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集合

 キャンプ場のカーサイトにジムニーが到着し、運転席から真琴が降りてくる。芝生の上に座っていた昴は立ち上がって頭を下げる。


(すばる):お疲れ様です


真琴(まこと):あれ? バスで来るって言ってたの昴くんだけだったっけ


昴:……セイヤさんから連絡来てません?


 慌てて鞄からスマホを出す真琴。スクロールした画面を見ながら叫ぶ。


真琴:他の男子全滅ってマジ? 何でキャンプ前に飲み会しちゃったの? 


昴:今朝、陽性判定の連絡があったみたいで、まだ症状出てないやつらも全員待機です。

居酒屋に行かなかった僕だけ、買い出し班のお役目を果たしに来ました


真琴:相変わらず、すばるんは真面目だなー。でも何で飲みに誘われてないのよ? イジメか? おねーさんに相談してみなさい


昴:その日がバイトだっただけですよ。……お姉さんって、いっこ年上なだけじゃないですか


真琴:いっこでも年上です。あー、でも、実はアカネちゃんと、サキのバイト先でも陽性者出たらしくてさ。シフト埋めなきゃいけないから参加できないって連絡来てるんだよね


昴:ってことは、あとミウさんしか残ってないってことですか? あの人が行けたら行くって言って、ホントに来たの見たことないんですけど!


 通知音が鳴って、画面を見た昴が真琴にスマホを向ける。


昴:ほら、「ごめーん、やっぱ無理」って!


真琴:天文サークル初のキャンプだったのに……10人も参加予定だったのに……。


昴:あ、いや、そんなヘコまないで下さいよ


真琴:……なんてね! このご時勢だし、仕方ないよね。

何買ってきてくれたの? このまま持って帰れそう?


 昴はクーラーボックスを開けて、中身を見せる。


昴:いえ、がっつり生肉です


真琴:おう、さすが食べ盛り。じゃ、しょうがないから二人焼肉しちゃう? 

デイキャンプでも、メンバーが二人でも、キャンプは開催しましたよってことで


昴:……デイキャンプですか


真琴:もちろん、すばるんがイヤじゃなければだよ。あたし、火起こしとか肉焼くのとか超得意だし、座ってていいからさ


 昴は、ちらっと車の後部座席に満載の荷物を見る。


昴:陽射しがちょっと。このままじゃ、日焼けしちゃいますよ


真琴:乙女かっ! タープはセイヤが持って来るって言ってたから、積んできてないんだよねー。あたしのテント、シェルターにもなるような、でっかいやつだからそれ張る?


昴:せび、張りましょう


真琴:陽射しに弱いくせにノリノリじゃないの。よし、荷物出すか!


 真琴が車からテントを降ろすのを昴も手伝う。


真琴:あとは椅子とテーブルと、焚火台と、火起こし道具一式と……


昴:寝袋は?


真琴:持ってきてるけど、昼寝するの? ここの路線バス、最終が引くほど早いから、寝てる暇は無いと思うよ


昴:それならいいです。この道具って、全部真琴さんの私物ですか?


真琴:私物というか、家で使ってるやつだよ。うち、おじいちゃんの代からキャンプ大好き家族だからさ、一部屋丸々ギア入れになってるんだ


昴:僕はアウトドアと全く無縁の家で育ったんで、初キャンプなんですよ、テントの建て方から教えて下さい


真琴:まっかせなさーい




 二人でテントを組み立てはじめる。


真琴:そのバラバラのがショックコードで繋がってるから、長い一本になるんだよ。できた? じゃ、このスリーブに通すからね。……いいね、おっけー。

じゃあ、ポールの端っこをテントの下から出てる金具に入れるよ。そっちから入れてー


昴:えっ? これに入れるんですか? 無理無理、こんな細いポール折れますって


真琴:大丈夫。みょーんって、しなるから


昴:うわ、マジで怖い。折れる、折れる


真琴:(笑いながら)折れない、折れない




 テントが組み立て終わり、中に二人で入る。


昴:広っ。ここで暮らせるレベルじゃないですか


真琴:寝るときはこの奥にインナーテントってやつを吊って寝るからね、寝室になるのは全面じゃないよ。今日は全部開けてタープ代わりにしよう、さー、火起こしするぞ


 真琴は焚火台を広げて、中に麻紐をほぐした火口を入れ、小枝を組む。


昴:あのウエハースみたいな茶色いやつは、使わないんですか?


真琴:着火剤のこと? 確かにウエハース感あるね! あたしは使わないよ。これでも着くから見ててよ


 小枝に燃え移った火が、少しずつ上方に炎をあげ、そこに真琴は小割にした薪を足して、炭も乗せていく。


昴:おー、これができるなら、あのジャって火花飛ばして付けるのもできるんですか?


真琴:メタルマッチも持ってるけど、のんびり火起こしする時にしか使わないよ。今日は早く肉焼かなくちゃ


昴:そんなに急がなくても……


真琴:お日様が傾いてきたな、って思ってからが早いのだよ。よし、肉を持てぃ。


昴:ははーっ、ただいま




 肉が焼け、食べ始めてもしきりに時計を気にする真琴に、不服そうな昴。やがて意を決したように立ち上がる。


真琴:あ、今なら終バスに余裕で間に合うよ。もう行く?


昴:……そんなに早く帰ってほしいですか


真琴:いやいやいや、そうじゃないんだ。あ、そうだよ。バスがなくなっても送っていけるんだった。あたし車だもんね。ごめん、ごめん。ゆっくりしようね


昴:そうっすね。じゃちょっと、売店いってきます

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