第38話 アルヴェスタ連邦
「この資料を見てください……ここです」
フィオナが古びた紙片を指差した。かすれた文字の中に、ある情報が記されている。
「アルカディア・エルドリムが滅びた際、ごく一部の生存者が南東の地へ移り住んだと記されています」
その言葉に、マコトは顎に手を当てて考え込んだ。
「南東の地……その生存者たちが残したものが、今もどこかにあるかもしれない、ってことか」
「そうです。そして、その地理的な特徴を現在の地図と照らし合わせると……アルヴェスタ連邦のある地域と一致します」
フィオナは資料を仕舞うと、大きな地図を広げてみせた。そこには大陸の地形が記されており、南東の広大な平原には連邦の位置が重なっていた。
「アルヴェスタ連邦か……確か、学術や魔法が発展している国だったな。何か手掛かりが見つかる可能性は高い」
「私、聞いた事あるよ。学術や魔法が発展しているのもなんだけど、街並みがすっごく綺麗で洗練されてるんだって!そんな都市国家が幾つも合わさって連邦になってるんだとか……いつか行ってみたかったんだー!」
アイリスが興奮気味に目を輝かせながら言うと、フィオナも微笑んだ。
「では、次の目的地はアルヴェスタ連邦で決まりですね」
全員の意見が一致し、一行の次なる目的地が決まった。
翌朝、マコトたちは村で出発の準備を進めていた。アークティカとシルバレオの整備を終えたマコトが、静かに機体を見上げながら考え込む。
「どうしたの?」
アイリスが声をかけると、マコトは振り返りながら言った。
「前回の戦闘を振り返ってみたんだ。あの謎の機体との戦いでも、俺たちは遠距離攻撃の手段が不足していた。それに、仲間を守りながら戦うには今の装備じゃ限界がある」
アイリスは頷きながら言った。
「確かに……それにもっと広範囲に攻撃できる装備もあればいいかも……私のフェザーも暴風槌での攻撃は強力だけど、相手が多過ぎると手数が足りないと思ってたから」
「それにアークティカも改造しないとな。このままじゃ他の場所じゃ走れないし、フィオナがもっと安全に後方支援も出来るようにする必要がある」
マコトがそう話すと、フィオナも口を開いた。
「そうですね……私ももう少しお役に立てれば嬉しいです。(もっとアイリスさんの力になりたいし……)」
フィオナの穏やかな声に、マコトは決意を込めて頷いた。
「アルヴェスタ連邦に着いたら、全員の装備を改良しよう。次の戦いに備えるために」
村を出発して数日、馬車に乗り替えた一行は草原地帯を進んでいた。雪原を抜けたことで気温は上がり、風景も緑が広がるのどかなものへと変わっていた。
「やっと寒さから解放されたって感じだね!」
アイリスが手を広げ、気持ちよさそうに伸びをする。だが、その和やかな空気を引き裂くように、上空から無数の鋭い羽音が聞こえた。
「――魔物だ!」
マコトが叫ぶと同時に、鋭い牙を持つ魔物が数匹、馬車目掛けて突進してきた。
「フィオナは頭を下げて身を守って! アイリスは空から牽制を――!」
マコトが素早く指示を出し、自らはシルバレオで前線に立つ。
シルバレオの鋭い爪が魔物を仕留めていくが、敵の数は多い。アイリスも空から援護を行い、次々に敵を撃破していく。
一方、フィオナは馬車を盾にしながら、魔物の動きを観察していた。
「魔物の狙いは明らかに馬車……確かに私にも何か身を守る術が無いといつか大きな危険が訪れるわね……」
戦闘を終えた後、一行は近くの丘で休息を取ることにした。
「……今の戦闘で新装備の必要性を痛感したよ。道中で設計図を纏めるから、二人ともアイディアがあれば遠慮なく言ってくれ」
マコトがそう伝えるとアイリスが隣に腰を下ろし、明るい声で話しかけた。
「現場の声って大事だもんね、何か思いついたらすぐ言うね!フィオナも頼りにしてるから」
「えっ、た、頼りに?!あー……うん、はい。何か思いついたら必ず伝えるわ」
フィオナが慌てた様子で手を振る。だが、マコトは笑いながら言った。
「遺跡ではフィオナが冷静に魔物の動きを見てくれてるおかげで助かったから。安心して俺たちの支援が出来る様にしないとな」
「ふふ、ありがとうございます。私も皆さんに少しでも役立てるよう頑張ります」
フィオナは照れながらも微笑む。
一方、アイリスは草の上に寝転び、遠くの地平線を見つめた。
「どんな国なのか楽しみだね。遊んでばかりはいられないのは分かってるけど……少しでもこんな穏やかな時間が続くといいな――」
そして幾つかの地方を越え、数週が過ぎた後。夕陽に染まる空の下、一行の目に連邦の都市の輪郭が薄っすらと見えてきた。
「ここにはきっと……俺たちの求める答えがある――」
マコトが静かに呟き、それぞれの期待や決意を胸に秘めながら歩みを進めていくのだった。
第四章開幕しました。
新たな地、アルヴェスタ連邦への旅立ち。
残された謎の解明、そして新たな装備の開発…
そして魔王軍の活動も更に活発になります。
マコトたちは過去最大級の危機を乗り越える事が出来るのか?!
次回にご期待ください!
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