表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/74

第63話 展開!神聖武装


密林の奥深く、部族の長がマコトたちを厳かに見つめていた。


「……もう一度問おう」


彼女の眼光は鋭く、その言葉には試すような色が滲んでいる。


「お前たちは、本当にこの地に害をなす者ではないと誓えるか?」


マコトは静かに頷く。


「俺達は貴方達も敵ではありません。俺は……自分の元素精霊召喚士(この力)のルーツを知りたい。そしてアルカディア・エルドリムが出来なかった精霊との共存、求めるのはそれだけです」


「……そうか」


女性はしばし沈黙し、深く息を吐いた後、厳かに宣言した。


「ならば、名乗らせてもらおう。我らはナヴァ=ランの民。遥かなる時の彼方、アルカディア・エルドリムを造り精霊と共に歩み、その遺志を受け継ぐ者」


「ナヴァ=ラン……」


アイリスがその名を反芻する。


「この地には、我らの祖先の“遺産”が眠っている。そして現在――それを狙う“異形の者たち”がいる」


彼女はそう言うと、厳かに扉に手をかざした。


次の瞬間、刻まれた古代の紋様が淡く輝き、重厚な扉がゆっくりと開いていく。


開かれた扉の向こうには、幻想的な空間が広がっていた。


壁一面には古代アルカディアの碑文や紋章が刻まれ、神秘的な気配が漂っている。


そして、部屋の中央には 透明な結晶体に封じられた球体 が鎮座していた。


それは、淡い青と銀の光を脈動のように放ち、周囲には金属的な構造体が浮遊している。


「これが……?」


マコトが足を踏み入れたとき、女性が静かに告げた。


「これこそが 超演算核オーバルキュレイト。我らが守り続けてきた、古代アルカディアの至宝」


その名を聞いた瞬間、フィオナの眉が動いた。


「……一体、超演算核とはどんなものなのですか?」


「アルカディアでは、これを都市の管理装置として使っていたと記されている。魔力の制御や供給、あらゆる事象をこの超演算核が司っていたという……しかし殆どの情報は失われ、では我々にも詳しくは分からぬ……ただ、一つだけ確かなことがある」


女性は壁画を指し示した。


そこには、超演算核を囲むように描かれた古代の王たちの姿と、彼らが何かを封印している様子が刻まれていた。


「記録によれば古の王たちはこう語った――『この力が解放されれば、この世界に大いなる災いをもたらす』 と」


「世界に……災い?」


アイリスが驚きの声を上げる。


「……“異形の者たち”がこれを狙っているのはこの世界に災いをもたらす為?」


フィオナの冷静な問いに、女性は静かに頷いた。


「確証はないが、可能性は高い。奴らは幾度もこの都市を襲撃し、内部に侵入しようとしている……」


マコトは超演算核を見つめながら、ゆっくりと呟く。


異形のものたち(そいつら)は……これをどうするつもりなんだ?」


「それは、我々にも分からぬ……だが、もしこれが奴らの手に渡れば、この世界が大きく変わる可能性がある」


マコトは拳を握る。


その時――外から、緊迫した叫び声が響いた。


「アシュカ・ヴェ! デラ・ミザク!」(長! “奴ら”がまた攻めてきました!)


ナヴァ=ランの戦士が駆け込んできた。息を切らしながら、焦燥と緊迫の色を浮かべている。


「何……!」


女性――ナヴァ=ランの長が低く呻く。


「知らせがあった……異形の者たちが再び攻めて来たようだ――」


マコトたちは顔を見合わせた。


(敵……このタイミングで?)


マコトの脳裏に嫌な予感がよぎる。魔王軍、あるいは異形の者たちが超演算核を狙っているのなら、執拗に襲撃を繰り返すのも納得できる。しかし、今のタイミングはあまりにも都合がよすぎる。まるで誰かが彼らの動きを見計らっていたかのように。


「カラ・カ・シルカ・ヴァルコス!」(貴様ら、神聖な森からでていけ!)


外の広場から、怒号のような叫び声が響く。


「……祖先の遺産を守る為に、戦わねばならぬ。お前達は客人だ、我々の争いに巻き込むわけにはいかない。ここが最も安全な場所だ、戦いが終わるまでここに隠れていると良い」


だがマコトは即座に決断し、女性のほうを振り返った。


「俺たちも手を貸します!」


女性は一瞬、マコトを見つめた。まるで、その申し出が真実かどうかを測るように。


しかし、すぐに頷いた。


「……よかろう。正直に言うと奴らの力は強大だ。今の我らは、あらゆる力を必要としている」


彼女が手を振ると、側に控えていた戦士たちが武器を手に取り、一斉に駆け出していく。


「行くぞ!」


マコトたちもそれに続いた。

互いに目配せしながら、それぞれの機体へと走る。


遺跡の外――


霧の奥から、影がゆっくりと迫ってくる。


「ギィィィィィ……」


金属と生物が融合した 異形の者たち が、密林の奥から現れた。


その姿は、まるで腐食した鉄と肉が絡み合ったような異様なものだった。

歪んだ金属の骨格と脈打つ生体組織が、霧の合間から蠢きながら現れる

無数の青白い眼が一斉に光を灯し、無機質な関節が軋む音を響かせる。


「……数が多いわね」


フィオナが冷静に数を確認する。


「最低でも50体以上……しかも、大型の個体もいる」


アイリスがスカーレットリーパーに乗り込み、両腕のブレードを構えながら、慎重に前線の動きを見極める。


その時、長が出撃を控える戦士達に声高に告げた。


「ナヴァ=ラン・カ・カーヴ!ヴェスカ・カ・ナラック・タヴィク!(ナヴァ=ランの戦士達よ!都市を守る為に死力を尽くせ!)」


「ヴェスカ・カ・ナラック・タヴィク!(我々は都市を守る為死力を尽くす!)」


ナヴァ=ランの戦士たちが 一斉に応じ、武器を構える。


大勢の戦士の中で、限られた十人程の戦士が、特異な動作を見せた。


彼らは腰に装着していた 金属製の装置 に手を伸ばし、起動の印を結ぶ。


「ヴァルカ・ゼル、ファルナク!(神聖武装、展開!)」

 

次の瞬間――


装置が光を帯び、戦士たちの身体を包み込む。

かつてアルカディア・エルドリムで戦士の鎧として運用されていた 古代の魔導兵装―― “神聖武装(エリュシオン・ギア)” が起動した。



銀と黒の装甲がまるで鎧のように彼らの身体を包み、淡い魔力の輝きがそのラインを浮かび上がらせる。エネルギーが循環し、戦士たちの肉体に重みと共に力が宿る。

その姿はまるで機械の騎士のようなヒロイックなものへと変わる。


「マコトのロボットやスーツも凄いけど……この人達の纏った鎧も凄い出来だよ!あんなの見た事がない!」


アイリスが驚嘆の声を漏らす。


「これは遺跡の壁画にあった……まさか古代の兵装がまだ生きているなんて……!」


フィオナも感嘆するように呟いた。


しかし、女性は静かに首を振る。


「今の神聖武装(エリュシオン・ギア)は、不完全なものにすぎない。本来は精霊の加護を受け、遥かに強大な力を誇っていた……だが、今はその加護を失い、大気中の魔力のみで動かしている」


彼女の言葉には、どこか悔しさが滲んでいた。


「不完全とはいえ……奴らに抗うためには、これを使うしかない」


「それでもこれは脅威的な技術です……今まで見て来た国々でも機械的技術は皆無なのに、遥か古代にこんな物を創り上げるなんて……!」


マコトは戦士たちを見つめながら、そう呟いた。


「詳しい事は戦いが済んでから教えよう……では、行くぞ――」


女性が儀仗を構え、戦士たちに号令を下す。


「ヴェスカ・ティラヴ、クラヴァク!(全軍、迎撃せよ!)」


号令に応えるように、戦士達は一斉に叫ぶ。

 

「ヴェスカ・カ・デラ・タルカ・クラヴァク!(兄弟たちよ、血潮を燃やし敵を討て!)」


ナヴァ=ランの戦士たちが、一斉に戦場へと走り出した――!

密林に暮らす謎の民、彼らはアルカディア・エルドリムの子孫、ナヴァ=ランの民でした。

神聖武装を纏い、異形の者たちとの戦いに挑むナヴァ=ランの戦士たち。

かつて精霊と共に歩んだ古代アルカディアの遺産が、現代においてどのような形で受け継がれているのか、そして 精霊の力を失った今、その真価をどこまで発揮できるのか……

また、超演算核オーバルキュレイトの存在が明かされました。果たして、その本当の力とは何なのか?その核心については少しずつ明かされていく予定です。

次回は ついに戦闘開始!

ナヴァ=ランの戦士たちとマコトたちは、この襲撃を防ぐことができるのか!?

もし楽しんでいただけたら、レビューや感想、評価、ブックマークを頂けると嬉しいです! 応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマお願いします!励みになりますので何卒m(._.)m 感想もいただけると喜びます(*´ω`*)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ