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第42話 炎と水の双牙

待望の新素材を図らずも手に入れる事が出来たマコト達は、早速工房に戻り作業を開始した。


「これがシルバレオの遠距離用の追加兵装の設計図なんだけど……これは時間が掛かるから後回しだな」


マコトは設計図を広げ、苦い表情で呟いた。強力な火砲と重装甲を兼ね備えたその設計は圧倒的な火力を誇るが、構造が複雑化しており開発にかなりの時間が掛かるのは明白であった。


「まずは別の装備から手を付けよう。アイリス、君のフェザー用に新しい武器を作る」

 

マコトはそう言いうと別の設計図を取り出した。


設計図には、一丁のライフルの姿が描かれていた。

 

「これは、『フレア・リヴァイア』と名付けた新しい射撃武器だ。炎と水、二つのエネルギーを切り替えて使える仕組みになってる」


「炎と水……?」

 

アイリスが興味津々で顔を覗き込む。


「フレアガンモードでは、圧縮された炎の弾丸を連射できる。範囲攻撃に優れていて、集団戦に向いてる。リヴァイアランスモードは水の槍を生成して狙撃する。敵を貫通する威力と射程距離が特徴だな」


「一つの武器で二つのモードを切り替えられるなんて凄いね!これなら敵が沢山来ても戦えそう!」

 

アイリスは目を輝かせた。


「ただ、両方の機能を持たせる分、魔力効率が課題だ。特にリヴァイアモードのチャージ時間が長い。これをどうにか短縮できないか考えてる」


マコトが説明すると、フィオナが書物を手に取りながら提案した。

 

「魔力消費を抑えるなら、例のアークナイトが使えるかもしれないわ」


「確かに研究所の所長さんも言ってたな。アークナイトは既存のどの金属よりも軽く、硬く……そして魔力や冷気の伝導率が極めて高いって。使えれば理想的だけど問題は加工方法だ――」


そう言ってマコトは頭を抱える。

期待の希少金属は加工法が未だに分からないままだった。


「過去の資料を見ていてみつけたんだけど、アークナイトを加工するのに、古代の人々は火力じゃなくて魔力と冷気を用いていたらしいわ……」


「魔力と冷気?」


「ええ、ちょうど良い事にマコト(あなた)は冷気を操る力を手に入れた。しかも氷嵐の守護神は魔力もとても強い……きっと出来るはずよ」


マコトはアークナイトの小さな塊を作業台の上に置き、フィオナと向き合った。


「フィオナ、魔力を通じて金属の反応を確認できるか?」

 

「もちろん。それに加えて、冷気の力を使えば結晶構造を調整することができるはずよ。精霊の力を貸してもらえれば、加工できる可能性はあるわ」

 

フィオナは真剣な表情で答えた。


「アイリス、冷却装置の魔力供給を調整してくれ。温度を精密に管理する必要があるから」

 

「任せて!」

 

アイリスが素早く装置の準備に取り掛かる。


マコトは火の精霊の力を呼び出し、アークナイトの塊に魔力を流し込む。そして同時に氷嵐の守護神の力を僅かに呼び出し、極寒の冷気を作り出した。


「まずは魔力を通じて金属を柔らかくするわ。冷気で一気に硬化させるタイミングが肝心よ」

 

フィオナが指示を飛ばし、マコトは魔力の流れを緻密に調整する。


「魔力が伝わっている……でも、伝導率が高いせいか逆に制御が難しいぞ……」

 

マコトは額に汗を浮かべながら集中を続ける。


「全体の魔力量が均一になってきたわ。合図をしたら一気に冷気を加えるのよ…………今ッ!!」

 

フィオナの合図で極寒の冷気を一気に送り込むと、アークナイトの表面に霜が広がり始めた。同時に、金属内部で光の粒が微かに瞬き、魔力の流れが変化した。


「――いける! 今の状態なら、きっと形状を変えられる!」

 

マコトが即座にハンマーを取り出し、慎重に叩き始める。


叩くたびに、アークナイトの金属は柔らかく形を変え、冷気が弱まると逆に硬化していく。その動作を繰り返す中、少しずつ目的の形状が現れていった。


「冷気を使うことで、アークナイトの構造が安定しつつあるのが分かるよ……これって普通の金属加工技術じゃ絶対に無理だね」

 

アイリスが感心した声を漏らす。


「本当だな……しかしこの特性、上手く使えば武装の強度を大幅に高めることができるぞ」

 

マコトはようやく笑顔を見せた。


最終段階に入ると冷気の力を最大限に集中してから瞬時に冷気を取払い、金属全体を一気に硬化させる。完成した武器は淡く青い輝きを放ち、圧倒的な美しさと力強さを備えていた。


「これで……フレア・リヴァイアの完成ね」


アイリスは出来たばかりのフレア・リヴァイアを持ち上げ、光を反射するその表面を見つめた。


「フェザーでの戦い方も大きく変わるな……そしてこの技術を応用すればシルバレオの武装の更なる強化も視野に入る、明日からは更に忙しくなるぞ……!」

 

マコトは自信に満ちた目で仲間たちを見渡した。

三人は知識と技術を結集し、時間も忘れて新装備の更なる開発を行っていく――


やがて夜が更けたセレスティア・ノーヴァ……

昼間の喧騒が落ち着きを見せ始めた頃、市内のとある倉庫街から突如、轟音と爆発の光が走った。


「……!? 今の音、爆発よね?」

 

工房の外から響く爆音に、アイリスが眉をひそめてマコトに目を向けた。


「凄い音だったな、ただの事故なら良いんだけど……急いで確認しに行こう!」

 

マコトは工具を置き、即座にパワードスーツ「バイパー&コブラ」を装着。アイリスもフェザーを起動し、後を追った。


「フィオナはここで待っててくれ!何かあればそこの通信用の魔法具から連絡する――」


「わかったわ、二人とも気をつけて――!」


倉庫街に急行した二人が目にしたのは、破壊された建物と逃げ惑う市民たちだった。近くの建物には爆発の痕跡があり、辺りには焦げた匂いが立ち込めている。


近くの建物から次々と人々が飛び出してくる。その誰もが怯えた表情を浮かべている。


「何があったんだ!? 誰か事情を知ってる人はいないか!」

 

マコトが周囲に呼びかけると、一人の男性が震える声で答えた。


「急に……倉庫の中から何かが……! 妙な金属音が聞こえたかと思ったら、爆発が……!」


「金属音……?」

 

マコトは瞬時に、自分たちがエルドリム遺跡で遭遇したあの機械兵器を思い出した。


「嫌な予感がするな。フィオナに現場に来てもらって調べてもらうべきだ」

 

マコトは通信機でフィオナに連絡を取り、現場へ向かうよう指示を出した。



その時――倉庫の奥から金属の軋む音が響き渡り、廃材を薙ぎ倒すようにして姿を現したのは、蒸気を吐き出しながら動く幾体もの二足歩行の生体兵器だった。

背中には輝く赤い結晶体が埋め込まれ、その光が不気味に点滅している。


「またこいつらか……!」

 

マコトがバイパー&コブラを構えた瞬間、機械兵器は目のような赤い光を輝かせ、一気に突進してきた。


「早いッ――!?」


身を翻して辛うじて回避したが、敵兵器の動きは遺跡で遭遇した物よりも更に洗練されている。



「市民がまだあちこちに取り残されてるってのに……! アイリス!周辺の避難路を上空から確認してくれ!」


アイリスが空を飛び、敵に気付かれないように上空を旋回する。


「このエリア、東側の道が塞がっているわ。西側へ誘導するしかないよ!」


「アイリス、敵の動きを引き付けるのは任せる。市民を守るため、派手に暴れてくれ!」


マコトが指示すると、アイリスはフェザーの翼を全開にし、一気に街路の中心へ飛び込んだ。


「来なさい! 相手をしてあげるわ!」


敵兵器がアイリスに反応し、一斉に彼女に向かって攻撃を仕掛けてきた。だが、彼女はフェザーの高い機動力を活かして敵の攻撃を巧みにかわし、時にはシールドモードを展開して攻撃を防いだ。


「そろそろ新兵器の出番ね、いくわよフレア・リヴァイア……!」


背部に背負った長銃を取って構えると、敵の隙を狙って炎の弾丸を一気呵成に撃ち込む。炎弾が雨の如く降り注ぐと機械兵器を滅多撃ちにし、その機能を停止させる。


「いくらでもかかってきなさい!マコトが作ったフレア・リヴァイア(この子)があれば負けないんだから――!」

 

アイリスの新兵器、フレア・リヴァイアの登場です。

モード切り替えできる武器って男心をくすぐりますよね。いよいよ本格化してきた陰謀に、マコト達はどうやって挑んでいくのか?誰が敵か、味方か……

次回にご期待ください!


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