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第5話 これが俺の切り札(後編)

マコトは息を整え、森の奥へと走った。

いつか来る日のために密かに作り上げた切り札。

全身を蒸気駆動で強化し、精霊の力を補助に用いた外骨格型簡易パワードスーツ。


スーツを装着し蒸気エンジンを起動すると、シュウシュウという音とともに内部の機構が動き始める。

腕のパーツを握り締めると、力がみなぎる感覚が広がった。


「待たせたな……これで決着をつける!」


角豚に向かってゆっくりと一歩ずつ歩み寄る。

その巨体は赤い瞳をぎらつかせ、棍棒を思い切り振りかぶる。

巨大な一撃がマコトを狙って振り下ろされた。

 

「くっ……!」


咄嗟にスーツの左腕を盾代わりに掲げ、棍棒を受け止めた。金属製のアームと木製の棍棒がぶつかり合う衝撃が全身を襲う。

だが、スーツの補強材がその衝撃を和らげた。


「これならいける!」


棍棒を弾き返し、空いた隙に右拳を放つ。拳は敵の脇腹に直撃し、鈍い音が響く。


「ガァァァァッ!」


オークが痛みを堪えるように後退する。

その巨体がぐらりと揺れるがすぐに態勢を立て直し、再びマコトに向かって突進してきた。


「やらせるか!こっちからいくぞ!」


マコトはスーツの脚部をフル稼働させ、蒸気の力で一気に前進。オークに正面からタックルを仕掛けた。

肩口を叩きつける形でぶつかり合い、その衝撃でオークがさらに数歩後退する。


「グルァァッッ!!!」


角豚は咆哮し、再び棍棒を振り上げた。

だが、マコトは前のめりになるオークの動きを見極め、スーツの膝を使って胴体に打撃を与えた。


「これでも食らえ!」


膝蹴りがオークの腹部に直撃し、その衝撃で棍棒の振り下ろしが僅かにずれる。

その隙を見逃さず、マコトはさらに右肘を繰り出し、オークの胸元に打ち込む。


「グガァァァ!」


オークの巨体がよろめきながらも踏みとどまり、今度は左手の平手打ちを繰り出してきた。


「やばっ……!」


マコトは間一髪でかわし、スーツの力を活かして素早く後退。地面を蹴って距離を取った。

 

「攻め続けないと、押し切られる……!」


マコトは再び前進し、オークの下半身を狙う。

スーツの両腕を振りかざし、連続で殴りかかる。左、右、左――脚や腰に次々と拳を叩き込む。


「おりゃああ!」


蒸気エンジンが鳴り響き、スーツの拳がオークの分厚い皮膚を何度も打ち据える。

その度に鈍い衝撃音が森に響き渡った。


だが、オークも黙ってはいない。強烈な蹴りを放ち、マコトの胸元に直撃させた。


「ぐっ……!」


マコトの体がスーツごと後方に吹き飛ばされ、地面を転がる。急いで体勢を整えるが、オークが追撃の棍棒を振り下ろしてくる。


「これ以上やらせるか!」


マコトは右腕で棍棒を受け止め、左拳をオークの顎に突き上げる。拳が命中し、オークが一瞬動きを止めた。


「今だ……!」


スーツの脚部に力を込め、跳躍して角豚の顔面に膝を叩き込む。

流石の角豚もバランスを崩し、巨体がぐらりと揺れる。

 

(ここしかない……これで終わらせる!)


マコトはスーツ内部の蒸気圧を最大まで引き上げ、風と火の精霊の力を右腕に集中させた。


「……いける、いけるはずだ!」


(ここしかない……これで終わらせる!)


マコトはスーツの内部に意識を集中した。

風と火、そして蒸気――それぞれの力を可能な限り引き出し、一つに統合する手段。

それは、これまで何度も失敗を繰り返してようやく辿り着いた技術だった。


「……やるしかない!」


背部の動力炉が唸りを上げ、スーツ全体にエネルギーが行き渡る。

通常では安定性を優先して制御されている精霊の力を、蒸気の圧力を一時的に限界まで高めることで一気に解放する。


精霊統合エレメンタル・ユニオン――120%出力……!」


圧縮された蒸気と精霊の力が腕部に集まり始める。

火の精霊が灼熱の炎を生み出し、風の精霊がそれをさらに包み込む。

そして蒸気の圧力が全てを押し上げ、拳が紅蓮の光を放ち始めた。


「うおおおおおおおおっ!!」


マコトはスーツの限界を超えた力を使い、オークの攻撃をかわしながら一気に懐へ飛び込む。

そして拳を握りしめ、振り下ろされる手斧をタイミング良く弾き飛ばした。


オークの体勢が崩れた瞬間、マコトは全身を使って拳を振り抜いた。

その一撃がオークの顔面をかすめ、巨体がぐらりと揺れる。


「これで終わりだ……!!」


拳に全ての力を込め、火と風、蒸気の三位一体が生む膨大なエネルギーが拳に集中する。腕部が一瞬白熱化し、蒸気の噴射音が周囲に轟いた。


「燃え尽きろ――ジェェェェェットナァァァァックルゥゥゥ!!」


マコトの渾身の叫びと共に、拳がオークの胸部へと突き刺さる。衝撃が炸裂し、蒸気の圧力と炎が一体となってオークの肉体を貫くように叩き込まれた。


「グァァァァァ……ッ!」


その巨体が後方に吹き飛び、大地に叩きつけられる。その衝撃で周囲の木々が揺れ、大地に小さなクレーターができた。


マコトは荒い息をつきながら拳を下ろし、地面に横たわる角豚を見つめた。

紅蓮の光を纏っていた拳が徐々にその輝きを失い、静かに元の形に戻る。


「……やった、倒した……。」


全身が疲労に包まれ、スーツが軋む音を上げている。

だが、マコトの顔には充実感と安堵が浮かんでいた。


スピナーくんたちが駆け寄り、マコトの周りを囲む。

小隊のロボットたちが無事であることを確認し、マコトは微笑んだ。


「ありがとう……みんな。本当に……助かったよ。」


村への帰路を歩きながら、マコトは戦いを振り返っていた。


(あの出力……今後使いすぎるのは危険だな。)


精霊の力は本来、それほど強大ではない。

それを120%以上引き出すために考えたのが、「蒸気圧による力の増幅」だった。

蒸気の力を利用して精霊の力を効率よく一時的に高める技術。


だが、それには代償があった。使用中はスーツにかかる負担が大きく、長時間の使用は致命的な故障を招く恐れがある。


「まだまだ改良の余地がある……けど、今回の戦いでは最高の形で決められた。」


マコトは静かに呟きながら、仲間のロボットたちとともに村へ向かって歩き出す。

その背中には、新たな戦いへの決意が刻まれていた。

後編、いかがだったでしょうか?

ジェットナックルのノリは、

パシ◯ィックリムの必殺技です、ロボの必殺技はやはりパンチですよパンチ!

また違う必殺技も披露する時が来るでしょう…

次回にご期待ください!

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