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第15話 ドワーフの少女!?


基地の一角に設けられた作業場で、マコトは分厚い設計図に目を通していた。

机の上には部品や工具が散乱し、空気には精霊炉から漏れる蒸気の匂いが漂っている。


「これが限界か……」

 

彼は深く息を吐き、手元の歯車を指で回した。

試行錯誤を繰り返しても、シャドウベヒーモス討伐の際に発揮されたあの凄まじい出力を再現することができない。


「一体、あの時何が起こったんだ……?」


蒸気圧も精霊炉の力も、計算上は完璧だった。

それなのに、再現しようとするたびにどこかでエネルギーが失われ、目標には届かない。


「まだ足りない……もっと改良しないと。」

 

しかし、解決の糸口が見つからない状況に、彼は思わず頭を抱えた。


そこへ、アイリスが部屋に入ってきた。

 

「マコト、また悩んでるの?」


「うん……いくら試しても、あの時の出力には届かないんだ。」

 

彼は設計図を指差しながら説明する。

 

「シャドウベヒーモスを倒したとき、確かに精霊炉は全力を発揮してた。でも、そのときだけ何か別の力が働いていたような気がするんだよね……。」


アイリスは彼の隣に座り、励ますように微笑んだ。

 

「大丈夫だよ。マコトならきっと突破口を見つけられる。私も手伝うから、一緒に頑張ろう!」


その言葉に、マコトは少しだけ気が楽になったようだった。

 


基地の外では、防衛設備の増築が着々と進められていた。

城壁上には新たに巨大な連弩が設置され、さらに精霊の力と蒸気を組み合わせた大砲が配置されている。

城壁そのものも鋼鉄のフレームで補強されたコンクリート壁で補強され、堅牢な防衛線を形作っていた。


「よし、次はあっちの壁を補強するぞ!」

 

マコトの声が作業場に響く。

彼の周囲では、金属のフレームを持つ作業用ロボットたちが、指示通りに重いコンクリートブロックを運び、器用に組み上げていく。


「この子たち、本当に便利ね。」

 

アイリスが感心したようにロボットの動きを見つめた。


「重いものを運ぶには最適だからね。これがなかったら、ここまで早く防衛線を強化するのは無理だった。」

 

マコトは新型ロボットの動きを確認しながら答えた。


一体のロボットが巨大な連弩の調整を終えると、滑らかな動きで歯車の位置を確認する。その精密な動きは、まるで生き物のようだった。


そこへ、驚いた声が響いた。

 

「ちょっと待ちな!これ、ゴーレムかと思ったけど……なんや、全然ちゃう!普通の魔力の流れも感じへんし、これ一体何や!?」


振り返ると、そこには背丈の低い少女のような外見をした女性が立っていた。

彼女はぱっちりとした瞳を輝かせ、興味津々といった様子でロボットを凝視している。


「ゴーレム……?いや、これは精霊の力と蒸気を動力にしたロボットという物なんです。」


マコトが説明すると、エルナは驚きで目を見開き、手を打って叫んだ。


「ロボット!?ほーん、ウチ初めて聞いたけど、こんな動きするもんがあるんか……感動やわ!」

 

彼女はロボットに近づき、その動きをじっくり観察している。


「君は……誰?」

 

マコトが恐る恐る声をかけると、彼女は勢いよく胸を張り、快活に自己紹介を始めた。


「ウチの名前はエルナ!亜人連合国(ヴァルグリス)から派遣されてきた魔法具の技術者や!魔法具の改造と修理が専門で、ちょっとした発明も得意やで!しかしこんなん見るんは初めてや!興奮するわー!」


「ドワーフの技術者か……どおりで興味を持ってくれたわけだ。」

 

マコトが納得したように頷くと、エルナは満面の笑みを浮かべた。


「そらそうや。ドワーフの技術者っちゅうたら、筋金入りやで?」

 

その言葉には自信がにじみ出ている。


「……でも、君って見た目が随分と……若いね?」


アイリスが思わず呟く。


その瞬間、エルナが勢いよく腕を組み、怒ったように睨みつけてきた。

 

「見た目で子供扱いしたら承知せえへんで!ウチはこう見えて、百年近く職人やっとるベテランやからな!」


「ひゃ、百年……!?」

 

アイリスが驚きの声を上げた。


「そや、ドワーフは寿命が長いんや。それにしても、ロボットやなんて……こんなもん今のウチには到底真似できへんわ。」

 

エルナは感嘆した表情でマコトを指差し、続けた。


「君が欲しい!!」


その言葉に、アイリスがピクリと反応する。

 

「えっ!?ちょっと待って、どういう意味、それ!」


「あっ、ちゃうちゃう!」

 

エルナは慌てて手を振り、顔を赤くしながら訂正した。

 

「君が欲しい、やなくて、君の知識が欲しいんや!いや、ほんまにこんなん初めて見たから、色々教えてほしいねん!」


アイリスは少し眉をひそめながらため息をついた。

 

「紛らわしいこと言わないでよ……。」


エルナは頭を掻きながら、マコトに向き直る。

 

「ウチ、この技術、もっと学びたいんや!もしええんやったら、一緒に作業させてくれへんか?」


マコトは少し考えた後、頷いた。

 

「ダリウス司令に確認を取らないといけませんが……それで良ければ。」


「よっしゃ!ほな、許可取ってくるわ!」

 

エルナは嬉しそうに工具をしまい、勢いよく走り去っていった。


その後ろ姿を見送るアイリスが呟く。

 

「……何か、にぎやかな人が来ちゃったわね。」


マコトは苦笑しながら彼女に同意する。

 

その後基地の作業場では、マコトとエルナが向かい合って設計図を広げていた。

エルナが設計図を指で追いながら、興味津々の表情で問いかける。


「なるほどなぁ……この駆動機構、蒸気圧で動いとるんやね。せやけど、ここをこうしたらもっと効率上がるんちゃう?」


エルナが指差したのは、ロボットの動力部に当たる部分だった。

彼女の提案は、蒸気の流れを調整する新たなバルブ構造を加えることで、出力を安定させるというものだった。


「この発想は面白いですね……」

 

マコトが驚きの声を漏らしながら、早速その案を試すべく手を動かし始める。


「ウチが魔法具の修理でよく使う手法なんよ。ほら、魔力の流れも蒸気と似たもんやから、応用が効くんちゃうかな思うて。」


エルナは自信満々の表情で説明する。

マコトはその言葉に感心しながら、彼女が指摘した箇所に細かな修正を加えていく。


「この調整で確かにエネルギーの無駄が減りそうだ……よし、動作テストをしてみよう。」

 

マコトが修正を終えたロボットの動きを確認すると、確かに出力が安定し、動きも滑らかになっていた。


「すごい……これは確かに効果的だ。」

 

マコトが目を輝かせると、エルナは得意げに胸を張った。


「どや、ドワーフの技術は伊達やないで!……けど、ここの材料や構造に、もうちょっと改良の余地があるんちゃう?」


 エルナが指差したのは、ロボットの動力部に使われている部材だった。


「そうなんですよ……素材を見直そうとしてるんですが、適切なものが見つからなくて……。」

 

マコトが困り顔で答える


エルナは腕を組みながら少し考え込み、やがてふっと笑みを浮かべた。

 

「しゃあないなぁ。特別にウチの秘蔵の素材を教えたるわ。」


そう言うと、彼女は腰の革袋から深紅に輝く小指程の大きさの金属片を取り出した。

それは見る者の目を奪うほど美しく、特別な存在感を放っている。


「これが焔紅鉱(イグナリウム)や。」

 

エルナは胸を張って言った。


「イグナリウム……初めて聞きました。」

 

マコトがその金属片を興味深そうに見つめる。


「まぁ当然やろな。ウチらドワーフの国でしか採れへんし、魔物がウジャウジャおる鉱山で掘らなアカン。せやからめっちゃ貴重なんやで。」

 

エルナは金属片を軽く投げ上げながら得意げに語る。


アイリスがそれを覗き込むように見つめた。

 

「でも、こんな小さいのじゃ足りないんじゃない?」


「そやから使いどころを考えなアカンねん。でもな、これがあれば圧力も高温も問題なしやで。耐久性もバツグンや。」


エルナの説明に、マコトは改めてその金属片を手に取り、慎重に観察した。

 

「確かに……この硬度と質量なら、今の問題を解決できそうだ。だけど流石にもう少し量が必要ですね。」

 

「国に戻れば多少都合は効くかもしれんけど、こっちでは簡単に手に入るもんやないからなぁ……。」

 

エルナが肩をすくめると、マコトは少し考え込んだ。

 

「エルナさん、ちょっと試してみてもいいですか?」


「試す……?なんや、急に妙なこと言うて――」

 

エルナが首をかしげる間もなく、マコトは地面に手を当て、静かに目を閉じた。


「俺の元素精霊召喚術で、探してみます。」

 

そう言うと、彼は土の精霊に意識を集中させた。


ほのかな光が地面に吸い込まれていく。

周囲の空気がぴんと張り詰めたように静まり返る。


「……お、おいおい、何してんねん?」

 

彼女が半ば困惑しながら声をかけると、地面が突然小さく振動を始めた。


次の瞬間――土がぽこりと膨らみ、ソフトボール程の大きさの赤い塊が地表に顔を出した。

それは焔紅鉱の特徴的な深紅の輝きを放っている。


エルナは目を見開き、口を開けたままその場に固まった。

 

「……う、うそやろ!?」


マコトは軽く汗を拭いながらその塊を拾い上げ、エルナの手のひらに置いた。

 

「――うまくいきましたね。」


「いやいやいやいや、ホンマにうそやろ!? これ、いやいやデカいなコレ!アンタが出したんか!?元素精霊召喚術で!?」

 

エルナは半ば叫びながら、手の中の焔紅鉱を凝視した。


「まあ、精霊にお願いしただけです。けど今のところは確実に出せるわけじゃないので運も絡んでます。」

 

マコトが控えめに笑う。


「運て……こんな貴重なもん、地中からホイホイ引っ張り出せるとか、どないな力してんねん!」

 

エルナは興奮で目を輝かせながら、さらにその塊を観察した。


アイリスが呆れたように肩をすくめる。


「さすがマコト……本当に何でもできちゃうんだね!」


マコトは首を振り、エルナに提案した。


「エルナさん、これは好きに使ってください。この素材の特性をもっと活かした使い方を学びたいんです。」


エルナはしばらくその金属塊を見つめていたが、やがて笑みを浮かべて頷いた。

 

「アンタ、ホンマにおもろい奴やな。ほな、この焔紅鉱の加工法を教えたるわ。そっちの鍛冶屋娘も、よく見ときや!」


エルナの指導のもと、早速二人は焔紅鉱を使った部品や武具の試作を開始した。


新キャラ、エルナちゃんの登場です!

とは言え御年100歳の所謂ロリババァです笑

現地の技術も取り入れて、マコトのロボットは更なる進化を果たす!?

次回にご期待ください!


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