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第26話 極寒の地と移動式工房


亜人連合国(ヴァルグリス)を出発して数日。マコトたちはエルドリム大氷原近くの小さな村へと馬車で移動していた。旅の道中、雪が徐々に深まり、空気は肌を刺すように冷たくなっていく。

 

「やっぱりこの地は特別ね……」

 

フィオナは窓の外を眺めながら呟いた。すでに周囲には雪が降り、空気が冷え込み始めている。


「極寒の地に足を踏み入れる準備は整えてきたつもりだけど……この先は慎重に進まないとな」

 

マコトは手にした地図を確認しながら、行く先の険しさを感じ取っていた。


やがて一行は小さな村に到着し、馬車を降りる。

村人たちの歓迎を受けつつ、次の移動手段の準備を始める。


村に到着した一行は、馬車を降り、広場の雪に覆われた場所に向かった。マコトは亜空間収納袋(シュリンク・スペース)を腰から外し、その小さな袋を指先で広げるように持ち上げる。


「さて、ここからは新型メカの出番だ」

 

マコトが袋の中に手を差し込むと、雪原に突如として巨大な車両が現れた。


それは全長約10メートルの無限軌道車両アークティカ。鈍色の装甲で覆われた車体は、雪と氷の世界を進むために設計されており、左右に取り付けられた無限軌道が力強く地面を押し出す。

車体の側面には小型の煙突が突き出しており、白い蒸気を吐き出していた。


「これが……新しい移動手段?」

 

フィオナはその異形の巨体を目の当たりにして、目を見開いた。


「そうだ。雪上専用の移動式工房だ。寒冷地での移動と作業を想定して作ったんだよ」

 

マコトが誇らしげに説明すると、アイリスが目を輝かせて声を上げる。

 

「これ、すごい! 中も見ていい?」


「もちろんだよ、アイリス。それにフィオナも、中を見ればもっと驚くかもしれないな」

 

マコトが微笑むと、フィオナは興味津々で車両に近づいた。


フィオナはアークティカの外装をじっくりと観察し、その複雑な構造に感嘆した。

 

「これは……精霊の力が組み込まれている?」


「その通り。蒸気機構に精霊の力を融合させて動力を生み出しているんだ」

 

マコトはフィオナの疑問に丁寧に答えた。


「でも、蒸気と精霊を組み合わせるなんて、通常の魔術理論じゃ考えられないわ。あなた、本当にどこからその発想を……」

フィオナは目を輝かせながら、その技術の細部に注目していた。


「まあ、ここに至るまでいろいろ試行錯誤しただけさ。とにかく、中を見てみなよ」

 

マコトが後部ハッチを開くと、フィオナはゆっくりと車内に足を踏み入れた。


車内には整然と配置された作業台、工具棚、そして外観からは想像できない広い空間が広がっていた。さらに奥には、居住スペースと暖房装置が備えられ、寒冷地でも快適に過ごせるように工夫されていた。


「これは……ただの移動手段じゃないわね。動く拠点そのものだわ!」

 

フィオナが興奮を隠せない声を上げた。


「そのために作ったんだ。これがあれば、どんな環境でも作業も休息もできる」

 

マコトの言葉に、アイリスも車内を覗き込みながら感心していた。


三人が乗り込むとアークティカは静かに動き始め、雪に覆われた大地を力強く進んでいった。車内の暖房装置のおかげで寒さは感じられず、快適な空間が広がっている。


「これ、本当にすごいね。こんな環境でもまるで春みたいに暖かくて快適!」

 

アイリスが窓の外を眺めながら嬉しそうに声を上げる。


「断熱構造と動力の排熱を利用できたおかげだな。精霊と蒸気の組み合わせがあってこその成果だよ。ただ、ここから先はもっと気を引き締める必要がある」

 

マコトが前方の広大な雪原を見つめながら言う。


ついに一行の目の前に広がったのは、白銀の地平線まで続くエルドリム大氷原だった。

 


「この広大な雪原の向こうに、きっと私の研究の答えに近づける何かが眠っているはず……」

 

フィオナが低く呟く。


吹雪が少しずつ強まり、一行は緊張感を抱えながらアークティカを進める。

目の前には未知の世界が待っていた。

今回はエルドリム大氷原という新たな舞台で、マコトたちが極寒の地に挑む準備と冒険の始まりを描きました。特に《アークティカ》の登場で、マコトの発明がさらに異世界の環境に適応していく様子を楽しんでいただけたら嬉しいです。


また、フィオナが感じた「研究の真実への手がかり」が物語のカギになるかもしれません。

次回、氷原で待ち受ける試練と発見にご期待ください!


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