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第43話 蒸気獣の咆哮


「これで最後――!」

 

アイリスがフレア・リヴァイアから炎弾を放ち、最後の飛行魔物を撃墜した。轟音とともに魔物が爆散し、街の空がようやく静かになる。


「これで空中の脅威は無くなった……!」

 

一息ついたアイリスだったが、すぐに足元の地面が震えるのを感じた。


ドン、ドン、と規則的な衝撃音が地響きのように響いてくる。


「……まさか――!」


アイリスが高度を上げて辺りを見下ろすと、地上には以前遺跡で戦った謎の機体が何十体と出現していた。それだけではない。街路の奥から、圧倒的な威圧感を放つ巨体が姿を現した。


全長20メートルを超える四足歩行の魔物。その背中には虚晶石を中心とした蒸気機関が剥き出しになり、時折黒煙と蒸気を噴き出している。その巨体が街路を踏み割りながら歩みを進める度に周囲の建物が震え、粉塵が舞い上がった。


「なんて大きさなの……マコトが倒したシャドウベヒーモスよりも上かも……!」

 

アイリスはその異様な姿に息を呑む。


巨大な魔物の両肩には幾つもの蒸気魔力砲が搭載されており、敵意を剥き出しにしてアイリスを見上げていた。そして突然砲塔が動き出し、空中の彼女に向けて一斉射撃が放たれる。


「わ!危な――!?」

 

アイリスは急旋回して紙一重で蒸気砲をかわすが、空中で砲弾が弾けて爆発が続けざまに起き、彼女の視界が煙と炎に包まれる。


アイリスが巨大な魔物と会敵した頃、マコトも地上で苦戦を強いられていた。


「これは厄介だな……!」

 

マコトは一人で地上でファルガスト部隊に立ち向かう。敵は前回の戦いよりも強化されている様子で、その動きは格段に洗練されている。


「これだけ素早いと反応するのも一苦労だな……!」

 

敵は素早い動きで付かず離れずを繰り返しマコトを狙う。


「今までだったら苦戦してただろうな……()()()()()()!」


言うと同時にマコトは収納袋から瞬時に取り出した試作型の遠距離装備をスーツの背部に装着させ、そのまま圧縮された冷気の弾丸を矢継ぎ早に放ち、敵の脚部を瞬く間に凍りつかせた。

動きが止まったところをパイルバンカーで弱点の動力部を一撃で貫く。


「1体仕留めた! 次だ……!」

 

高速で走り抜けながら機動を急激に転換させ、凄まじい数の攻撃を回避する。すれ違い様に冷気の弾丸を撃ち込み敵の機動力を次々に奪っていく。


「これでかなり数は減った筈だけど……!?」


マコトが周囲を見渡し確認しようとした瞬間、巨大魔物が激しく蒸気を吹き出しながら突進を始める。


「マコト、気をつけて! あの巨体の突進を喰らったらひとたまりもないよ!」

 

アイリスが声を上げるが、マコトはすでに敵の射程内に入ってしまっていた。


「やらせるか!」

 

マコトは脚部スラスターを全開にして側面に回り込む。だが、ゴルゴネウスの蒸気砲が火を吹き、爆風が彼を吹き飛ばす。


「っ……! この火力、冗談じゃないぞ!」

 

マコトが立て直す間にも、ゴルゴネウスは破壊の限りを尽くし、街の一角が崩壊していく。


「マコト!今そっちに行くから――!」


アイリスがスラスターを全開にして敵の頭上に飛び込む。同時に彼女は武器に付いている小さなレバーを引いた。

すると炎の力を放つ突撃銃は、その姿を冷気を用いて長距離射撃を行うランスモードにその姿を変える。


「そんなに興奮しないで、少しは落ち着きなさい――!」

 

放たれた冷気の槍が敵の右肩を貫き、蒸気砲の片方を破壊する。爆発が起き、その動きが一瞬鈍る。


「隙が出来た!一気にいくよ……!」

 

アイリスはさらに追撃を仕掛けるが、敵は無理やり体勢を変えて猛然と反撃を開始した。彼女の周囲を蒸気の爆風が包み、視界が奪われる。


「きゃあっーー!?」

「アイリス!!大丈夫か――!?」


辛うじて直撃は回避したが、衝撃波でフェザーの翼が一部損傷し煙を上げていた。


「だい、じょうぶ……!だけどさっきみたいに飛び回るのは流石に厳しいかも……!」


その時、フィオナから通信が入った。


「二人とも、聞こえる?」


「フィオナ?聞こえるけど、どうしたんだ?」


「どうしたも何も、私も力になりたいから来ちゃったのよ!さっきからあの巨大な敵を観察してたの……!」


「戦場に丸腰で来るなんて危険過ぎる、早くこの場から離れるんだ!」


「聞いて!あの巨大な魔物も他の敵と弱点は同じ、背中の動力炉よ!動力炉を破壊して!」


その身を安じて語尾を務めるマコトにフィオナは強く言い返す。



「背中の動力炉か……しかしあの大きさと高さ……正面から近づくのは危険すぎるか……」

 

マコトはファルガスト部隊を押さえ込みながら、アイリスに向けて声を飛ばす。


「アイリス、君のフレア・リヴァイアなら長距離狙撃が出来るはずだ! 俺がヤツも気を引く!君が……決めてくれ!」

 

「分かった、任せて――!!」

 

アイリスはリヴァイアランスを最大出力に切り替え、翼から煙を噴き出しながらその高度を更に上げていく。

遥か上空から狙撃態勢に入り、敵のの動力炉に狙いを定める。

その間もマコトは敵の嵐の様な攻撃を必死に回避しながら注意を引きつけた、気を引きながらぉ決してその場から動き出さない様に。


目標確認(ロックオン)……これで終わりよ――!」


冷気を纏った巨大な水の槍が放たれる。アイリスの全力を込めた一撃は、空気を切り裂きながら一直線に動力炉を貫通。敵のの蒸気機関は完全に停止し、その巨体が地面に崩れ落ちる。


周囲には蒸気と粉塵が舞い、静寂が訪れた。



「やった……!」

 

アイリスが肩で息をしながら呟く。


戦闘が終わりフィオナが敵のの残骸を調べると、やはりその機構には虚晶石が使用されていることを確認できた。


「やはり魔王軍の……それにこの設計……やっぱりマコトさんの蒸気機関と殆ど一緒だわ」


「くそ、一体どうなってるんだ……?」

 

マコトが難しい表情を浮かべながら残骸を見つめる。


「まさか魔王軍が俺のロボットを参考にしたのか……?」


「そうかもしれない……正直魔王軍の技術や理論は人類を上回っているから。敵がマコトさんの技術を解析して自軍に取り入れようとしても不思議じゃないわ」


「次に何をしでかすか予想もつかない……対抗するためにも一刻も早くシルバレオの装備を完成させないとな」


マコトたちは次の行動に向けて準備を始める。しかしその一方で、街の暗部ではさらなる陰謀が進行していた――

 

 

アイリスちゃん大活躍の回でした。

次回はシルバレオの追加装備も遂に登場します。

蠢く陰謀と迫り来る魔王軍の脅威、どうやって彼らは切り抜けるのか……

次回にご期待ください!

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