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第51話 ヴァルザーク

ヴァルザーク――

20メートル級の漆黒の鋼躯に脈動するように露出した”生体部品”が絡みつき、各所の蒸気機関からは不気味な白煙が漏れ出す。


その巨体が静かに歩みを進める。

ヴァルザークが地を踏み鳴らすたび、蒸気が噴き上がり、内部の動力パイプが脈打つように灯る。


「この戦場で証明してやろう。貴様の巨人や獅子が過去の遺物であり、ヴァルザークこそが唯一無二の未来だとな!」


操縦席に座るゼファルドが軽く指を鳴らした。

次の瞬間、ヴァルザークが咆哮のような蒸気噴射音を響かせ、一瞬にして姿を消した。


「え――消えた……!?」


思わずアイリスが辺りを見渡すが、見逃す筈のない敵の巨体が全く見当たらない。


「貴公の獅子は”高速機動”を活かすことで、相手に圧倒的な優位に立つ。……だが”不可視”の相手に、どう対応する……?」


何処からともなくゼファルドの声が戦場に響き渡る。


光学迷彩(ステルス)か……だが、その巨体でシルバレオの速度を捉える事ができるか――!」


マコトは瞬時にシルバレオのスラスターを最大出力にし、周囲を旋回しながら索敵を行っていく。


突如、戦場の一角で白煙が弾けた。


マコトは直感的に操縦桿を引くと同時に機体を急旋回し、白煙が舞った位置に回転機関砲の雨を浴びせた。

だが——


「甘い」


直後、ヴァルザークがシルバレオの死角から出現。

両型の装甲が展開すると漆黒の砲口が開き、内部の虚晶石と蒸気機関が脈動する。


冥獄閃滅砲アビス・エクスプロージョン、発射――」


ゼファルドが無機質に呟くと同時に、エネルギー砲が解き放たれた。


ドォォォォン!!!


凄まじい衝撃波とともに、黒紫に輝く無数の光弾がヴァルザークの前方180度の範囲を無差別に破壊していく。


「動きを捉えられないのなら、()()()()()()()()()()――!」


「マコト!!危ない――!!」


空中からその光景を目撃したアイリスは思わず叫んだ。

その破壊力と範囲は凄まじく、自らの軍勢を巻き込みながら辺りを蹂躙する。


「くっ……!!」


マコトはギリギリで反応し最大戦速でなんとか回避する。


「なかなかの反応速度だ。だが、コレにはどう対応するか試してやろう――」


ゼファルドが指を振る。


次の瞬間、ヴァルザークの両腕が変形し、両肩のパイプから膨大な蒸気が噴き出す。

全身の蒸気機関が一斉に稼働し、周囲に複数の魔法陣が展開されると大量の水が滝の様に噴き出し一体を覆い尽くしていく。


「こんな大量の水、一体どう言うつもり――」


ヴァルザークの次の姿を見た瞬間、マコトの脳裏にある現象がよぎった――


「皆んな、この場から直ぐに離れろ――!!!」


虚晶石と蒸気機関の融合によって生成された超高温の圧縮エネルギーが収束し、周囲の大気が歪む程の高熱を帯びる。


焔熱蒸裂波(ラグナ・エラプション)——」


ヴァルザークの全身の蒸気機関が一斉に稼働すると、両腕から複数の()()()()が発射される。

超高温の熱線が大量の水に触れた瞬間、周囲を飲み込む凄まじい規模の大爆発が起こった。


「きゃあっ――――!?!」


上空のアイリスがその爆風で制御を失いかけ、墜落しそうになるのをなんとか堪える。


マコトは即座にシルバレオのスラスターを全開にし、側方へと緊急回避を試みる。

しかし焔熱蒸裂波その圧倒的な爆発速度は、回避を許さなかった。

冷気を帯びたはずの重装甲が、一瞬で赤熱するほどの熱量と爆風を浴びる。


「ぐっ……!!シルバレオは重装甲のお陰で耐えられるけど、先に中の俺が蒸し焼きにされそうだ――!」


熱波が通過した後戦場に残ったのは、幾つものクレーターと焼け焦げた魔物と吹き飛ばされ虫の息になった防衛軍の騎士たち――

更に余波で地面が次々と弾け飛び、爆音を伴って蒸気が噴き上がる。


「……っ、くそ、まさか()()()()()を使うなんて……!」


マコトの頭は混乱していた。

この世界は敵も味方もファンタジーの異世界らしく、剣と魔法の戦いが主だった。

なのにゼファルド(アイツ)は水蒸気爆発……()()()()を用いたのだ。


「我が最高傑作と、魔王様から授けられし叡智が合わされば最早我らの悲願を阻む者はいない!」


操縦席の警告灯が何度も点滅を繰り返す。

通常の砲撃とは異なり、直撃していなくとも影響が及ぶほどの圧倒的な破壊力――まさに戦場を灼熱の地獄へと変える一撃だった。


「……これ、まともに喰らったら、私たちどころか、この戦場そのものが蒸発しちゃう……!!」


「これ以上こんな物を使われたら味方の被害が拡がる一方だ……!何とかここから引き離さないと……」


マコトは拳を握りしめ、シルバレオのブースターを再調整する。

次の砲撃が来る前に、何か手を打たねばならない――


だが、ヴァルザークはすでに次の砲撃準備に入っていた。


その巨体から蒸気が噴き出し、胸部のコアが再び脈動を始める。戦場は今、逃げ場のない地獄と化していた――

今回はついに、ゼファルドの切り札 ヴァルザーク が本格的に動き出しました!

生体部品を組み込んだ異形の機体、蒸気と虚晶石の融合技術、圧倒的火力――

戦場そのものを吹き飛ばす恐怖……このままでは マコトたちに勝ち目はない!?

次回、ついに マコト vs ゼファルド の本格的な決戦が始まります!

どうやってこの絶望的な状況を打開するのか――ぜひご期待ください!

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