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第3話 廃れた魔法の再起動

マコトはそっと手のひらを見つめ、深呼吸をした。昨日、魔物との戦いで使った力を思い浮かべる。集中してイメージを膨らませると、手のひらに小さな炎が現れた。


「やっぱり……出せるんだ。」


安定した炎を見つめながら、マコトの頭に一つのアイデアが浮かぶ。


(この炎、ずっと燃え続ける……動力として使えないだろうか?)


彼はさらに精霊の力を試すことにした。土の精霊を呼び出し、地面からいくつかの鉱石を浮かび上がらせる。それらを火の精霊で加熱して性質を調べると、鉄や銅に似た金属を作り出せることに気づいた。


「これなら材料は揃う……次は形にするだけだ。」


マコトは土の精霊を使って金属を自由に成形し、水の精霊の力で冷却。さらに、細かな部品を作るために水流を鋭く操作し、歯車やフレームを作り上げた。何度も失敗を繰り返しながら、日が暮れる頃には初めてのロボット用パーツが揃った。


「これが……俺の第一歩だ。」


集めた部品を組み立て、動力炉を中心に火と水の精霊を組み込む。蒸気を動力源として脚部を動かす仕組みを整えると、ロボットがカタカタと動き始めた。


「動いた……!」


その姿に興奮するマコトだったが、突然ロボットが転倒してしまう。蒸気の供給が不安定で、脚の動きにムラが出たのだ。


ロボットを元の位置に戻しながら頭を抱えた。動力炉からの蒸気の供給が不安定で、脚部の動きにムラがあるのだ。

何度もロボットを動かしては転倒するのを繰り返し、そのたびに精霊に命令を送り直していた。

しかし、その作業の中でふと気づく。


(待てよ……いちいち指示を出すんじゃなくて、動きを事前に決めて繰り返させることはできないか?)


マコトは自分の手で設計した工場用ロボットのプログラムを思い出した。

あれも細かい動作をコードで指定し、反復させる仕組みだった。

それを精霊の力に応用できるかもしれないと直感する。


「つまり、脚をこう動かして……次にこう、順番に動かせばいいんだな。」


頭の中で脚の動きをイメージし、それを火と風の精霊に伝える。前脚を持ち上げ、後脚を踏み出し、再び戻す――その一連の動作を「パターン」として指示してみる。


するとイメージ通りに精霊が動き、ロボットの脚が再びカタカタと動き始めた。

今度はぎこちなさが少し改善され、四脚が交互に動いてスムーズに歩行を始めた。


「いける……これならいける!」


興奮しながら、さらに脚部の動きの順番や角度を微調整した。その結果、ロボットは生き物のように自然な歩行を見せ始めた。


試作品が何度も地面を踏みしめながら、一定のリズムで進んでいく。その様子をじっと見つめながら、自然と笑みを浮かべた。


「この子……名前をつけてやらないとな。」


小柄で愛嬌があり、懸命に動く姿がまるで生き物のようだ。

初めて作った自分だけのロボット――


「うーん、何がいいかな……蜘蛛っぽいけど、ただの『スパイダー』じゃ味気ないし……。」


誠は腕を組んで考え込む。名前にカッコよさを求める気持ちと、どこか親しみやすい響きを加えたいという思いが頭の中でせめぎ合う。


「……よし、決めた。」


彼の口から飛び出したのは、なんとも絶妙な名前だった。


「スピナー! ……いや、『スピナーくん』だな。」


自分で口にしてみて、誠は少し恥ずかしそうに目を逸らした。


「……まあ、ちょっと子供っぽいかもしれないけど、初めて作った相棒だし、これくらいでいいだろ。」


小さくて軽やかに動き回る姿がぴったりだし、「くん」をつけることで親しみも出た気がした。


「よし、お前は今日から『スピナーくん』だ! これからよろしくな。」


その言葉に応えるように、スピナーくんは脚をカタカタと動かしながら、再び歩き出した。まるで自分の名前を喜んでいるかのように、軽快なリズムで地面を踏みしめる。


「さて……次は、もっと速く動けるか試してみるか。」


風の精霊にさらに力を注ぎ込み、脚部の動きを加速させる指示を出した。すると、スピナーくんが一気に速く動き出し、家の中を疾走し始めた。


「おおっ! すごい……いや、ちょっと速すぎる!」


驚いて精霊に指示を送り直そうとする間にも、ロボットはさらに速度を上げ、庭を突っ切り家の裏手の森へと向かっていった。


「止まれ! 待てってば! スピナーくん!」


スピナーくんが高速で庭を突っ切り森の中へ消えた瞬間、慌てて追いかけようとしたが周囲は既に深い暗闇に包まれている。


(このままじゃ見失う……!)


マコトは慌てて作業台の方へ駆け戻った。

そこには火の灯ったランプが置かれている。

ランプは作業中に精霊の力で火を灯しておいたもので、誠の細かな作業をずっと照らしてくれていた。


「これを持っていけば……!」


ランプを掴み、急いでスピナーくんの後を追った。

ランプの炎が揺れながら周囲を照らし出し、その光が足元の地面や森の入り口をぼんやりと浮かび上がらせる。


「スピナーくん! どこ行ったんだ!」


森に足を踏み入れると、周囲はさらに暗く、ランプの光が頼りだった。

木々の間を照らしながら、地面に残る小さな四つの足跡を見つけると、誠はその痕跡を追い始めた。


(あの速さで突っ込んで行ったら、どこかでぶつかってるはずだ……。)


「スピナーくん! どこだー!?」


呼びかける声が闇に吸い込まれる中、森の奥から大きな激突音が響いた。


「……あっちか!」


音のする方へ駆け寄ると、目の前に大きな木が現れ、その根元にスピナーくんが倒れていた。


「大丈夫か、スピナーくん……?」


慎重にスピナーくんを拾い上げ、ランプの明かりでその状態を確認する。

脚部や胴体に傷一つなく、蒸気の供給パイプも損傷していない。


「無傷……? 嘘だろ……。」


スピナーくんを抱えながら、その無事な姿に驚きを隠せなかった。

激しい衝突音を聞いた時には、完全に壊れていると思っていたのに。


「なんで壊れなかったんだ……?」


ふと周囲を見渡すと、ランプの明かりが木の幹を照らし出した。そこには驚くべき光景が広がっていた。


「……なんだ、これ……。」


木の幹は、まるで巨大なドリルで抉られたかのように滑らかに削られていた。傷跡は深さ数センチに達し、周囲には削り取られた樹皮が散乱している。その異様な光景に誠は息を呑んだ。


ランプを高く掲げ、木の表面を指でそっと撫でる。削れた部分は驚くほど滑らかで、ただの衝撃でできたものではないことは明らかだった。


「これは……風の精霊か?」


浮かんだのは衝突の瞬間風の精霊が空気のクッションを作り出し、そしてその圧力が木を削り取る力となった。


「守るだけじゃなくて……攻撃にも使えるのか……。」


マコトは小さなロボットが秘める未知の可能性に胸を高鳴らせた。


「スピナーくん……お前、本当にすごいな。次は、もっと上手く制御してやるよ。」


ランプの揺れる明かりがスピナーくんを照らし、その機体に映る影が森の中で静かに揺れていた。


マコトは笑顔を浮かべながらスピナーくんを抱きかかえ、森を後にした。

この小さな発見が、彼の未来にどんな道を切り開くのか――

その時の誠にはまだ分からなかったが、確かな自信と期待が胸に灯っていた。

細かいところを修正しました。

小説って難しいですね......

次回は遂にロボットの初戦闘です!

迫り来る魔物を相手に主人公はどう戦うのか…

ご期待ください!



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