08. 夜の姿
私たちにお茶を入れることで落ち着きを取り戻したスミさんがお母様に何やら確認をする。
「 エマ様、”スリーズ”を呼びますか? 」
「 う~ん、大丈夫よ。近くまで帰ってきていると便りがあったところだし、帰ってきたときのサプライズにしましょう。 」
そう言って、お母様はたくらみがありそうに微笑んだ。
”スリーズ”?って誰のことなんだろうな。話の内容的には、お母様とスミさんの共通の知り合いっぽいけど。
そう思っていると、お母様が私が少し不思議そうに見ているのに気がついて教えてくれた。
「 スリーズはね、貴方のもう一人のお兄さんよ♡ 今は私の代わりに色々な場所に行ってこの星に異常がないか確認してきてくれてるの。帰ってきたら仲良くしてあげてね♡ 」
なんと!!私にはもう一人お兄さんができるのか!
前世はひとりっ子だったが、急に兄妹が二人できて憧れてたから嬉しいけど、なんて言ったってコミュ障な自分が仲良くなれるか不安だ。。
「 すりーずさんはどんなかたなんですか? 」
「 うーん、そうね~、、 」
そう言ってお母様とスミさんは顔を見合わせたあとに異口同音で言い切った。
「「 ぽやぽやした子 」してます」
「 な、なるほど、? 」
なんともこちらのテンション感で対応できるのか不安になる説明ではあるが、几帳面でちょっと怖そうな感じであるよりは全然安心できるだろう。うん。そう思いながら前世の同級生でもう名前も思い出せないがとにかく気が合わなかった友達を思い出した。
あの子はな~、几帳面でしっかりしている分なんだかんだどうにかいくだろう精神の自分とはちょっと合わなかったんだよな、、そう思ったらポヤポやしてるってことはちょっとおっとり系な感じだろうか、でも、2人が断言するほどのぽやぽやは不思議ちゃん系かな?まぁ、話が通じればどうにかなるだろ。
ここにはいないという兄に思いを馳せていると、思わずあくびが出てしまった。
ふわぁ~、お腹いっぱいでなんだか眠くなってきたな、。体感的には起きてからそんなに長い時間経ってないのに、子どもの体だからかな?
「 難しい話をいっぱいしたから、眠くなってきたかしら?少しお昼寝の時間にしましょう。また食事の前に起こすわね。 」
そう言って、お母様が私を抱き上げてくれた。
「 でも、さっきおきたばっかりだし、まだききたいこともいっぱいあって、! 」
「 大丈夫よ、まだ時間はたっぷりあるし子どもは寝て育つって聞いたわ。お昼寝しましょう♡ 」
お母様は私のおでこにキスをして、背中をトントンしながら子守歌を唄ってくれた。
「 ♪~、♫♪~、 」
それは、言葉なのか音なのかなんとも不思議なものだったが、自然と安心することができてお母様のふわふわぼでぃーも相まって私はあっさり夢の世界に沈んでいった、、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『 も~、あなたったらまたぼーっとしてたの? 何かやりたいこととかないわけ? 』
『 僕はここで君のたくさんの思い出話をきくのが楽しいから、このままでいいんだ。 』
『 ふーん、そうなのね。まぁいいわ。また伝令を言伝されたから行ってくるわね! 』
『 うん、いってらっしゃい。 』
花の咲き乱れた大地だった。
七色の背丈ほど大きい翼を持つ女性と神様によく似た人が話している。
彼女はすぐにその大きな翼でどこかへ飛んでいってしまった。残された男の人は少し切なそうに彼女が飛び去る方を見ながら目を閉じる。そうすると、そこに緩やかな風が吹き花々が舞った。春の風のように暖かく頬をなでるその風が、優しくて私も思わずつむった。
ゆっくりと目を開けると、彼も同じように目を開けた。その瞳には先ほどの悲しそうな色は写っていない。
だが、どこか少し寂しそうにアイリスを見つめる若草色の瞳がとても美しかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「 エトワそろそろご飯の時間よ。 」
私の髪をそっとなでてくれる優しい手が心地良い。顔をゆがませながら目を開けると、お母様が微笑んでくれた。
「 おはよう、エトワ♡ スミがご飯を作って待ってくれているからいきましょう。 」
「 おはおうございます。はい、いきます、。 」
まだ眠たくてしょぼしょぼする目をこすりながらお母様に抱っこして貰ってお昼ご飯を食べたお部屋まで行った。
そうして、途中夢の世界に戻りそうになりながらも、なんとか意識を覚醒させているといつの間にか机の上には昼と同じように美味しそうなご飯がいくつも並んでいた。
今度はスミさんも一緒に食べてくれるようで、テーブルの上には3人分のご飯ガセットしてある。
「 それでは『いただきます』。」
「「 いただきます。 」」
お母様のいただきますのあとに私とスミさんもいただきますをして、夜ご飯を食べ始めた。そこで、やっと完全に意識が覚醒しだして気づいた。
あれ、私の手狐の手じゃないな、、??
そうか!!!夜か!!エルフタイムか!!!
「 おかあさま!!!わたしっていませいれいのすがたですか!!?? 」
「 そうよ、先ほどの霊獣の姿も可愛いらしかったけど、精霊の姿もやっぱりとっても愛らしいわ♡ 」
うぉー!!やっぱり!!!フォークが自然に持てると思ったよ!肉球バージョンが21年間の人生の中で今日の昼間しかなかったから、全然違和感なく手を使ってたけどやっぱ指が自在に動くっていいね!
少しの不自由を思い出してから指のありがたみを感じつつ思った。
せっかくのエルフ姿がみたいけど、鏡がないっっ!!己が美少女に変化してるのか、全自分の理想を詰め込んだ容姿になれているのか気になるではないか!!
「 おかあさま、あのかがみってあったりしますか? 」
「 ええ、あるわよ?ご飯が終わったら一緒に見ましょう♡ 」
「 はい!! 」
やったー!!よかった鏡あって!中世ヨーロッパが舞台の異世界小説系だとない事も多いからな~。そう思うと、この世界の文化はそれよりは進んでるのかな?
そういえばさっきは、この世界の国についてとか全然聞いてないからそこら辺も知りたいよなー。あとは、どれだけ文明が進んでるのかも重要だな。でも、トイレは向こうのトイレみたいにレバーを押すだけで流れる水洗式のものだったし、衛生面もこのお屋敷は綺麗で行き届いてそうだけど、ここが特別なのかな?
「 おかあさま、このほしのぶんめいはどれほどすすんでいるのですか? 」
「 そうね~、私は地球について詳しく知らないのだけれど、アゼリオ様が地球の有益そうな知識や技術をたまに教えてくださるからそれを私がこの星に浸透させているのよね。だから、地球よりは全体的に進んでいないとは思うけれど、この星独自のものもあると思うから一概にどれくらいと言うことは難しいわね、。 」
「 なるほど、、たとえばかみさまがおしえてくださったものはなにがあるんですか? 」
「 そうね~、最近のものだと『醤油』や『味噌』という調味料の作り方や『テレビ』という機械の存在、あとは建築様式についてとかかしら。」
んなるほど!これは結構不安な感じっぽいぞ!ジャンルが多岐にわたりそうだし、なんでそれを今!みたいなタイミングのものもありそうだし、これは文明は中世ヨーロッパや江戸時代に毛が生えた程度と思っておいた方があとからのダメージが低そうだな、、、
「 なるほど、ありがとうございます。わたしがしっていることをこれからかつようしてももんだいありませんか、? 」
そうなんだよね、神様が意図的にこの星の文明を地球より遅らせていた場合私が持つ知識を活用することは神様にとっての敵対行動になる可能性がある。それにより、神様からの不況を買うことは得策ではないし無闇に地球での知識を使わない方が良いのか知っておくことは重要だ。
「 問題ないと思うわ、アゼリオ様が貴方が来る前に『この星に良い影響を与えてくれるといいな』とおっしゃっていたから。でも、何かしたいことがあったら私たちに先に教えてもらえると嬉しいわ。 」
「 はい!そうします! 」
うんうん、報連相は大切だよね。意思の疎通がとれている職場は素晴らしいってバイト先の店長も言っていたからそこはちゃんと守りますよ!
とりあえず、この星に悪影響とならなさそうな知識は活用しても大丈夫そうって分かっただけでも良いか。
そう思いながらもぐもぐしていると、スミさんから何か言いたそうな雰囲気を感じた。
「 どうかしました? 」
首をこてっと傾げながら聞いてみると、彼女は何か意を決したような顔で私を見据えたので思わず緊張してしまう。
「 エトワ様、よろしければ私に地球での料理について教えていただけないでしょうかっ。 」
静かめにだけど強く要望された。なるほど、料理か、、、
私に教えられるだろうか、、、?前世実家暮らし女子大生であった私は料理をする機会など、一年に片手で数えられるくらいしかなかったのだが、、これは期待に添えないのでは、?
「 えっと、ちきゅうではあまりりょうりをするほうではなかったんですが、どんなりょうりについて知りたいんですか? 」
「 先ほどエマ様が仰っていた、『醤油』と『味噌』の使い方だったりなどです。アゼリオ様からエトワ様がいらっしゃった国は美食の国だったと伺っておりますので、よろしければご教授願いたいと思いまして。 」
「 なるほど、、でも、しょうゆとみそはきょうのおひるもいまもつかってますよね?とってもおいしいし、つかいかたもあってるとおもうんですけど、 」
うん、お昼ご飯も夜ご飯もお味噌汁とかおひたし出てるけど使い合ってるしこれ以上教えることなさそうなくらいにはご飯美味しいと思うんだけどな~、
「 いえ、これしかやり方を知らないのです、。他にも、使い方はあると伺っているのですが、如何せんあの方はあまり食に興味がない方で、醤油と味噌についてもエトワ様が来られると言うことで故郷の味を再現するために、と教えていただいたんですがそれ以外についてはなにも、、 」
「 ふふっ、エトワ。スミはね、ご飯がとっても大好きだから美味しいものを色々知りたいのよ♡ 」
そうお母様が言うとスミさんほ頬がほんのり赤く染まって、恥ずかしそうにお母様を見た。
なるほど!!スミさんは美食家なんですね!すばらしい!!それは食への探究心が強かった日本人としては是非ともタッグを組ませていただきたい!日常の食事が彩られることは人生が彩られることと同じですからね!!
「 そうだったんですね!わたしもおいしいごはんだいすきです!ぜひわたしがわかるものだったらなんでもいいますね! 」
「 ありがとうございます! 」
スミさんとにっこりと見つめ合って早速日本食についてや地球での食文化についての話に花が咲いた。
そこでスミさんは実は甘いものが大好きなスイーツ女子であると言うことや、お母様がラーメンなどの少しジャンクなものに興味を持ったりしつつご飯を食べ終わり、いざエルフな自分と対面する時間になった。
「 いくわよ~、目を開けて頂戴♡ 」
鏡の前までお母様に誘導して貰い、そっと目を開けた。
そこに写っていたのは絹のような銀髪に星が瞬く夜空のような黒色の瞳をもち、肌は淡い月光を浴びたような白さの女の子だった。
前世とは似つかない美人具合に驚いたが、瞳が黒っぽいという前世との共通点が今世での自分の顔に親しみを持たせてくれる。耳をそっと触ってみると先が尖っていてそこで人間ではないのだなと改めて感じた。
「 どう?とっても可愛いでしょう?♡ 」
「 えと、はい。かわいいです。 」
自分で言うとナルシストっぽいが、事実前世より可愛く、自分でも見ても可愛いと思うんだからしょうがない。ただ、色合いがお母様と少し似ていたことが思ったより嬉しくてニマニマしてしまった。
うんうん大満足!!と、心の中でご満悦になりながらこんな容姿に生まれ変わらせてくれた神様にサムズアップしといた。
「 それじゃあ、寝る前にこの星を見渡す仕事があるから一緒にしてみましょう。 」
そう言って、今度は手をつなぎ先ほどの星のホログラムがある部屋まで転移した。
お母様、やっぱり転移するときは先に行ってほしいかもです。またもや、胃をヒュっと浮かせた私にお構いなくお母様は私を引っ張ってホログラムの前まで連れて行く。
そのホログラムはやっぱりとっても美しくて、生きているかのように温かく感じるこの星をきっと好きになれるんだろうなという予感めいたものを感じた。




