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第56話 四章 エピローグ


ヴァルザークの残骸は氷塵に包まれ、戦場に沈黙が訪れる。

崩れ落ちた敵機の断片が散乱し、瘴気を帯びた黒煙が空へと昇っていく。


しばらくの間、誰もがその光景を見つめていた。


それを破ったのは、防衛軍の兵士の一人の叫びだった。


「……勝った!ヴァルザークを倒したぞ!!」


その言葉が引き金となり、戦場に歓声が広がる。


「やったぞおおおお!!!」


「勝った!勝ったぞ!!」


兵士たちが次々と雄叫びを上げ、互いに肩を組み、抱き合いながら歓喜する。

重苦しかった戦場に、一気に安堵と歓喜が満ちていく。


カーヴェル執政官も、その光景を見ながら小さく息を吐いた。


「……長い戦いだったわね。」


彼女の声には、安堵と誇りが混じっていた。


アイリスもまた、息を切らしながら空を見上げる。


「……やったね、マコト」


その言葉に、マコトは静かに頷く。


「ああ。俺たちの……勝ちだ」


戦場の熱気がようやく落ち着き、マコト、アイリス、フィオナ、そしてカーヴェル執政官が並んで立っていた。


「それにしても……」


マコトはちらりとカーヴェルを見やる。


「カーヴェル執政官……強すぎないですか?」


「あ、それ私も思った!」


アイリスが大きく頷く。


「大陸十強って聞いたら確かに納得だけど……全然そんな風に見えないし」


「失礼ねぇ。アタシだって、昔は前線で戦ってたのよ?今でも衰えない様に鍛錬は怠ってないんだから」


カーヴェルは余裕の笑みを浮かべ、軽く髪をかき上げる。


「まあ、本当に久々だったからね。勘を取り戻すのに時間が掛かっちゃった。汗もかいたし、早くお風呂に入りたいわぁ〜」


「……久々であれとか、俺たちの立場がないんだけど。」


マコトが肩をすくめると、フィオナが苦笑しながら頷く。


「本当に……しかも戦いだけじゃなくて、執政官としても有能なのには驚くばかりね。」


「ふふ、そんなに褒められると照れるわねぇ。」


カーヴェルは満足げに頷くと、少し真剣な表情に戻った。


「でもね……本当に感謝してるのよ、あなたたちには。」


マコトたちの視線がカーヴェルに集中する。


「この戦いは、私たちだけじゃ乗り越えられなかった。マコト、あなたが獅子の巨人(ライオカイザー)黒の巨人(ヴァルザーク)を抑えてくれたからこそ、防衛軍(アタシたち)は戦えたのよ。」


「……俺だけの力じゃないさ。」


マコトは肩をすくめる。


「アイリスやフィオナ、そしてカーヴェルさんたち防衛軍が、みんな必死になって戦ったから勝てたんだ。」


「ええ、そうね。」


カーヴェルは満足げに微笑んだ。


「だからこそ、改めて言わせて。ありがとう、マコト、アイリス、フィオナ。あなたたちはこの都市を、この国を救ってくれた英雄よ。」


その言葉に、アイリスとフィオナは顔を見合わせた。


「……英雄って言われるのは、ちょっとくすぐったいな。」


アイリスが照れ臭そうに笑い、フィオナも控えめに微笑む。


「でも、悪い気はしないわね。」


「ああ、確かに――」


マコトは軽く息を吐きながら、空を見上げた。

その横でアイリスはふとライオカイザーを見上げると、頬を膨らませて腕を組んだ。


「ねえ、マコト。」


「ん?」


「なんでライオカイザー(この子)の事、私には秘密にしてたわけ?」


「えっ……?」


マコトが戸惑って振り向くと、アイリスは不満げな表情を浮かべていた。


「私、初めて見た時、“えっ、今何が起こったの!?“ってなっちゃったんだからね!?」


「それはまあ……驚かせたかったっていうか……?」


「はぁ~、もう……でも、まあ、カッコよかったから許す!」


「それなら良かった……」


アイリスは頷いたあと、ニヤリと笑った。


「次からはちゃんと”変形します”って言ってからやってよね!」


「そんな悠長なこと言ってられる戦場ならな。」


二人のやり取りに、フィオナが苦笑しながら肩をすくめる。


「まったく……ロボットの変形合体にここまでこだわるなんて、アイリスらしいわね。」


同時刻――遠く離れた曇天の空を黒い物体が闇を切り裂くように進んでいた。

ヴァルザークが完全に凍結する寸前、ゼファルドは緊急脱出装置を作動させていた。

魔王軍の幹部としてのプライドが当初は脱出機能の搭載を躊躇させたが、最終的には技術者としての合理性が勝り完成(ロールアウト)直前で搭載したのが功を奏した。


ゼファルドは座席に深く座り込み、記録水晶に映し出された戦闘記録を凝視していた。

ヴァルザークが凍結し、砕け散る映像が、何度も何度も繰り返される。


拳を握る。歯を食いしばる。


「……敗北、か。」


彼は小さく呟いた。


「私が……人間如きに、負けた……?」


ゼファルドは信じられないという風に頭をもたげた。

彼にとってヴァルザークは、蒸気技術と魔械融合の粋を集めた、最高傑作のはずだった。

機動力も火力も、自己修復機能も、すべて計算し尽くされていた。

――だが、最高傑作(ヴァルザーク)人間(サトウ・マコト)の技術に敗れた。


ゼファルドは口元を歪め、映像に映る最後の瞬間を見つめる。


「ロボットを動かすには心が、魂が必要なんだ!」


マコトの声が脳裏にこびりついて離れない。


「……心、魂……?」


ゼファルドは思わず鼻で笑った。


「くだらん……戦いとは計算と論理の産物だ。心だ魂だと人間が宣う曖昧な概念が関係するはずがない。」


そう言い切ったはずなのに。


「(しかし──なぜヴァルザークは敗北した?

ただの技術の差か? それとも、“あの言葉”に何か答えがあるのか?)」


ゼファルドの拳がわずかに震えた。


「理解できん……しかし……」


彼の目が鋭く光る。


「ならば次は、貴公の”ロボット愛”とやらを凌駕する機体を作り上げてみせる――!」


敗北は屈辱ではあるが、それは次の”完全なる機体”を生み出すための糧となる。


「貴様を倒す”私のロボット”を……必ずな。」


夜の帷の中、ゼファルドの脱出艇は速度を上げ闇の彼方へと消えていった。

第四章、ついに完結!

ヴァルザークとの決戦、ライオカイザーの新形態、そしてゼファルドの執念──ロボットバトルの熱さを詰め込んだ戦いになりました。


マコトたちは勝利を手にしましたが、ゼファルドは生き延び、次なる機体を生み出すことを誓いました。

彼との戦いは、まだ終わっていません。


そして、次章では新たな舞台、新たな敵が登場します!

マコトたちの戦いは、どこへ向かうのか……?


次回からの展開もご期待ください!

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