表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝蜘蛛  作者: 那那碌百白
1/6

朝蜘蛛の呪い

それは朝だった…

何かを感じた彼女は、とっさに振り向いて

あたりを見渡す。


そこには小さな「蜘蛛」がいた。

ハエトリグモである。

ピョンピョンと飛び歩き、ハエやゴキブリなどを食べるそれだ。


「どうしよう。朝蜘蛛って縁起がいいから殺しちゃダメだって聞いたことがあるんだよね…」


確かに朝蜘蛛は殺しちゃいけないとの話がある。

それは、朝に蜘蛛が巣を作るのは晴れると言われている。それにむやみに殺生をするのは自分の運気を下げる。それは蜘蛛が釈迦の使者だからと言われているからだ。


しかし相手は巣を張らない蜘蛛。関係ないか…

それに、大の虫嫌いな彼女は特に蜘蛛は大嫌い。

昔に何かがあった訳でもない。

ただ、気持ち悪いからである。


「新聞紙、新聞紙…新聞をとってなかった…もったいないけど、これでいいか。」

おもむろに今月号のファション誌をまるめると、エイッ!と振り下ろす。

一撃で退治できた。


「アリアちゃ〜怖かったよ〜」

愛玩犬のヨークシャーテリアに声をかけると、尻尾をブンブン振り回しながら寄ってくる。

「ヨシヨシ、今日もお留守番、お願いね。」

そう言うと出勤のための用意を簡単に済ませ、慌てて玄関を出ていった。


彼女の仕事はSE。それも役職付き。

部下からの信頼も厚い。それは、どんな失敗があっても、叱らず前向きに指導してくれるからだろうか。


しかし今日は違った…

机の上に「ハエトリグモ」がいたからである。

「え?」目を疑った。

今朝、ハエトリグモを殺したばかりなのに…

「偶然だよね。」と、今度は会議用の資料で叩き潰す。

「今日は何か蜘蛛に人気があるなぁ…」

気にする事もなく、会議室へと足を進めるのであった。


ランチタイム。

皆でご飯を食べたい気分だったので、声を掛ける。


皆が集まったテーブルの上に、またハエトリグモが…

さすがに気になってきた彼女は、

「まさか今朝、殺したから?」

薄気味悪い。偶然にも程がある。


「誰か殺してよ!」と声を荒げる。

「どうしたんですか?」と男性の部下が聞く

「蜘蛛が…蜘蛛が…」

「小さな蜘蛛じゃないですか、そんなにおびえなくても…」

「いいから!」

と言うとハイハイと言った感じでそれを捕まえると窓の外にポィっと逃す。

「殺さないの?」

「僕は昔から虫は殺さないんですよ。」


昼食を終え再びデスクに戻るとモニターの上にまた「それ」がいた。

「キャ!」悲鳴を上げる。

さっきの部下を呼び、また窓の外に…


今日は疲れた…蜘蛛が何度も…


「もう、大丈夫だよね!」

気分を変えるために、行きつけの居酒屋へ…


オシャレを決め込んでいるが大学生の時に友達に連れられ初めてのお酒を飲んだ店が居酒屋だったので、こういう店が好きなのである。


「こんばんは〜」

威勢のいい声で、イラッシャイ!と声がかかる。

おもむろにいつものカウンター席へ

「いつものをちょ〜だい♡」

「はい!よろこんで!」

キンキンに冷えたビールを流し込む。

「あー!」と1日の疲れが吹っ飛んだかと目を閉じる。


爽快感を味わいながらふっと目を開けると「それ」が目の前にいた…

「キャー!」

何度も見てしまう、それも朝の事が気になっているからだ。

「どうかしたか?」

店主が聞く

「蜘蛛が…蜘蛛が!」


どれ?と店主が見ると、爪楊枝が入ったケースの上に「それ」がいた…

「あれ?毎日バルサン炊いてるからこんなことは初めてだよ!姉さんついてるね!」


イヤイヤイヤイヤ「取り憑かれてるの」

少なくとも今日は…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ