表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/74

第45話 極光凍結砲


最初の巨大蒸気獣(デカブツ)が姿を現した瞬間、呼吸の様に黒煙を伴いながら蒸気が吹き上がり、その動きに連動し両肩の巨大砲塔がシルバレオを捕捉した。砲撃の回旋音が低く響き渡り、次の瞬間、圧倒的な破壊力を秘めた魔力弾が放たれた。


「――っっ!!!」


マコトはグレイシャルバスターの装甲を信じ、シルバレオを一歩も引かせることなく正面突破を敢行――魔力弾が装甲に直撃するが、分厚い重装甲はその衝撃を完全に無力化し、表面に冷気の霜が広がる程度であった。


「自分の設計は信じていたけど、実際体験する時はドキドキだな。だけどこれで防御面は問題なし……次は、こっちのターンだ!」


マコトは右肩に装備された元素噴進弾発射器(ロケットランチャー)を起動する。敵の砲塔に狙いを定めると風の力を纏った大量の弾頭を一斉に撃ち込んだ。砲塔は爆発と風の刃で切り刻まれ跡形もなく粉砕される。

だが、蒸気獣は負傷をものともせず、その前脚を振り下ろしてシルバレオを叩き潰そうとする。その一撃は地面を砕き、土埃が舞い上がったが――


「――甘い!」


スラスター全開でシルバレオが横へ急速に回避。敵の死角へ滑り込みながら、左の回転機関砲(ガトリング)で正確に狙いを定める。


「一気に沈める!」


高速回転する銃口から、無数の冷気弾が敵の脚部を撃ち抜きバランスを崩した。その隙を見逃さず姿の見えた動力炉を一気に狙い撃ちする。圧倒的な弾幕が弱点を的確に捉え、蒸気獣の動力炉が一気に凍結粉砕され、巨体がその場に崩れ落ちた。


直後、二体目の巨大蒸気獣がすでに突進を開始していた。その砲塔から激しい砲撃を繰り出しながら地面を砕き接近する。


「次はこいつか……!」


マコトはシルバレオの全身のスラスターを点火し、右に高速で移動しながら敵の正面から逃れる。だが、巨大蒸気獣はすぐに砲塔を振り向け、弾幕を放つ。


「この間よりも攻撃方法が洗練されている……だけど、こっちも以前とは違う!」


叫ぶと同時にマコトは手元のスイッチを操作し、バスターキャノンを「炸裂弾モード」に切り替える。火と土の精霊の力を凝縮した魔力弾が砲身に装填される。砲口が赤熱し、周囲の空気が振動するほどのエネルギーが充填された。


「お返しだ、味わってみろ――!!」


シルバレオが一気に距離を離し、敵の足元を狙って炸裂弾を放つ。弾丸は着弾と同時に爆発を起こし、爆風が蒸気獣の足元から広がる。その威力は地面を大きく抉り取り、巨体を大きく揺さぶった。


敵足元を崩され、一瞬バランスを失うが、それでも体勢を立て直そうとする。その瞬間を見逃さず、マコトはさらに追撃を仕掛けた。


「動きを止めるなら、もう一発だ!」


シルバレオが敵の懐に入り込み、再び炸裂弾を放つ。側面から何度も放たれた砲弾はその巨体に風穴を空け、強引に動力炉を噴き飛ばした。巨大蒸気獣は火花と蒸気を吹き上げながらその場に膝をつき、ついに動きを停止する。


「炸裂弾、威力は十分だな……!」


二体目を撃破すると間髪入れず巨大蒸気獣が二足歩行獣(ファルガスト)部隊を伴いながら迫ってきた。二足歩行獣の砲塔からは連射性の高い小型の魔力砲が放たれ、遮断する隙間すらないほどの攻撃を浴びせてくる。


「物凄い弾幕で動きを封じるつもりか……! でもグレイシャルバスター(コイツ)を舐めるなよ――!」


マコトはシルバレオを再びスラスター全開で加速させたが、今回は距離を取るのではなく、敵の懐に一気に飛び込んでいった。


「行くぞ、シルバレオ! 新装備が離れて撃つだけじゃないって所を見せてやれ!」


巨大蒸気獣の巨体を利用するべく、シルバレオはその前脚を地面に強く踏み込み、最大戦速で敵集団の背後に回り込んだ。その圧倒的速度に方向転換の間に合わない敵を尻目にまるで壁を駆け上がるように巨大蒸気獣の背面を一気に駆け昇っていった。巨大蒸気獣は突如として頭上に迫る敵に対応しきれず、咆哮を上げながら体を揺さぶる。


「これくらいで振り落とされるかよ――!」


シルバレオの脚部スラスターが細かく噴射を繰り返し、急激な振動にもかかわらず安定した動きを保つ。そして、瞬く間に背部の動力炉の真上へ到達した。


「動力炉、捕捉……これで終わりだ!」


マコトはシルバレオの前脚を大きく振り上げ、冷気を纏った鋭利な爪を動力炉の中心に叩き込んだ。その瞬間、動力炉全体が凍結し始め、機体が全身を軋ませながら停止していく。


「これが近接戦での一撃の威力だ――!」


巨大蒸気獣は振動を残しながら地面に崩れ落ち、内部の蒸気が白い霧となって辺りに立ち込める。マコトはスラスターで柔らかく着地し、視界を遮る蒸気の中で次の動きを見極めていた。


「残った奴らは私に任せといてー!」

 

巨大蒸気獣が破壊され指揮系統を失った二足歩行獣たちをアイリスが放つ空からの弾幕で完全に沈黙させていく。


「……さあ、残るはあと二体だな」


三体目を撃破したことで、近接戦でも圧倒的な力を見せつけたシルバレオ。だが、戦場はまだ静まり返ることなく、遠くには残る二体の巨大蒸気獣が迫ってくる影が見え始めていた。

巨大な影はその動きをさら加速させた。彼らはファルガスト部隊を従え、左右から包囲するように進軍を開始した。


「やっぱり簡単には終わらせてくれないか……!」


マコトは即座に状況を把握し、アイリスに通信を送る。


「アイリス、協力してくれ! あの二体を一直線上に誘導する必要がある。これ以上、街に被害を出したくない!」


「了解!」


アイリスは高度を取り、空中から敵の動きを見渡す。スラスターを全開にし、蒸気獣の視線を自分に向けた。


「さあ、こっちを見なさい! 空から叩き落としてあげるわよ!」


言うや否や弾幕の雨霰を敵集団に浴びせ、その余波で二足歩行獣が次々と破壊されていく。

すると彼女の挑発に反応したのか巨大蒸気獣が、砲塔を動かしながらアイリスを追尾し始めた。その間、アイリスは巧妙な機動で的を絞らせずに両者を直線上に引き込むよう誘導する。


「マコト、あと少しで一直線に並ぶわ! 今のうちに準備を――!」


「分かった、後少しだけ頼んだぞ……!」


マコトはバスターキャノンの砲身を最大限に展開し、精霊エネルギーを利用したもう一つの形態、極光凍結砲アークティックキャノンをチャージし始めた。砲口から青白い光が溢れ出し、周囲の大気が凍りついていく。


「この一撃で終わらせる……!」


極限まで圧縮(チャージ)されたエネルギーを留めながら慎重に照準を調整する。敵が直線上に並ぶタイミングを見極めながら、冷静に計算を重ねた。


「もう少し……もう少し……」


「マコト!誘導完了!敵が一直線に並んだ!撃って――!」


アイリスが叫ぶと同時にその場を一気に離脱。

敵が完全に直線上に並んだのを確認し、マコトは迷わず引き金を引いた。


極光凍結砲アークティックキャノン……発射――!!!」


砲口から解き放たれた冷気を纏った強力なエネルギー波が、目にも留まらぬ速度で敵に向かって突き進む。その光景は、まるで凍てついた嵐が走り抜けるかのようだった。


「……すごい……」


アイリスが息を呑む。


冷気の波動が蒸気獣の動力炉を貫通するだけでなく、その威力はさらに広がり、蒸気獣の半身を丸ごと吹き飛ばした。もう1体の蒸気獣も同時に貫かれ、その巨体が寸断されその場に崩れ落ちる。


「おいおい、多少は予測してたけど……こんな威力、流石に想定外だぞ……!」


マコト自身も目の前の光景に驚愕していた。もともと動力炉を狙い撃つつもりだったが、氷嵐の守護神の力を使ったシステムが想定以上に威力を発揮し、敵の巨体を消し飛ばすほどの破壊力を発揮していた。


崩れ落ちた蒸気獣の残骸からは、冷気が立ち込め、周囲の空間を白く染め上げていく。


アイリスが息を切らしながら空から降りてくる。彼女はシルバレオの横に降り立つと、マコトに向かって微笑んだ。


「マコト、あなたってやっぱり普通じゃないと言うか……ちょっとだけぶっ飛んでるよね……」


「いやいや普通だよ!流石にこれは意図した物じゃないから――!」


マコトは苦笑いを浮かべたが、その表情には満足感が滲んでいた。

今回のエピソードではついに グレイシャルバスター の真価が発揮されました!

アークティックキャノンの想定外のとんでもない威力…驚いて頂けたでしょうか?

しかしこれで終わりでは無いのです……

次回は更なる魔物の大軍団の侵攻、そしてアルヴェスタ連邦内の陰謀が明らかになります。

ご期待ください!


良ければレビュー、感想や評価、ブックマークを頂けると大変励みになります!ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマお願いします!励みになりますので何卒m(._.)m 感想もいただけると喜びます(*´ω`*)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ