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第58話 ワイルド・ストライダー起動

ヴァルザークとの激戦が終わり、アルヴェスタ連邦は歓喜の渦に包まれた。

そんな中マコトたちは新たな調査のため再び大図書館(オルディス・リブラ)を訪れた。

連邦内のゴタゴタや、魔王軍の侵攻で後回しになっていた古代国家アルカディア・エルドリムの生存者たちが向かったとされる地に関する情報を得る為に――


静寂が支配する巨大な書架の間を、マコトたちは慎重に進んでいた。

大図書館(オルディス・リブラ)は、大陸でも最高峰の知識の殿堂。

だが、いくら膨大な記録が保管されているとはいえ、数千年前の文明に関する詳細な記述など、もはやほとんど残されていない。


「……流石にまともな情報は見つからないわね。」


フィオナが積み上げた書物の山を見つめながら、小さく息を吐いた。


「アルカディア・エルドリムについて記された書物はほとんどが断片的。残されているのは、口伝を元に後世に書き残されたものばかりね。」


マコトとアイリスが彼女の肩越しに覗き込む。

フィオナが指先で一冊の書をなぞりながら、ある一節を示した。


「だけど……ここを見て。」


そこには、かすれかかった文字でこう記されていた。


「――かつて、遠き地より来たりし賢人が、知をもたらし、大いなる王国アルカディア・エルドリムの礎を築きたる――」


「遠き地より……?」

 

アイリスが小さく呟く。


「何かの比喩かな?」


「明確な記述はないけど、この一文の後には、アルカディアの発展がこの時期から急激に進んだと書かれているわ。」


「……つまり、この“賢人”とやらが、何らかの知識や技術をもたらしたってことか。」

 

マコトが慎重に言葉を選びながら答えた。


「ええ。だけど、この記録自体が、アルカディア滅亡から数百年後に書かれたものなの。」

 

フィオナが続ける。


「だから、どこまでが事実で、どこからが伝説として脚色されているのかは分からない。」


マコトは静かにページを見つめた。


(“遠き地より来たりし賢人”……か。)


その言葉の響きには、どこか引っかかるものがあった。

しかし、表情には出さずに淡々と答える。


「少なくとも、その賢人がアルカディアにとって重要な存在だったのは間違いないな。」


「でも、結局その賢人がどこから来て、どこへ行ったのかは書かれていないのね……。」

 

アイリスが不満げに呟く。


「ええ。だけど、もう一つ興味深い記述があるわ。」


フィオナは指先で別の段落を示した。


「アルカディアの黄金時代の後、遥か南東の地へと移り住みし者たちあり。その行方、知れず――」


「南東……密林地帯か。」

 

マコトが呟く。


「行方知れず、ってことは、その後の記録はないの?」

 

アイリスが首を傾げる。


「少なくとも、ここには書かれていないわ。」


「でも、生存者たちが移り住んだなら、何らかの手がかりが残っている可能性はあるよね?」


「そうね。」

 

フィオナはページを閉じながら、静かに言った。


「行って確かめる価値はあると思うわ。」


「なら、決まりだな。」


マコトは小さく息を吐き、視線を南へと向けた。


アルヴェスタ連邦を後にして2週間程。

マコトたちはアークティカに乗り込み南東へ向かい、密林地帯の入り口に辿り着いていた。


空気は次第に湿り気を帯び、足元の地面も柔らかくなっていく。

やがて、前方に広がるのは鬱蒼と生い茂る巨大な森林。


「……いよいよ密林って感じだね。」

 

フィオナが額の汗を拭いながら呟く。


樹々の間からわずかに差し込む陽光が、緑のカーテンの中でぼんやりと反射していた。

それと同時に、密林特有の異様な静寂が彼らを包む。


「視界が悪いし、何か出てきてもすぐには反応できなさそう……」

 

アイリスが慎重に周囲を見渡す。


「薄々思ってたけどシルバレオやアークティカは、この環境じゃ流石に動きづらいな。」

 

マコトは木々を見上げながら呟いた。

密林は高低差の激しい複雑な地形が広がっている。

大型の機体では、移動すらままならないだろう。

それを見越してマコトとアイリスはアイディアを出し合って新たな機体を開発していた。

 

「……それじゃあ、新機体(コイツら)のお披露目といきますか!」


マコトはアークティカの扉付近に取り付けられたボタンを押し込んだ。

次の瞬間、アークティカの側面にぶら下がる様に設置された小型の格納ポッドが開き、蒸気を噴出しながら3機の人型機体が姿を現した。


それが、密林探索と戦闘に特化した新型機「ワイルド・ストライダー」だった。


それぞれの機体は、操縦者の個性に合わせてチューニングが施されている。


マコトの機体は漆黒と銀の装甲に、蒼く光る魔法刻印が浮かび上がる。

流線形のシルエットは、無駄のない洗練されたデザイン。

肩部には精密射撃ライフルを備え、右腕には振動を利用した高周波ブレードが仕込まれている。

遠距離と近接のバランスを極限まで高めた、機動力と攻撃力の両立した万能型だ。


「……我ながら良い感じだ。」


マコトは軽く機体の装甲を叩きながら呟く。


赤とブロンズの重厚な装甲が陽光に照らされて鈍く輝くのはアイリスの専用機。

両腕には、二振りの杭打ち機(パイルバンカー)が搭載され、背部には炸裂弾を装填したランチャーが装備されている。

軽量なフレームと強化アクチュエーターによる爆発的な加速力を誇り、密林の中でも素早く敵を翻弄する。

赤い装甲の隙間から蒸気を噴き出しながら、機体は静かに待機していた。


「ふふっ、最高にカッコいいじゃない。」


アイリスは満足そうに笑いながら、機体を見上げる。


そして最後は緑と金の装甲に、淡く魔法陣が浮かび上がるフィオナの専用機。

他の二機とは異なり、明確に支援機としての役割を持つ。

右腕には人間の魔術師用の杖の機能を応用した長距離射撃が長銃型魔法杖が備えられもう一方の肩には偵察と魔法増幅用の浮遊型ドローンシステムがセットされている。

機体の表面に施された魔法刻印が、穏やかに脈動しながら輝き、周囲の魔力を感知する補助機能を持っているのが特徴だった。


「……これなら、私も前線で戦えるわね。」


フィオナは静かに呟く。

支援機とはいえ、決して後方で指示を出すだけではない。

この機体ならば、彼女自身が戦場で直接魔法を操り、戦況を変えることができる。


「こうして現地で改めて見ると、やっぱり皆んなカッコいいね!」

 

アイリスが満足げに赤い機体を撫でる。


「気に入ったか? じゃあそれぞれ自分の乗る機体に名前を付けないとな。」


「んー……それなら私は……《スカーレットリーパー》!どう?かっこいいでしょ!」

 

深紅の死神(スカーレットリーパー)か。ちょっと物騒な名前だけど、アイリスらしいっちゃらしいな。」


マコトが肩をすくめると、フィオナも控えめに微笑んだ。


「私は……《エメラルドセージ》にするわ。」

 

「おお、それフィオナっぽい感じがする。」


そして、マコトは自らの機体を見上げる。


「じゃあ、俺の相棒(コイツ)の名前は……《ナイトストライダー》だな。」


それぞれの名を告げた瞬間、三機の「ワイルド・ストライダー」はシステムを起動し、蒸気を噴き上げながら熱を帯び始める。


「よし、密林探検に出発だ!」


マコトたちはそれぞれの機体へ搭乗し、密林の奥へと進み始めた。

戦場はついに南の密林へ――!

シルバレオやアークティカでは動きづらい環境の中、新たに投入された小型機「ワイルド・ストライダー」。

それぞれの個性に合わせた専用機と、名付けのシーンも含めて機体への愛着を深める展開にしました。


しかし、この密林はただの森ではない。

この地を支配する”何か”が、すでに彼らを見つめている……。

次回、ワイルド・ストライダー初戦闘――新たな強敵が登場! お楽しみに!

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