〜無能魔法使いと侮ることなかれ〜
属性無しの主人公は無能と蔑まれるが、彼には自身も知らない秘密があり、、、。
「はあ…今日もダメか〜」
ため息とともに僕は落胆した。
「またかよ、この落ちこぼれ君」
「勉強だけできてもそれじゃあなぁ」
同級生はみな僕のことを無能と蔑む。それもその通りで、僕はみんなのように属性魔法を使うことができない。
「ライアス君、才能がないものはどうしようもないですね」
呆れたようにエバン先生が言った。
「そもそも、このクラスにいるのが場違いなんだよ」
そう口にするのはクラスの中でもとりわけ優秀な魔法使いであるイアン・ノーブルだ。イアン君の親はどちらも優れた魔法使いで、ノーブル家と言えば、王国でも有名な貴族である。
僕がいるのは学院の中でも優秀者が集まる特別クラスである。なぜ僕がここにいるのかと言うと、単純に魔力量が高いことと筆記試験で満点を取ったからだ。
「とりあえず授業の続きは明日にしましょう。明日からはダンジョン探索も始まるので各々準備しておくように」
先生がチャイムが鳴ると同時にそう言うと、みな一目散に装備品を買いに学院をあとにした。
僕は施設で育ち、今は一人暮らしをしているためお金の余裕があるはずもなく、貸出の装備で我慢するしかない。
そんな僕の唯一の特技で生活費稼ぎにもなるのが家事代行をはじめとした雑多な依頼をこなすことである。
学院生は冒険者ギルドにF級として登録されており、冒険の基礎知識を学ぶための採取依頼や講義、お小遣い稼ぎとしてのちょっとした依頼を受けることができる制度がある。
「今日も来てくれたのかい、助かるよ。今日は掃除を頼むね」
宿屋のおばさんからはいつも掃除の依頼などを受注しているためすっかり馴染んでしまった。
僕は属性魔法、いわゆる火力の高い魔法や怪我を治す神聖魔法などを使うことはできないが、生活魔法は使うことができる。
そのため、こうした雑務をこなすのにはうってつけだった。そうこうしていたら、いつのまにか夜になっていたので、眠りにつく。
翌朝、学院ではダンジョン探索の前に講義が行われた。
「ダンジョンについての説明は以上です。最後に魔法の属性と適性についてです」
説明によると、ダンジョンは定期的に出現し、ボスを倒すと報酬が出て一定時間経つと消えるらしい。難易度は出現するたびに異なるが、放置されすぎると難化していくそうだ。
魔法については、属性が基本的には火、雷、土、水、風、光、闇と基礎属性があり、適性によって使える属性が複数になることもある。
適性が多い者は組み合わせて新たな属性魔法を作ることも可能だという。
「それでは、そろそろダンジョン探索を開始します。チームごとなるべく離れないよう進み、一番奥の部屋まで行ったら転移魔法陣で戻ってきてくださいね」
「みんな、魔物がどこから出てくるか分からないから気をつけろよ」
パーティーリーダーのダンがそう言うと、皆が気を引き締めた。
今回は4人1組のチームで、全8チームある。イアン君と別々のチームであることに少し安堵したが、それでも僕が落ちこぼれであることに変わりはない。
「魔物だっ!!」
チームメイトが魔物を発見した時には、すでにかなり近づかれていた。
しかし、相手はF級だ。皆それぞれ、得意な属性魔法を使い、易々と倒していた。
「くっ、てやぁぁっ!」
なんとも情けないことに、僕はやっとの思いで魔物を切り伏せた。
「おいおい、それくらいの魔物すぐに倒してくれないと困るよ。ただでさえ、ハンデを背負ってるようなチーム構成なんだから。」
ダンが困ったように言った。
僕は悔しさもあるが、反論できなかった。
しばらくして、ダンジョンの奥の方まで辿り着いた。
「よし、そろそろ終わりが見えてきたぞ。」
ダンの言う通り、転移魔法陣は目と鼻の先にある。
しかし、何かがおかしい気がしてならない。そういえば、道中に出てきた魔物の数が異常に少ない気がした。
僕の戦闘に時間がかかってしまって気づかなかったが、戦闘はその一回だけだった。
「ライアスが手こずったから、他に遅れを取ってるかと思ったけど、手元の時計を見る限り俺ら一番早いかもな!」
とジョンが言った。他のチームとはルートが違うから正確なことは分からないのだが。
「とっとと戻って報告しよう。」
ダンの言う通りに、転移魔法陣へ向かおうとしたその時。
『ぐおおぉぉぉぉぉぉ!!!』
突如魔物が降ってきた。
「おい、あれやばくないか?」
ジョンが問いかけるが、みな返事をする余裕もない。
なぜなら、現れた魔物は本来このダンジョン、この階層にいるはずのないB 級の魔物だったからだ。
魔物の名前は、デミ・ミノタウルス。通常個体のミノタウルス(C級)より禍々しい雰囲気と魔力を放ち、滅多に見かけることはない魔物である。
「選択肢は2つだな、このまま来た道を引き返すか、奴の脇をすり抜けて魔法陣へ飛び込むか。」
ダンはそう言うが、実際は来た道を引き返すには奴は強すぎる相手だった。
「各々の魔法を使って目眩ししてる間に行くしかなさそうだ。ライアス、お前は剣で応戦してくれ!」
「わ、分かったよ。」
僕には属性魔法が使えない、つまり攻撃に使う魔法は一切無い。そのため、これまでも剣で魔物とやり合ってきた。
みんな覚悟を決めて、魔法を放った。
しかし、効果は全くない。そして次の瞬間、魔物が僕目がけて突進してきた。なんとか剣を盾に一命を取り留めたが、剣はもう次の攻撃に耐えられない。
「今のうちだ!早く転移魔法陣へ行くぞおまえら!すまんな、ライアスこうするしか生き残る道はなかったんだ。」
まさかの裏切りだった。彼らは、僕がやられてる隙に逃げたのだ。彼らとは、普段から特別仲が良かったわけではない。しかし、イアン君ほど嫌われているという感じは全くなかったのだ。
「嘘だろ......」
そう呟いた直後、デミ・ミノタウルスは僕を投げ飛ばした。
壁に打ちつけられダメージを受ける。2回の攻撃ですでに虫の息となってしまった。
そして、3回目の攻撃が来た。奇跡的に攻撃が直撃しなかった。しかし、この攻撃のせいで、僕のいた地面ごと割れたのだ。
気づいた時には時すでに遅し。下の階層に向けて落下してしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
落下したのは多分一つ下の階層だろう。僕の意識は朦朧としていて、デミ・ミノタウルスがいるのかも分からない。
「僕はこんな所で死ぬのかなぁ。神様、僕は生まれてこなければ良かったのだろうか...?」
僕は辺境の施設で育った。施設では可もなく不可もない存在として生活していた。ただ、他と違うのが、僕の容姿だった。白髪に紫色の瞳、それが僕の特徴だった。
白髪は属性適性なしの無能の象徴。この世界では、特に、魔法に通ずる者たちには共通の認識だった。実際、間口の広い学院でも筆記試験と魔力量の多さがなければ入ることすらできなかっただろう。
「あれこれ考えても仕方ない、早く出口か転移魔法陣の方へ向かわなきゃ、、」
ボロボロの体で歩く僕に絶望は訪れた。
「デミ・ミノタウルス!」
絶望を目の前に、僕は力尽きて倒れた。
その刹那、僕の下の地面が光った。
「転移魔法陣...?」
デミ・ミノタウルスのとどめの一撃が入る直前に僕の体は転移していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここはどこ、、、?」
不思議な空間だ。いるだけで少しずつだが、回復しているようだ。
しばらく歩き回っていると、人影が見えた。
「そこにいるのは誰ですか?」
人影に問いかける。僕と同じ髪色の人だ。
「君こそ誰だい?」
「僕はライアスと言います。」
「ご丁寧にどうも、私の名前はアルカード=エヴァン。アルとでも呼んでくれたまえ。」
気さくな感じで人当たりが良さそうな人だ。だが、アルカード=エヴァン、どこかで聞いた名前のような気が。
「ここはどこなんですか?」
「ここかい?うーん、精神世界というか、本来あるべきでない場所なのはたしかだよ。」
アルはそう答える。
「僕は転移魔法陣のようなもので飛ばされてきて......」
事の経緯や状況をアルに説明する。
「ふむふむ、状況はだいたい分かったよ。辛い思いをしたんだね。それにしても、やはり世界はそうなっていたんだね。」
状況を察してくれたアルが、意味深げにつぶやく。
「?」
「ああ、すまない。実は今の僕は思念体の存在でね。はっきり言えば幽霊みたいなものだよ。」
あっけらかんと答えるアル。続けざまに、
「僕は今よりおよそ100年も前に死んでるんだよ。死の間際に、神様からお告げがあって、こんな状態で取り残されてるんだけどね。」
僕は呆然としてしまった。それも当たり前だ、話のスケールが大きすぎたのだ。
思念体?神?そんなこといきなり言われても、信憑性もあったもんじゃないという顔をした。
「その顔は信じてないようだね。私のことは今の世の中では語られていないのかな?“大罪の魔法師”と言えば伝わるかな。」
「!!」
思い出した!“大罪の魔法師・アルカード”
己の地位や名誉のために、人類の敵である魔族に取り入り市民を脅かしとされる魔法師だ。
「その様子だと、私の思ってた通りの伝承として伝わってしまっているようだね。」
「ここから先は本当の歴史と、私と君についての真実を話そう。」
そう言うとアルは話し始めた、この世界の真実について。
小説家になろうには初投稿です!
ざまぁ展開まで遅いですが、必ず登場します。
展開は割と遅めですが、成り上がりや無双が好きな人にはおすすめかもです。




