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夏のホラー2023『帰り道』

招く声

作者: 家紋 武範

 『やろか水』や『置行堀(おいてけぼり)』などの怪異はご存知だろうか?


 やろか水は、『やろか』『やろうか』などの声に応答してはいけない。『くれ』というとたちまち洪水に飲み込まれてしまう。


 置行堀は、ある堀で釣りをして帰ろうとすると『置いてけ、置いてけ』とどこからともなく声がするのだ。釣った魚を置いていけば怪異は収まるし、そのまま持って帰ったとしても、魚籠の中は空だという声の怪異だ。





 しかしこう言う話がある。


 昭和の話であるが、ある女学生が田舎道を下校していた。

 家までの道は鬱蒼としており、片方は山肌、片方はなだらかな崖となっており、針葉樹が立ち並んでいた。


 彼女はいつものその道を帰るすがら、前方から『こっちへおいで』という老女の声がする。

 しかし前には誰もいない。特段隠れる場所もない。


『こっちへおいで』


 女学生は怖くなってしまい、その場に立ち尽くしてしまった。


 引き返せば人通りに戻ることも出来るが、声のほうに家がある。女学生は泣きべそをかいたが、家に帰るしかない。


 声だけの怪異だし、通りすぎてしまうことなどなんともない。彼女は意を決して足に力を入れて前に進んだ。


 一歩進めば、一歩分前から『こっちへおいで』。三歩進めば三歩分『こっちへおいで』。


 気にしないなど無理があるが、まだ明るいのも手伝って、前に進むことが出来た。


 その時……!


 彼女の後方の山肌が崩れ、崖に向かって土やら大岩やらが流れて道が消えてしまったのだ。


 声に従っていなかったら、崖の底だった。その声は、その後は消えてしまったのだった。


 その女学生の祖母は健在だったし、声の主に心当たりはなかった。

 ひょっとしたら、彼女の守護霊が守ったのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「実録」感が凄いですね。 もしかして、本当に実話では? [気になる点] 特にありません。 [一言] 守護霊がもしいるのだとしたら、彼らもどうメッセージを出したらいいのか、日夜悩んでいるのか…
[良い点] お邪魔いたします。 いやあ、いいですねえ、こういうお話。 ホラー系の中でも、ほっこりするようなオチがつくようなもの、 個人的に好きなんです。 お邪魔いたしました。 それでわでわでわ~。…
2023/07/17 16:31 退会済み
管理
[気になる点] 奈良梨取りとか、梨取り物語とか、そんな感じの話があったような気がします。 絵本になっていたとか。 [一言] 虫の知らせや第六感というものかもしれませんし、その土地に奉られている土地神な…
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