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第62話 超演算核

女性はマコトたちをじっと見つめ、静かに口を開いた。


「……お前たちがアルカディア・エルドリムの名を知っているとはな」


彼女の言葉に、マコトは小さく息をのむ。

アルカディア・エルドリム――それは、かつて存在した高度文明国家の名。

マコトたちは、アルカディアの遺跡で得たわずかな情報を頼りに、この密林へと足を踏み入れた。


「私たちは、アルカディアの遺跡で得た記録をもとに、ここへ辿り着きました。この地に、古代国家の詳細や、精霊衰退の原因を知る手がかりがあるかもしれないと考えたのです」


慎重に言葉を選びながら、マコトは女性を見据える。


「……そうか。お前たちが“異形の者たち”ではないことはわかった」


女性は静かに目を閉じ、深く息を吐いた。


「我らは“ナヴァ=ラン”……遥か昔、この密林に根付いた者たちの末裔であり、アルカディア・エルドリムの遺志を受け継ぐ者だ」


「アルカディア・エルドリムの遺志……?」


アイリスが思わず問い返す。

フィオナは腕を組みながら、冷静に分析するように言った。


「つまり……あなたたちは、古代文明の“継承者”というわけですね」


「継承者……か。そう呼んでもよかろう」


女性は微かに微笑む。


しかし、その表情がふと険しくなった。


「だが、お前たちが本当に“この地の敵ではない”と言い切れるかは、まだわからぬ」


「俺たちは敵ではありません――!」


「それを一体どう説明する……?」

 

「オレは、元素精霊召喚士です」


女性の表情が微かに動く。

 

「元素精霊召喚士……その存在はすでにこの世界から途絶えたはずだ。我々ですら、精霊と交信できなくなって久しい」


彼女の口調には疑念が滲む。


「本当に……お前は精霊の力を操るというのか?」


すると、彼女の後ろに控えていた案内役の若者が、力強く頷いた。


女性は再びマコトを見つめる。その瞳には、まだ完全には拭えぬ疑念が残っていた。


それに対し、マコトは静かに前へ進み出た。


「疑うのも無理はありません。……直接、その目で見て見極めてください――」


マコトはゆっくりと息を整え、両手を軽く広げる。

すると、その場の空気がわずかに震え、周囲の気流が柔らかく変化した。


「……これは……」


女性の目がわずかに見開かれる。


マコトの足元から、淡い青い光が静かに立ち上る。

それは風の精霊の微かな波動。周囲の木々がそよぎ、葉が揺れる。


さらに、彼はゆっくりと片手を上げた。

すると、空気が澄み渡り、微細な氷の粒が宙に浮かび上がる。


「これは……!」


周囲にいた民たちが驚きの声を上げる。


「精霊の気配……確かに、これは……」


女性は息を呑み、改めてマコトを見つめる。


「お前は……本当に、精霊と繋がっているのか……?」


「そうです。そして私は、アルカディア・エルドリムの遺跡で“氷嵐の守護神”と呼ばれた存在の封印を解き、彼と対話し、信頼を得ました」


「氷嵐の守護神……」


「アルカディア・エルドリムを滅亡させた災厄……」


背後の者たちの間から、かすかに囁きが漏れる。


マコトは頷き、言葉を続けた。


「氷嵐の守護神は、確かにかつて大いなる災厄となりました。しかし、それは人間との誤った契約と封印装置の暴走が原因だったんです。俺たちは彼と向き合い、信頼を築き……そして彼の力を託されました」


女性はしばらく沈黙した後、ゆっくりと息を吐いた。


「……お前の言葉が本当ならば、それは我らにとって希望の光かもしれない」


そう呟くと、女性は視線を向けていた仲間たちに軽く頷いた。


「……よかろう。お前たちの話を信じよう」


周囲の者たちも、敵意を薄め、警戒を解く気配を見せた。


 マコトが眉をひそめると、女性は鋭い眼光を向けてきた。


「ここしばらく、この密林には“異形の者たち”が攻め入ってきている」


「異形の者たち……?」


アイリスが反応し、フィオナも緊張した面持ちで耳を傾ける。


「奴らは、我らの領域に踏み入り、破壊を繰り返している……この“天空都市”を狙い、何度も侵攻してきた」


「……!」


マコトたちは顔を見合わせた。

この密林に入ってから確かに幾つか戦闘の痕跡を見たが、そこまでの大規模な襲撃があったとは想像していなかった。


「……お前たちは“異形の者たち”と戦ったことがあるか?」


「異形の者たち……?」


マコトは眉をひそめ、アイリスやフィオナと顔を見合わせる。


「あなたたちが言う“異形の者たち”とは?」


フィオナが慎重に尋ねると、女性は静かに答えた。


「金属と生物が融合した、異形の存在だ」


「……!」


マコトたちはその言葉に、思わず緊張する。

それは彼らが戦った虚晶将ゼファルドの率いる魔術と機械と魔物を掛け合わせた存在と酷似している。


「確かに、そういった者たちとは戦ったことがあります。

 しかし、それはこの密林ではなく、外の世界でのことです」


マコトがそう答えると、女性はじっと彼の目を見つめた。


「……そうか」


女性は静かに目を閉じ、数秒の沈黙の後、目を開いた。


「ならば、もう一つ聞こう。お前たちは、なぜ“異形の者たち”がこの地を狙うのか知っているか?」


「……」


マコトたちは顔を見合わせる。


「はっきりとはわかりません。ただ、皆さんはアルカディア・エルドリムの子孫。この地には古代文明に纏わる“何か”があるのでは……」


その言葉を聞き、女性は静かに目を閉じた。

 

そして、ゆっくりと壁の壁画に書かれた球体を指差す。


「奴らが求めているもの……それは、“超演算核(オーバルキュレイト)”だ」


「超演算核……?」


フィオナがその名を復唱する。


「聞いたことのない言葉ですね」


「当然だ。これは古代アルカディアにおいても、選ばれた者しか知りえなかった秘宝なのだからな――」


女性はマコトたちを順番に見つめ、低く続けた。


アイリスが息をのむ。


「異形の者たちは、それを手に入れるために、この密林を狙っているのですか?」


「間違いないだろう」


女性は厳かに言い切った。


「なら、俺たちはそれを阻止しなければいけません」


マコトは拳を握る。


「ですが、一つだけ気になることがあります」


フィオナが慎重に言葉を選びながら問いかける。


「その“超演算核”……一体、どんな力を持つものなのですか?」


女性はしばらく沈黙した後、静かに答えた。


「それを知るには、もう少し奥へ来る必要がある」


そう言うと、彼女は部屋の奥の扉を指差した。


「その先に、お前たちが知るべき“真実”がある」


マコトは一瞬だけ迷ったが、すぐに頷く。


「……案内をお願いします」


その答えを聞いた女性は、微かに微笑み、静かに扉を押し開いた。


奥へと続く道の先――

そこに古代文明の“究極の遺産”が眠っていた。

今回は、マコトたちが密林の奥で古代文明の末裔と出会う重要な回となりました。

彼らの語る「超演算核」、そして異形の者たちの襲撃……物語は新たな局面へと進んでいきます。


次回、マコトはこの地で「精霊の力」を示し、さらなる真実へと迫ります。

彼らが守るべきものとは何なのか? どうぞご期待ください!

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