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第60話 蠢く大地


「アイリス、左から来るぞ!!」


ワイルドストライダーの…魔導映晶(ビジョン・クリスタル)にマコトの声が響く。

アイリスは反射的に操縦桿を引き、機体を左に傾けた。その瞬間、巨大な影が樹々の間を縫うように飛来し、スティクシオンが鋭い牙を剥き出しにして突進してきた。


「もうっ!しつこいんだから――!!」


スカーレットリーパーの散弾魔銃(ショットガン)が火を吹く!


ドンッ!!!


至近距離の一撃が咬水翼魚(スティクシオン)の横腹に直撃!

しかし――


「……うそ!?あんな至近距離で打ったのに、コイツ硬過ぎるよ!」


弾丸は装甲のように硬化した表皮を削っただけで、致命傷には至っていなかった。

逆に傷ついたことにより、咬水翼魚の目がギラつき、怒りの色が宿る。


「マコト! ヤバいかも!!怒り心頭って感じ!」


「ああ、分かってる、だが――!!」


マコトはナイトストライダーの膝部シリンダーを作動させ、超圧縮蒸気を一気に解放。蒸気の反動で機体が瞬時に横へ跳び、スティクシオンの猛攻を回避する。地面が抉れ、土と草が宙を舞う。


「危なかった……フィオナ!」


「分かってるわ!!」


エメラルドセージの背部から青白い魔力が放たれ、手に持った金属製の杖型長銃の先端に魔力が収束していく。


彼女の瞳が輝き、詠唱が始まる。


「揺るぎなき大地の意志よ、翠の鎖となりて敵を絡め取れ――翠縛の大地鎖ガイア・ヴァイン!!」


大地の精霊が呼応し、地面から魔力を帯びた蔦が一斉に伸び、敵の全身を絡め取った。


「今よ、マコト!」


「……任せとけ!もらった――!!」


ナイトストライダーの右腕が動き、冷却ユニットが駆動。

砲身に霜が張り付いた状態で、狙いを定める。


「フロストディザスター――発射!!」


それはシルバレオのグレイシャルバスターに搭載されたフロストバスターキャノンの小型版。

冷凍エネルギーを圧縮した砲撃が一直線に放たれ、咬水翼魚の口内に撃ち込まれる!


炸裂した冷気が内部から広がり、咬水翼魚の全身を凍てつかせる!

次の瞬間――氷結した体が脆く砕け、その巨体は密林の中へ沈んでいった。


「……終わったか?」


「もう!それ言っちゃいけないやつ!まだコッチは全然終わりそうにないよ!!」


アイリスが叫ぶ。


妖甲千足蟲(ヴェルナスティア)の群れが、天敵である咬水翼魚が倒されたことで一気に活動を活発化させ、密林を埋め尽くす勢いで蠢き始める。地面がまるで波打つように動き、マコトたちは再び包囲される危機に直面する。


「一難去ってまた一難か、結局逆戻りだな!しかし、とにかく数が多すぎる!」


マコトが焦燥感を滲ませながら叫ぶ。アイリスは上空から状況を確認し、フィオナはドローンから魔導映晶を通じて敵の動きを解析していた。


「今解析が出来たわ!恐らくあの群れを統率している個体がいるはずよ!」


エメラルドセージが八時の方角を指差す。そこには他の妖甲千足蟲よりも一回り以上大きく、異様な光を放つ個体が映っていた。


「アイツか……よし、アイリス、フィオナ、他のヤツらを引きつけてくれ。俺がアイツを狙撃する!」


「了解! 任せて!」


アイリスのスカーレットリーパーが高速で移動し、大量の雑魚達の注意を引く。フィオナのエメラルドセージも魔法弾を放ち、ボス個体の動きを制限する。


「……ここで決める」


マコトは静かに呟くと、ナイトストライダーの狙撃モードを起動した。機体の各部が微細に調整され、長距離射撃に最適化される。右腕に装備された精霊エネルギーライフルの砲身が冷却され、薄い霜が表面を覆う。


「ターゲット、ロックオン……」


照準器を通して、ボス個体の動きを追う。その動きは予測不能で、一瞬の油断も許されない。マコトは呼吸を整え、心拍を安定させる。指先に集中し、引き金にかけた力を微調整する。


「……今――!」


引き金が引かれ、精霊エネルギー弾が砲身から放たれる。その瞬間、周囲の音が消え、弾道だけが鮮明に感じられる。エネルギー弾は空気を切り裂き、一直線にボス個体の頭部へと向かう。


時間が止まったかのような感覚の中、エネルギー弾は正確に目標を捉え、ボス個体の頭部に直撃した。閃光と共に、ボス個体の巨体が揺らぎ、地面に崩れ落ちる。その瞬間、群れ全体が動きを止め、まるで糸が切れた人形のように妖甲千足蟲達は散り散りに霧散していく。


マコトは息を吐き、緊張を解く。

アイリスとフィオナの機体もそれを確認し、安堵の表情を浮かべた。


「これで、この密林も少しは安全になったわね」


フィオナが微笑みながら言う。マコトは頷き、次の目的地へとワイルドストライダーを進めようとした時――

ふとマコトは背後に視線を感じた。しかし、振り返っても、そこにはただ揺れる木々と深い緑が広がるばかり。

気のせいだと自分に言い聞かせ、再び前進を始める。


だが、その背後……密林の影から、複数の瞳が静かに彼らの動きを追っていた。それは、この地に古くから住まう者。彼らは未知の鉄の戦士とその操縦者たちを興味深げに、しかし慎重に観察していた。その視線には、警戒と好奇心が入り混じっていた。

密林での激戦が続いた回でした。ワイルドストライダーの機動力を活かした戦闘、スティクシオンとの死闘、そしてヴェルナスティアのボスを狙撃する展開――

また、これまでの大規模な戦場とは違い、ジャングルの狭い地形や視界不良の環境での戦いを工夫することで、マコトたちが新たな課題に直面する様子も描けたと思います。

そして最後に、謎の視線――これはいったい誰なのか?

次回はついに、密林の“住人”たちとの出会いが描かれます。

マコトたちの旅路に新たな展開が待っていますので、ぜひ次回もご期待ください!


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