふふふ」

なんて高飛車な笑いを浮かべていたクラリスの姿が、エリスの脳裏に蘇る。


(さらに酷いのは、わざと音楽が変わるタイミングでセシルを思い切り突き飛ばして、恥をかかせるイベントまであったっけ……)


その時、ルークもしくはディランが登場し、優しく助け起こしてくれるという王道展開。そこで正しい選択肢をいくつか選ぶことで、親密度が大幅に上がる仕組みだった。


「ねぇエリス、私どんなドレスがいいかな?」

セシルが目を輝かせて話しかけてくる。

「……うん、ドレスよりもまずはクラリス対策を考えようか」

「え?クラリス様?なんで?」

「なんでもない!気にしないで!」と慌てて誤魔化すエリス。


(さて、問題は現実でもゲーム通りにクラリスが嫌がらせをしてくるのかどうかだよね……もしゲーム通りなら、セシルはそこで助けてもらって親密度がアップするはずなんだけど……いやでも、二人がこなくて放置されてセシルが恥をかいたら、私が胃痛で倒れちゃう!)


「エリス、大丈夫?」

「えっ、あ、うん、大丈夫……たぶん」

セシルはドレス選びに夢中だが、エリスの頭の中はすでに舞踏会のシュミレーションでフル回転していた。



「そういえばエリス、舞踏会で誰と踊るの?」

セシルが芝生の上に座り、膝を抱えながらふと思い出したように尋ねてきた。エリスはその隣で本を読んでいた手を止め、静かな風を感じながら肩をすくめて答える。

「え、私?いやいや……私は隅っこでお茶でも飲んでる予定だよ」

「えー、せっかくの舞踏会なのに、それはもったいないよ!」


「いいの、私の仕事は主役を引き立てることだから」

「……主役って、誰のこと?」

セシルが首をかしげると、エリスはふっと優しい笑みを浮かべる。

「決まってるでしょ? もちろん、セシル、あなたのことだよ」

「え、私!?」

「だって、セシルは輝いてるもん。舞踏会でもきっと、みんなの視線を集めるよ。私はその後ろで静かに応援してる方が、性に合ってるから」

セシルは頬を赤らめ、少し考え込むように視線を落とした後、ふと思い立ったように顔を上げた。


「………もし舞踏会で誰かに意地悪されたらどうする?」

エリスは一瞬だけ驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しく微笑むと、そっとセシルの肩に手を置いた。

「そんな時は――私がすぐに駆けつけるよ」

迷いのないその言葉に、セシルの瞳がふっと和らぐ。

「主役を引き立てるだけじゃなくて、ちゃんと守るのも私の役目だからね。誰が相手でも、セシルに意地悪する人は私が黙ってないよ」

「エリス……」

「とりあえず、セシルはドレスを選んで楽しんでおけばいいからね!」


穏やかな会話が続く中、ふとエリスは何かに導かれるように周囲へ視線を巡らせた。その瞬間、背筋をゾクッと冷たいものが走る。まるで誰かの視線が突き刺さるような――いや、確実に見られている。


ゆっくりと振り返ると、少し離れた場所にクラリスとその取り巻きたちの姿があった。優雅な微笑みを浮かべながらも、その瞳には冷たい光が宿っている。彼女たちはこちらを見ながら、ヒソヒソと何やら耳打ちしている様子だった。


(うわ……あの嫌な笑み……絶対に何か企んでるよね!?)


エリスの脳裏に浮かぶのは、ゲーム内でクラリスが仕掛けてきた数々の嫌がらせ。その巧妙さと悪意を知っているからこそ、胸の奥に不安が広がる。しかし、ここはゲームではない。この世界では、もっと予想もつかないことが起こる可能性がある。


それでも、エリスはゆっくりと深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。

(まぁ、何があっても私がセシルを守るしかないか……)

内心で小さくため息をつきながらも、エリスは決意を固めた。

(……胃薬、持って行こうっと)


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